↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いずれ神殺しとなる少年 ~異世界に行って、冒険者生活を全力で満喫する~  作者: 新木伸
無ランク。割り勘サバイバル編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/25

第11話 ゴブリンは倒したけど……。再び、立ち止まって考える

本日から毎日1話更新になります。

 翌日。僕らはなんとなく冒険者ギルドに向かっていた。


 泥のように疲れて眠り、いつもより遅い時間に目が覚めた。

 ぽやーんと正体がなく、街中を歩いていても、地面に足がついていない感じ。


 ギルドについても、掲示板の依頼票を見るでもなく、受付に向かうでもなく、ぼんやり立ってるだけ。


 そういえば、お姉さんには、「はよ銅札《Fランク》取れ」って言われてたっけ……。


 受付は暇そうだけど、なんか、もやもやして、昇格手続きをやりたくない。

 昨日、ちょっときつく言っちゃったから、お姉さんのところに行きづらいってのもあるけど……。


 それとは別の理由で、なんか、昇級したくないカンジ……?

 なんだろう?


 ぼんやりしていて、考えがうまくまとまらない。


 お腹すいたな。


 ――ぐううぅ。


 ほら、お腹も鳴った。

 ていうか、これ僕のじゃなくて。アルカのお腹の音だった。


 ギルドには、入口すぐのホールに受付があって、奥に解体場と素材提出所。そしてホールのすぐ隣には、併設の食堂――というよりも酒場かな? がある。

 壁で仕切られてはいるけど、扉はなくて開け放しで、ホールからもよく見える。

 あれはわざとそうしているんだろう。美味しく飲み食いしているところを、ホールの冒険者たちに見せるように。


 依頼完了でお金をせしめて気が大きくなった冒険者から、がっつり巻き上げようという魂胆が見え見えである。


 きっとお高いんだろう。ランクの高い凄い冒険者がいっぱいいるのだろう。

 これまでは視界に入っても、見えないふりをしていた。


 でもゴブリンも倒したし、僕らもそろそろ、冒険者の社交界――酒場デビューしてみてもいいのではっ?


 お金ならある。

 昨日の稼ぎは銀貨3枚と銅貨15枚。それ以前の貯金が銀貨4枚弱。

 合計で、銀貨7枚ぐらい。


 いま! 7マンエン持ってまーす!


 なんか、もうそろそろ銅貨のほうは数えなくてもいいんじゃないかな。――とか思ったりもする。


 アルカと目を合わせる。

 (食べていこうよ!)という目に、(いいと思うよ)と目で返す。


 ううん! 相棒っぽいね! 以心伝心だねっ!


「いらっしゃ~い! お二人様?」


 給仕の女の子が、くるんとミニスカートを翻して、振り向いた。

 僕らより歳上かなと思うけど、お姉さんというほどでもない。


「えっちな格好だ……」

「可愛い格好……」


 アルカと二人、つい、感想を口にしあって――。その差異に、「ん?」と顔を見合わせる。


「はいはい。えっちで可愛いお姉さんが、二名様、ご案内しまーす。日当たりのいい席がいいよね?」


 聞こえてた。でもやっぱりお姉さんって感じじゃないよね。せいぜい学校の上級生ぐらい。

 髪型もツインテールだから、あんまり大人っぽく見えない。


 窓際の席に案内される。

 異世界の街並みでは、あまり見ないガラスのはまった窓だ。

 日が差しこんで、ぽかぽかしている。いい席だった。


 朝でもなく昼でもない時間なので、他にあまり客はいない。


 テーブルに突っ伏してダウンしているむさい男の人が、一人、二人、いるくらい。

 あれはきっと二日酔いなのだろう。


「なににする?」


 コルセットで締め上げた――くびれたウエストに手をあてて、女の子が聞いてくる。なんかカッコいい。


 はい! 異世界酒場! 看板娘っ! 来ました――ッ!

 いただきましたーっ! はい! はい! はいっ!


 こういう異世界でいいんだよーっ!!


「レンは忙しいみたいだから……なにかおすすめの定食、二人分で。銀貨までは、いかないよね?」

「だいじょうぶ。定食は銅貨10枚ぽっきり。二人で20枚っ」

「高っ!」


 僕は叫んだ。

 向こうの世界なら、ランチで1000円なら安いほう? ――なのかもしれないけど。食べ物だけは安いこの異世界で、それはめっちゃ高すぎる。


「じゃあ、やめとく?」


 いたずらっぽい目を、挑むように向けられる。


「う……、お願いします」


 ここで高いから、といってやめたら、ものすごくカッコ悪い。


「はーい。A定食2丁! ……飲み物は、いる?」

「う……、いりません」


 絶対、別料金だよねー。


 注文したのに、女の子は、なぜか下がらない。立ったままで、見つめてくる。


 あ。前金なのか。

 僕は銅貨を20枚、テーブルに並べた。

 パーティの会計は僕の仕事。個別のおやつは自分持ちだけど、二人で取る食事はパーティの共同資金から出すようにしている。


「まいどー」


 女の子が銅貨を回収して帰っていく。


 その後ろ姿を見送ってから……。

 はぁ、と、僕はテーブルに突っ伏した。


「どしたの?」

「なんか疲れた」

「そうなの?」


 いまのやり取り、緊張感があった。

 始終、品定めでもされてる感じ? なんなんだろう?


 突っ伏したまま、僕が気力をチャージしていると――。


「お飲み物をお持ちしました」


 そう声が掛かる。


「頼んでませんけど……、って……、え?」


 トレイに飲み物を乗せて立つ女の人を、僕は、まじまじと見つめた。


 受付嬢のお姉さんである。

 ぴしっとタイトスカートのスーツで、銀のトレイを持つ立ち姿が、すごく様になっている。


 でも……? え? え? え?


「受付業務が暇なときには、兵站情報部門を手伝うこともありますので」

「はい? へいたん? じょうほう?」


 へいたんは、兵站? ……ならまあ、わからないでもないけど。ごはんとか物資って意味だったよね。

 でも情報のほうは? なぜに情報?


「こちら。アポルのジュースですけど。よろしいですか?」

「ですから頼んでませんけど?」


 そう言うと、お姉さんは顔を曇らせた。


「ええっと……、昨日、その、失礼を働いてしまったので……、そのお詫びというか」


 言いにくそうに、しどろもどろになって、お姉さんは言う。


 ええーっ! そんなこと気にしてたの!

 ていうか、昨日のアレは、僕が不機嫌になってて、むしろ失礼しちゃった側で――。


 とか慌てていたら。

 お姉さんの後ろから、さっきの給仕の子が、ぴょこっと現れる。


「先輩って見込みのある子にはウザ絡みするんです。私も〝はよ受付業務にこい!〟って言われてまぁ~す」

「マルガリータ!」

「ああん。いつもみたいにリタって呼んでくださいお姉様ぁ♡」

「……リタ」

「きゃぁきゃぁ♡」


 ぎろりと、人が射殺せるほどの視線を浴びても、給仕の女の子――リタは、喜んで身をくねらせる。


「昨日はもうたいへんでぇ。目をかけていた子たちが、念願の武器を買って、薬草採集にリベンジに行くって聞いて、大丈夫かしら大丈夫かしら大丈夫かしらって、ずっとウザかったんですよ先輩。だから多少ウザくても勘弁してあげてくださいねー」

「あ、はい」


 そんな心配してもらえてたなんて……。意外だ。

 明日死んでるゴミ扱いされていると思ってた。


「あっ。ゴミはゴミでいますからね。ほらあそこで飲んだくれてるゴミだとか」


 と、リタは、まだ復活してこない二日酔いのおじさんたちを顎で示す。

 てか心の声に返事しないでくれます!?


「底辺のペーペーの銅札《Fランク》のくせに、いまごろ依頼漁りに来てるゴミだとか」


 彼女はつぎに、ギルドホールに顎をしゃくる。新人っぽい男の子たちの一団が、掲示板を見あげている。


 僕らは、昨日、大立ち回りをやったので、お休みの日なんだけど……。


 僕らみたいなルーキーの彼らが、昼も近いこんな時間に依頼を見ているのは、たしかにちょっとダメだと思った。

 いい依頼を取るなら、朝一番だよね。


「あれは青銅札《Eランク》にあがるまえに、死んじゃうかなぁ……」


 その4人ほどの男の子の一団を見ながら、リタがぼそっと口にする。

 ぎょっとするが、受付嬢のお姉さんのほうも、こくりと頷く。


 うわぁ……。異世界……。シビアぁ……。アイエエエ……。


「ところで先輩?」

「なによ? ……なんでしょう?」

「名前、言っておいたほうがいいんじゃないです? この子たちきっと、〝受付嬢のお姉さん〟――とか、そのあたりの認識ですよ」

「そんなわけ――」


 と言いかけて、受付嬢のお姉さんは、じっと僕とアルカを見つめてくる。


「受付部門の総括を努めております。ミレーヌと申します」


 お姉さんは頭を下げる。

 僕らは恐縮して、お姉さん――じゃなくて、ミレーヌさんよりも、もっと頭を下げる。


 総括って……、いちばん偉い人だったーっ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。