第四話 執事にわがまま言うのはまだ早いようです。
「アリサ様、朝ですよ。いつまで寝ているんですか」
「アリサ様、口に入ってる時に水で流し込まないでください」
「アリサ様、すぐベットに行かないでくださいっ」
朝6時。カーテンをばっと開けられベットで寝ていた私を揺さぶる執事のスイ。
朝7時。飲み込む時に水で流し込むと叱られた。私の執事スイに。
朝7時30分。ベットに横になってたらバンッと扉を開けられまた叱られた。執事のスイに。
朝だけでもこんなに言われて後ろにいるスイが心なしか疲れてる。
昨日私がユリハとガイオネルに何かしたら殺す、自分は死神だっと言ってたけど、案外ちゃんと執事をやってくれてる。
これならわがまま言っても「仕方ないですね」って許してくれそう!
「スイ、二度寝してもいい?」
「何言ってるんですか。寝ていいという執事がどこにいるんですか」
疲れていた顔をさっと真顔に戻して氷のような冷たい言葉をなげられる。
我儘はまだ許してくれなさそうだ。
「それとも…合理的に目を覚まさせましょうか?」
と言ってるがこれ絶対お願いしますって言わない方がいいパターンだ。
「だ、大丈夫!ほら目パッチーンだよ」
両目をかっぴらいでアピールすると「やめてください」と言われてしまった。
「今日はユリハお姉様とガイオネル様とお茶をするんだったよね」
「はい、ユリハ様の優しいお気遣いも含めてのお茶会ですので変な真似はしないでくださいね、アリサ様」
少し口元を上げてるが見定めてるような目は相変わらず。
スイに殺されないよう死亡フラグ、回避しなきゃな。
◇◆◇
「いらっしゃい、アリサ。今日は楽しくお話ししましょうね」
迎えられたのは庭の一角の場所だった。おしゃれな白のテーブルに紅茶のポット、お菓子が揃えられ小さなパーティのようだ。
「改めて、だな。ユリハの婚約者、ガイオネルだ。気軽に呼んでくれ」
ユリハの隣に座っていたガイオネルが立ち上がり私に挨拶をする。
ガイオネルとアリサはほぼ初めて会話する。
ただ彼からしたらユリハをいじめる悪役令嬢、という印象なはず。
「わかりました。ですがユリハお姉様の婚約者様なのでガイオネル様呼びをお許しください」
ユリハよりも親しく呼ぶことはよくない。婚約者ならもってのほか。
「わかった。俺はアリサと呼ばせてもらうな。ユリハの妹としてこれからよろしくな」
ふっと笑い席につくことを促される。
後ろにいたスイは私から離れそれぞれのカップに紅茶を注ぐ。カップは花柄で色が違うみたいで私のは赤、ユリハは水色、ガイオネルは緑だ。色だけでも、本当にお似合い。
「今回呼んだのはねアリサが困ってることがないかなって思って」
手を合わせ微笑みながら聞いてくるユリハの言葉に目を瞬きつつ、
「…特に、ないです。ただスイが色々厳しいなぁって…」
ガチャンッと勢いよくテーブルにカップを置かれ、肩が反射的に跳ねる。
「すみません、手が滑りました」
こ、これ手が滑ったっていうの!?意図的にやったとしか思えないけど!?
ブルブル震えつつ暗い笑みを浮かべるスイを視界に入れないように紅茶をちびちび飲む。
そんな様子にユリハはクスクスと楽しそうに微笑む。
「ガイオネル様がスイを執事にって提案された時不安だったけど仲良くてよかった」
「え…?ガイオネル様が…?」
てっきり他の人たちが嫌だったから選ばれたのかと思っていた。
ガイオネル様が…直々に。
じゃあ、私が何かした時にスイが殺すことも知ってるの、かな。
私の元・結婚相手(前世での妄想)はアリサのこと、どう思っているのかな。




