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それから。

詳しい事は分からないけれど、今回の件は翌日、ガス爆発事故という形で報道されていた。

その日残業していた先生が何者かに強襲され車が大破していた事から愉快犯による突発的犯行か、などと特集まで組まれたりしているのも見掛けた。

あの爆発の後大勢が入院する事になったが、卒業生達が夜の小学校に無断で集まり騒いで爆発事故に巻き込まれた事は一切触れられなかった。未成年への配慮なのか揉み消されたのか他に大人の事情があるのか知らないが、巻き込まれた人達にとっては幸いな話だろう。

あの時息をしてなかった子も一命を取り留めて快方に向かっているらしい。

隆弘さん達に感謝しなくてはならない。

今回の件に巻き込み傷を負わせてしまった事は心苦しく思うけれど、彼らがいてくれなければ私の友達が、恋人が、人殺しになってしまうところだった。

あれから彼らには会っていないけれど、花神楽で今日も楽しく過ごしてくれていれば私は嬉しい。

だってあんなに楽しくて優しい人達なのだから、私は、笑っててほしいと思うのだ。



花神楽高校・図書室。


「どした灰花、きょろきょろして。本探してるんだったら手伝うよ~」

「ロッソ先生。助かります!「富士見二丁目交響楽団」ってシリーズの「冬の旅」って本なんスけど、小説コーナー探しても見つかんなくって」

「ちょっと待ってね、検索機で所蔵位置調べるから。読書感想文でも書くの?」

「隆弘に頼まれたんすよ」

「今日は一緒じゃないんだねー」

「アイツはアイツで忙しくって」

「もしかして漫画?修羅場ってやつ?」

「まあ…って、あれ?隆弘が漫画描いてるってロッソ先生知ってたんスか」

「この前大勢で図書室来た時隆弘が同人誌描いてるって話してるの聞こえちゃって」

「同人誌が漫画ってよく分かりましたね。専門用語だと思ってたんスけど」

「ほら、図書室の奥に同人誌コーナーって一角があるじゃん。いつの間にかアメリアと校長先生が設置してたやつなんだけどさあ。ヴィオーラがそれ知った時凄く怒ってこっぴどく叱られちゃったんだよ、俺が。「監督不行き届きだ」って。その時その同人誌コーナーに置いてある同人誌って冊子がいかに有毒か説明してもらったから、知識だけならぱーぺきだよ~!」

「隆弘の漫画は確かにいかがわしい内容ばかりですけど、描いてる本人は大真面目だから有毒扱いはひどいっスよ」

「有毒です。あのような破廉恥な冊子を読み書きしている事実を神聖な図書室で堂々と公言しないでいただきたい」

「ヴィオーラ。あんな破廉恥なって…お前読んだ事あるのか」

「ここ花神楽高等学校の図書室で所蔵し管理する本なのですから当然ひととおり目は通します。勿論西野が描いた同人誌も拝見しました。本来ならあのような成人向け内容を置くなど許されませんが、校長先生が直々にうちの生徒が頑張って描いた漫画だから図書室に置いてくれと懇願されたので、西野の制作した同人誌に限らず本校の生徒が制作した同人誌は特例で置いてあります。勿論貸出禁止指定図書です」

「ここの図書委員は苦労してそうだな…」

「ところで宮下、この前連れて来ていた他校の生徒はもう帰られたのですか?」

「あ、ああ…」

「そうですか。彼に受入れの仕事を任せてしまった事は申し訳ありませんでしたが、ロッソ先生が作業するよりも万倍、いえ億倍丁寧なお仕事っぷりで、開きぐせの付け方なんて図書委員の皆にお手本をみせてほしいくらいの出来でしたのでご指導賜りたかったのですが。残念です」

「ちょ、俺ちゃんと出来てるでしょ?!」

「え?いつも面倒臭いと文句をぶつぶつ呟きながらやりさがし作業をしているロッソ先生、何か仰いましたか?」

「ごめんなさい精進します」

「ほら、何図書室の利用者様をお待たせしているんですか。検索結果表示されてますよ」

「ホントだ。えっと富士見二丁目交響楽団シリーズは~、BL小説コーナーに置いてあるって!」

「…貴方、BL小説読むんですか」

「西野に頼まれたんだよ」

「ああ、なるほど」



花神楽高校・合宿場。


「スロワ、いるか」

「灰花!もう、また来たの?!夏休み空けるまでは会わないって言ってるじゃん!あんたの耳って葛城の言う事以外右から左に通り抜けちゃうの?!」

「悪ぃ、どうしても顔見たくなって。今日だけ、な。練習の邪魔はしないからさ」

「アンタがいると気が散るんだっての…って、アンタどしたのその腕。包帯巻いてるけど、怪我でもしたの?」

「ああ、ちょっと火傷をな」

「火傷?!ア、アンタまさかまた葛城絡みの厄介事に巻き込まれてるんじゃ…!」

「違う違う、くずはさんは全く関係ねえよ!これは俺がドジっちまっただけだ」

「本当に?」

「俺がお前に嘘なんてつくかよ」

「…そう」

「さ、俺の事は置き物だとでも思って練習続けてくれ。お前の元気なとこ見に来たんだから」

「それ前も聞いた」

「ああ。お前が元気にしてるとこ見られるってのが、嬉しくてな」

「変な灰花」



病室。


「よ!西野!元気してるー?」

「リ、リリアン!」

「何校長様を呼び捨てにしてやがる」

「悪ぃ、つい」

「まったく。肉体言語で話してやろうか」

「それはそれで」

「あん?」

「いや何でも。ところでどうしたんだよセンセ。原稿が締切に間に合わないって泣き言なら聞けねえぞ」

「かわいい教え子が入院したっていうから見舞いだよ、み・ま・い!連絡受けた時はたまげたよ、いたずら電話かと思ったわ」

「いたずら電話じゃなくって残念だったな」

「アンタも不運だったね、あのガス爆発事故が起こった現場にたまたま行ってて巻き込まれただなんて。何であんなとこに行ってたのよ」

「俺様の交友関係は広くってな。騒ごうって誘われたんだよ」

「なんだそりゃ、夜の学校でか。なんて非常識な」

「かわいい教え子に自分が描いたナマモノエロ漫画の手伝いをさせる大人に比べたら健全だと思うぜ?」

「そんな非常識な大人がいるのねー、こわいねー、オバサン日本の未来が心配だわー」

「おい棒読みになってるぞ」

「冗談はそのくらいにして。西野。本当早く良くなりなさいよ。アンタが元気になるの、待ってるから」

「リリ…」

「次の原稿も出張やら会議のせいでスケジュールキツいの…西野がいてくれなきゃ落ちちゃう…」

「結局それオチなのかよ!お前それ言うためだけにここ来ただろ!」

「違うもん!私次はソウ黒のお医者さんパロが読みたいって思ってたところだから、入院生活体験でしっかりネタ仕入れておいてねとも言いにきたもん!」

「…冗談だよな?」

「大真面目ですよ」

「ひでぇ…」

「話題なんて関係なく私がお見舞いに来てくれただけで嬉しいんだろ!有難く思えよ!」

「それはそうだけどよ!」

「折角早退して来てあげたのに失礼しちゃう!帰っちゃおうかしら!」

「悪かった。折角生きて帰って来たんだ、いくらでもホモネタに付き合うから、いてくれ!」

「ふふ、素直でよろしい!」



メゾン・ド・リリー・201号室。


「こんばんはー」

「こんばんは。どちら様ですか?」

「お隣の斉賀ですよ」

「斉賀さん、こんばんは。ちょうど今夕飯出来たとこなんだけど、食べてく?」

「わあ、オムライスだ!良い匂い!でも僕がいただいちゃったら二人の分が」

「余分に作ってあるから」

「本当?じゃあ遠慮なく……って、違う!くる君何動き回ってるの!安静にしてなきゃ駄目でしょう!」

「平気だよ」

「頭強く打ってるし2階から落ちたんだよ?診察受けて入院勧められたのに安静にするだけなら家でも出来るって断ったのは君なんだから、ちゃんとおとなしくしてなさい!」

「でも」

「でもじゃないの!ほら、お見舞いにうさぎさんリンゴ持って来たんだ、くる君がおとなしく寝室で横になってくれたらあげちゃうよ」

「ずっと何を持ってるのかと思ったら…そんな気遣わなくていいのに。っていうか斉賀さん、そんな器用に包丁使えたっけ」

「人とはね、日々進化していくものなんだよ。じゃーん!どうかな!うさぎに見えるでしょ!」

「…微妙」

「手厳しい!」

「ちょっと一つ貸して。ここを、こうして、…こう」

「わあ、不恰好なうさぎもどきからあっという間に見事なうさぎさんリンゴになっちゃった。さすがくる君、凄いね!」

「ん」

「くれるの?ありがとー!…じゃなくて!これはくる君にって持ってきたものだから僕が食べちゃ意味ないの!」

「心配してくれるのは有難いけどさ、それでも最低限家事はしなくちゃいけないだろ」

「君は何でも一人でこなしすぎ!くずは君だってもう子供じゃないんだし、自分の事は自分で出来るよ」

「それは分かるけど…」

「私の事はお気になさらず。おやすみなさい」

「ほらね。ああ、僕が出て行くのを待ってそれから起き出せばいいか、なんて考えても無駄だよ。ちゃんとくる君が寝入るのを見届けるまで居座るからね!」

「…なあ、何でそこまでしてくれるんだよ。おかしいだろ。俺が怪我した事、斉賀さんが同窓会行くの承諾したからだって責任でも感じてんの?だったら怒るよ?」

「違うよ。くる君が心配だからだよ」

「…」

「駄目かな」

「…駄目じゃ、ねえけど」

「そっか。良かった」

「分かった!分かったよ!分かったから!ちゃんとおとなしくしてるよ!」

「くる君はいい子だねー」

「ほら!オムライス冷めるぞ!」

「はっ!そうだったそれは大変だ!まずは夕飯食べよ、みんなでね」

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