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いずれ神殺しとなる少年 ~異世界に行って、冒険者生活を全力で満喫する~  作者: 新木伸
Fランク。QOL(クオリティ・オブ・ライフ)爆上げ編

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第19話 舎弟ができちゃいまして……

「姐さん! 御御足の汚れを! ぜひこれで!」

「アニキ! お荷物お預かりします! 持たせてください!」

「アニキ! 席取りましたぜ! アニキ!」

「アニキ!」

「アニキ!」

「姐さん!」

「レンのアニキ!」


「うるさいよ! もう!」


 冒険者ギルドに入るなり、例の不良四人組に見つかって、騒がしいったらありゃしない。


 最初は無視していて、それが最良だとわかってはいるけど。

 だけど、どこまでも果てしなく続くもので、つい、大声で怒鳴ってしまっていた。


「だいたい、アニキやめてって言ったよね?」

「わかりました! アニキ!」

「わかってないよね。それ全然」


 はあぁぁ――と、大きな大きなため息をついてから、ついっと視線をカウンターに向けると。


 笑いを堪えてうずくまっていたミレーヌさんが、しゃきっと取り繕うのが見えた。

 遅いです。


「どうしてこうなった」

「それはアニキがスゲえアニキだからです!」

「聞いてないよ。質問してないよ。嘆いているだけだよ」

「失礼しましたアニキ!」

「レンは人気者になったねー」


 こういうの、狂信者っていうんだよ。

 やだよ。いらないよ。


「人ごとじゃないからね? 一人、アルカのファンだよね」

「はい! 姐さんは女神です!」


 足を怪我していた、ちょっと太っちょの彼は、手当してくれたアルカにぞっこんだ。こちらも恋愛というよりは崇拝だけど。


 席を取ってある、とかいうので、仕方なく、酒場のほうに移動する。

 いつもの丸テーブルに座る。四人は後ろで立ったまま。びしっと直立不動になっている。


 言っても多分無駄だろう、とは思いつつ、僕は彼に話しかけた。


「あのね。いちゃもん君。あまり付きまとわれると迷惑なんだけど」

「は? いちゃもん……くん? ですか?」

「だって名前知らないし。僕の中で君は、いちゃもんを付けてきた、いちゃもん君だよ」

「はっ! いちゃもんに改名します! アニキにいちゃもんをつけて絡んだことは! 俺の人生最大の成功です!」

「やめてよね。イキり君。そういうところだよ?」

「はっ! イキりであります! アニキにイキったことは――」

「おすわり」


 僕が言うと、いちゃもん君――ないしは、イキり君は、席についた。


 だからもう……。

 見れば、アルカがお腹を抱えて呼吸困難になっている。


「リタ。Aランチおねがーい」

「はーい。らんち? A定食でいいの?」

「うんそれ」

「はーい。六人前でー」

「えっ? ちょ、待っ――!?」

「ありがとうございます! アニキ! 奢ってもらえるなんて光栄です!」


 くそう。やられた。

 リタのしたたかさに、やられてしまった。


 まあそうだよね。この状況で、僕たち二人だけご飯食べるとか、ひどいよね。

 かと言って、「君たちは自分で払ってね」とかいうのも、ありえない気がする。


 釈然としないけど。

 まったく釈然としませんけど!


 英雄物語が大好物の受付嬢のミレーヌさんは、僕たちに舎弟が出来たことを楽しんでいるばかり。

 ギルド権限とかで、ストーカー規制法を適用してくれるといいんだけど。たぶん無理。


「おまちどうさまー。今日のA定食は、ライギョの包み焼きパイと、おばあさんの白パンねー」


 リタが料理を六人分、運んでくる。

 あーもう。なんで銅貨40枚も余計に払わなきゃならないかなー。


 まあ……。チップを胸元に押しこむ係は、今日は僕がやらせてもらえて、そこはちょっとばかし嬉しかったけど。


「すげえ……、アニキ、あんな平然と……、大人だ……」

「ばか言ってないで。食べなって」


 なにを感心しているんだか。いちゃもん君あるいはイキり君は、変なことに驚いている。

 他の三人は別のテーブルを使っている。彼だけが、僕とアルカと同じテーブルにいる。


 リーダーだし、四人の中では兄貴分なのかな。

 そういや仲間が狙われていたときにも、「俺を狙え!」とか漢気を見せていたっけ。


 まあ……。そんなに悪いやつじゃないのかも?

 最初の出会いが最悪だったので、印象が害虫レベルからのスタートだったけど。


「アニキ……。俺、どうすれば、アニキみたいに強くなれますかね?」

「え? そんなの簡単だよ」

「簡単なんですかっ!? ど――どうすれば!?」

「うわぁ。ばかぁ。ソースつく! やめれ! やめれ! ――おすわり! スティ! スティ!」


 ようやく離れた彼に、僕は言う。


「そんなの。講習受ければいいんだよ。僕らだって、そうやって強くなったんだから。ねぇ? アルカ?」

「うん。そうだよー」

「講習? ……なんすか? それ?」

「ギルドで毎日やってる講習だよ。戦いかたを教えてもらえるんだ。有料だけどね」


 言いながら、僕は名案だと思っていた。


「お金がかかるから、残りの半日は、別な仕事を頑張らないと、食べていけなくなっちゃうけど」

「そ、そうっすよね」


「でも街の仕事でも、半日で、講習代と生活費ぐらいは稼げるよ。僕のおすすめはドブさらいだね」

「そ、そうっすか!」


「僕の場合、七日頑張ったら、あれできるようになったよ。ほらゴブリンの胴体ぶった斬ったやつ」


 僕は剣を振るまねをして、腕をぐりんと振った。

 あれちょっとカッコいいかもー?


「秘剣ゴブリン斬り! ――っすか!? 俺もあれができると!?」


 うわぁ。なんか必殺技にされてたー。しかも微妙にカッコ悪い。


「秘剣ゴブリン斬りだって。レン。カッコいいね」


 アルカのセンスは、ちょっとわからない。


「うおおおぉ――っ! 俺は! 俺はやります!」

「いいね。頑張ってね」


 ダグラスさんにしごかれて、僕に絡んでくる体力なんて残らない。しかもドブさらい追加だ。


 これで当面は静かになる。僕は厄介払いができる。

 彼らも強くなれる。ゴミカスを卒業できる。

 ギルドも、人の嫌がる仕事(ドブさらい)のなり手が得られる。

 そして師匠には、生け贄を四名ほど送りこめて、飯代と酒代を献上できる。なんて師匠孝行。


 一石二鳥どころか、三鳥、いや四鳥の計略。

 僕ってなんて孔明っ! あったまいー!


「うおおおぉ! 俺は! なるっ! アニキになるっ! 狂乱王に! 俺はなるっ!」

「おいそこ。〝狂〟とかつけんな。あと僕にはなれないよ。君は君で強くなるんだよ」


    ◇


 これで、静かになってくれるだろう。

 ……とか、そんなふうに思っていた時期が、僕にもありましたー。


    ◇


 十数日が経って――。


「アニキ! アニキアニキ! アニキ! 見てくださいこれ! アニキいぃ!」

「うるさい。だまれ。正座」


 ギルドに入った途端、たまたまカウンターにいた、いちゃもん君に見つかって、声をかけられた。


「ゴブリンの討伐部位。17個。確認しました。魔石のほうと合わせて、銀貨10枚と銅貨32枚になります」


 ミレーヌさんがいつものクールな声で言い、それから、にこっと微笑みかける。


 あっ。あれって……。


 「明日死んでるゴミ」に向ける目じゃないね。

 見込みのある冒険者に向ける、優しいほうの目だ。


 ゴブリン17体であの金額なら、ホブゴブリンもいくらか混じっているはず。

 へぇ。やるじゃん。


 彼らはゴブリン狩りを専門にしたようである。薬草採集もしていたら、あの数はいかない。


 ゴブリン・スレイヤーの名を、彼らに贈ろう。


「すべてアニキのおかげです!」

「なんでやねん!」


 感謝ならダグラス師匠にしろよ。

 舎弟でもないし、ましてや弟子なんかじゃないんだけど。でも弟弟子ではあるのかな?


 彼らの更生と成長が、ちょっと嬉しく思えた。

 チンピラから真人間にクラスチェンジできて、よかったね。


「アニキ!」


 だがアニキはやめろ。


四人組はレギュラー化しました。


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