↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いずれ神殺しとなる少年 ~異世界に行って、冒険者生活を全力で満喫する~  作者: 新木伸
無ランク。割り勘サバイバル編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/23

第12話 ギルド酒場の看板娘は情報通

 料理が来るまで、アルカと二人で、ジュースをちびちびと飲む。

 お詫びのジュースを受け取らないわけにもいかず、ミレーヌさんのご厚意に甘えることにした。


「おまたせー! 本日のA定食は、マッドトードの腿肉ソテーと焼きたて白パンねー」


 リタが食事を持ってきてくれた。

 と、そのまま空いていた椅子に、するりと腰を下ろした


「さぼっていたら、怒られない?」

「え? だって仕事だし?」

「仕事?」

「兵站情報部だよ? うらぶれたおじさんから情報抜いてくるのも、お仕事だし?」

「ええーっ!」


 それは伝説のハニートラップ!?


「期待の新人。その成長のヒミツとは? あそうだ――チップあったら、ここに入れてね」


 と、リタは胸の谷間を指し示す。


 えっ? その魅惑の谷間に、ぐいこぐいこと、押し込めと?


「あれ? 怒らないんだね? ――カノジョ」

「え? わたし? ――なんで?」


 アルカがきょとんと、まばたきをする。

 そりゃそうだ。僕らはただの相棒だし。単なる友達同士だし。

 ほんのすこし若干程度は寂しくはあるけれど。


「なるほど。二人は別に恋人関係ではない……と」


 抜かれてます! 情報抜かれてます! めっちゃ抜かれてます!

 この分だと、僕がアルカをちょっと気にしてる。――ってとこまで抜かれてます!


「ミレーヌ姉様に変わってもらったほうがいいのかなぁ?」

「え?」

「受付に行く前、情報部門のエースだったのよ。お姉様」

「え!? え!? えっ! ええっ!?」


 なん……だとっ!?

 ざわっ……!


 あのクールビューティなミレーヌさんがっ!

 うわっ……! それはっ……! ギャップ萌え……!


「ミレーヌ姉さーん――」

「呼ばないでね!? やめてよね!?」


「食べないと、冷めるよ」

「あ、はい」


 アルカに言われ、僕は定食を食べはじめた。


    ◇


「へー。マッドトードって、モンスターなんだ」


 僕たちがいま食べているこれ。この肉は鶏肉みたいな味だけど、マッドトードというモンスターのお肉らしい。


 ほかのお客さんがこないのをいいことに、ずーっと僕らのテーブルに座りこんでいるリタと、食べている間、色々と話しこんでいた。


 〝情報収集〟の名目で、僕らがどうやって生き残ってきたのかの話も聞かれたけど。

 彼女が話してくれる内容も興味深い。


「そ。でっかいカエルね。泥の中にいるからマッドトード。森の南に池があるから、そのまわりにいるのよ。あでも、舌に毒があるから気をつけてね。2メートルぐらい伸びてくるし」


「じゃあ毒消しポーションとか持っていかないと……」

「すごい! さすが姉様が見込んだ期待の新人! ――それ、明日死んでるゴミクズどもなら、〝俺が毒なんか怖がると思ってんのか!〟ってイキるところ」

「それって死んじゃわない?」

「だから死ぬんでしょ」


 なるほど。


「そうした情報って、どうすれば調べられるかな? ――資料室とかって、ある?」


 僕はリタにそう聞いてみた。

 ギルドの二階には、あがったことがない。ひょっとしたらそこにあるのかも……?


「資料室」


 リタは自分の胸に親指を向けると、にいっと笑った。

 僕の期待は儚くも散った。


「姉様のほうが、もっとずっと詳しいけど? かわろっか?」


 ううん、と、僕は首を振った。


「マルガリータさんのほうが話しやすいし」

「リタでいいわよ」

「うん。リタ」


 彼女は同年代だしね。クラスメートと話すみたいで、話しやすい。


 だって、ミレーヌさんのほうは――。


「圧が凄いんだよね」


 背中方面に受付のカウンターが見えて、そこに座るミレーヌさんから、「説明したい。させろ」的な圧が掛かっているのを、ずっと感じている。


「だいたいゴブリン討伐が最初っていうのがおかしいのよ」

「え?」

「――あっ。ここまではギブアンドテイクで無料だったけど、ここから先は有料よ」


 リタは胸元を、ぐーっと差し出してくる。

 ちゃっかりしている。


 僕は銅貨を1枚――。

 アルカにパスした。


「……こう?」


 アルカはリタの胸元に、銅貨を差し挟む。


「なんで落ちないの?」


 釈然としない顔で、アルカは感想を述べている。


 僕も感想を述べてみたい! すごく述べたい!

 みたいんだけど……。

 無理無理。無理ですっ。


「君たち無謀よ。ゴブリンって、Eランクの魔物なのよね」


 チップを受け取って、リタは言う。


「パーティ複数人で、普通に危なげなく倒せるのが、魔物ランクの指標になってるの。Fランクの君たちが……。まあ二人ってのをパーティと認めるとしても、本来なら、マッドトードあたりを狩っているのが妥当なところなの。それでも毒食らったら死んじゃってるけど」

「えっ?」

「ゴブリンって、Eランクなのよね。この意味、わかる?」

「えっ? じゃあ、あれって……?」


 僕らが死ぬほど苦労して倒した一匹のゴブリンって、つまり……?


「そ。Eランク推奨」

「ええーっ?」


 知らんかった。

 てっきりゴブリンが最弱モンスターなのだと……。

 だって〝異世界一般常識〟では、そうだったもん。


 そういう異世界で……、いいんですよー……?

 変なところでオリジナリティ出さなくて……、いいのにぃ……。


「レン君はしっかりしてるかと思ったら、抜けてるところあるのね」

「ぐぅ……」

「うんうん。レンはそういうところあるよね」

「ぐぅ……」


 言い返せません。ぐぅの音しか出ません。


 森にいるFランクの魔物を教えてもらった。

 スライム、マッドトード、アルミラージ、ジャイアントバット。ラージリーチ。などなど。

 あと魔物ではないものの、猪、猿、鹿、狼、あたりの悪さをする動物もFランク扱い。


 しかもそれぞれ全部、単体討伐の場合の話。

 複数いるなら、こいつらだって、Eランク相当になるんだって。


 どれが儲かるか。どう危険か。それぞれの攻略法と討伐部位。値段の高い素材の部位。食べられるのはどれか。


 二人という限定された人数なら、狙い目はどれか。


 依頼票に書かれている情報もあるけど、それ以外の情報が多かった。討伐部位くらいは書いてあるけど、危険性なんて、どこにも書いてない。依頼票はそんなに親切じゃない。


 もちろん、胸をぐーっと突き出されてくるたびに、銅貨を挟みにいく必要があって――。


 アルカなんかは「すごーい! 何枚しまえるかチャレンジーっ!」と喜んでいたけど。


 僕もちょっと、いやだいぶ――チャレンジしたかったことは内緒だ。


「てなわけで。最初の討伐がゴブリンってのは、無謀って言ったわけ。でもいまさらだけどね。ゴブリンの討伐ができるんだったら、他のFランクなんて、狩る意味ないしねー」


 と、そこでリタは思案顔になる。

 同様に、僕も思案顔になる。

 問題は、そこだ。


「でも勝てたって言っても、さっき話したみたいに、ぐずぐずのめためたで、なんとか勝てた――って感じなんだよね」


 ゴブリン戦における、ぐだぐたっぷりを、さっきリタには話している。


 武器を買ったはいいけれど、その使いかたが全然だった。


 「ぶき」を「そうび」したんだから、当然、強くなっていると思い込んでいた。


 ゲーム脳やばい。……意味が違う?


「じゃあ、講習、受けてみたら?」

「講習?」


 僕は聞き返した。

 なんかそんなの聞いたことある!

 〝異世界一般常識〟に、あった気がする!


「あそこのカウンターで怖い目で睨んでくるお姉さんも、いざゴブリンにリベンジしに行く前に、モンスター情報とか講習の件とか、その辺、しっかり説明するつもりだったんだって。それが、知ったときには、もう突撃していった後で……。〝なんで相談しないのよおぉ!〟――ダン! って、机ぶっ叩いて、ギルド中、静まりかえってたんだから」


 ご迷惑おかけします。


「講習って、なに?」


 アルカが聞いた。


「ギルドの地下に練習場があるでしょ?」

「あるんだ! やった! やっぱり練習場はあったんだ!」


「な、なに……? この子? いきなり?」

「うん。レンって、たまに変だよ」


「練習場ではッ! 強面の引退したベテラン冒険者がいるんですよねッ! それでッ! 〝貴様らはウジ虫だ! 口でクソ垂れる前と後ろにサーを付けろ!〟――とか、軍曹的な鬼シゴキでブートキャンプするんですよねっ!」


「いやそこまでは……。多少は厳しくやるけど? ぐんそう? ぶーときゃんぷ?」

「レンが変なときは、もうすこし待つと直るよ」


 ふんす。ふんす。

 大興奮の僕だったけど。

 しばらくすると落ち着いてきた。


「それで? コースごとに分かれていたりするんですね。僕は剣コースかなぁ。……アルカはどうする? やっぱり弓?」

「……なにいきなり普通になってるの? 怖くない?」

「ううん。いつも通りだよ」


 リタとアルカが、なんか言ってる。


「講習料って、有料ですか無料ですか。有料ならお幾らですか?」

「あ。そういうのは、あっちのお姉さんとやってね? さすがに、もうそろそろコワいから……」


 リタが、おそるおそるという感じで……。僕の肩越しに、受付カウンターのミレーヌさんを見やる。


 僕たちは、酒場をあとにして、カウンターに向かうのだった。

 覚悟を決めて。


    ◇


「チップあんなに貢がされて……バカですか」

「いやぁ情報料は必要経費かなと」

「こちらのカウンターにくれば教えてさしあげますのに。無(•)料(•)で(•)」

「ええと忙しいんじゃないかと思いまして」


 だって総括だよ?


 よく見ていれば、隣の席の他の受付場が、ミレーヌさんに確認や承認を取りにきたりしている。

 ミレーヌさんは、書類をちら見して、決裁やら指示出しをする、二、三秒、話が中断されることが、しょっちゅうある。


 ちゃんと見ていれば、明らかにエラい人である。

 ぼんやりと見ていたから、これまでわからなかったけど。


「それで、講習制度についてですね」


 一通り、お小言を述べて気が済んだのか、ミレーヌさんは事務的な笑顔に戻ると、話しはじめた。


「講習場所はギルドの地下練習場。講習時間は午前の部と、午後の部の二部制。だいたいは一人の講師が教えますが、特殊な武器などは、数日に一回のローテーションとなります」


 ふむふむ。ギルドの講習っぽい! すごい本格的!


「それで料金ですが、Fランクであれば銅貨30枚……となりますけど、無ランクであれば無料となります。どうせ払えませんので」


「いやっふぅ!」


 僕たちは、まだ無ランク! よってタダ! すごいすごい!


「こういうところは、年相応で、かわいいんですけどね」

「でしょ?」


 ミレーヌさんとアルカが、なんか言ってる。


「あ――でも払いますよ。ライフハックしたいわけじゃないんで」


 ライフハックは、だいたいズルだと、僕は思ってる。

 ズル、いくない。


「そうされたほうが覚えがよくなりますね。――受講料は講師の方のお給金となりますので」


 うわぁ。やばいやばい。タダで教えてもらおうとか、ずる賢いことやってたら、鬼軍曹にイビリ殺されてしまうところだった。


「あと魔法などの特殊技能は、予約制の――」

「魔法! あるんですか! あるんですか! あるんですかッ!」

「……!?」


「レンよく壊れるから気にしないで。すぐ直るから」


「魔法! 魔法! 使ってみたいなー! 僕にも出来るんですか! そうだ! 適性見る水晶玉とかありますかっ!? それで砕いちゃったら! どうしよう! どうする!? 僕なんかやっちゃいました? ――なぁーんて!」


 やっぱ魔法あったよー!

 そうだよ! こういう異世界でいいんだよーっ!!

 いやっふぅ!!


「ちょっと怖くなってきたのですが……?」

「普通だから。あと三……、二……、一……」


「でも魔法の受講料って、きっとお高いんでしょうね。いまは関係ないですね。剣と弓は普通の武器扱いですか? 毎日やってます?」

「……本当でしたね」


 お姉さんは、なにか感心している。

 なにに感心してるんだろ?


「あ。わたし。弓もだけど。……これも」


 アルカは腰に吊した棍棒を手で叩く。


 ゴブリンの持っていた棍棒である。そのままパクった。

 売っても二束三文で、銅貨一枚にしかならないそうだ。


 ゴブリンを仕留めたときの感触では、それなりに威力のある鈍器だった。丈夫だし。なにより替えがきく。ゴブリンを倒せば、もれなく一本ついてくるところがいい。


 よって、アルカの予備武器にしたのだった。

 アルカは〝ゴブ棒〟って呼んで愛用している。


 ていうか。はじめから僕も剣じゃなくて棍棒でよかったんじゃね? ――とも思ったが。


 男の子的には、やっぱ、剣でしょ。ロマン大事でしょ。


「弓と棍棒ですね。教える時間は変わらないので、同料金でいいですよ。話しておきます。――さっそく講習を受けてみますか? 午後の部が、これからちょうど始まるところです」


 僕とアルカは、顔を見合わせた。


 今日は疲労もあって「お休み」の日に決めていたけど……。


 おいしいものを食べて、リタと軽口を叩き合って、ミレーヌさんと仲直りもできたので、だいぶ元気が戻ってきた。

 やっぱり仲良しが一番。


「やります」

「やるー」


 目と目で合図を交わしたあとで、僕たちは、そう言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。