第三話 死神さんとご対面。
私が転生したと思われる場所は私の描いた漫画の世界。
私の理想が詰まったひとつの物語。
…だけどっ
「アリサ様、何をお考えですか」
にこりとひとつもしない執事が真顔で私の肩をすごい力で掴んでくる。
これ私女の子だって認識してる!?っていうくらいだ。
「な、何も…考えてないよっ」
「辿々しく話してる時は大抵何かあるのではないでしょうか」
私のバカァァァッ。
めっちゃ怪しまれてるッ。ただでさえユリハに毒盛ろうとしてたの発見した人にもっと怪しまれることしたら今度こそ首チョッキーンだよ!
自分で想像したけど無理、マジ無理っっ。
「スイはよく見てるね。私のこと好きとか?」
「いえ、監視も含めたあなたを殺す、死神です」
………ん???
おふざけ程度に言ってた言葉がとんでもない爆弾で返されたような気がする。
「あ、えと、スイが私のこと好きなわけないよね。冗談冗談。だからスイのも冗談だよね」
「いえ、本当です」
ピッキーンと笑顔を張り付けたまま固まる。
こうも真顔で返されると嘘じゃないって信じちゃうな…。
どうにか嘘だよ、冗談だよって言って欲しい。
冗談じゃなきゃ……すごい…まずい…。
スイは何を思ったのかどこからか短剣を取り出し、つーっとなぞるように指を走らせる。
それがなぜか目が離せなくて。
いつの間にか、私の首に剣先が突きつけられていた。
私が少し動いたらブスッ…スイが一歩踏み込んだらブスッだ。
「アリサ様はユリハ様に毒を守ろうとしたときのこと、覚えていますか」
抑揚のない声でそう問いかけられた。答えなかったらブスッ系だろう…。
正直よく覚えていないが漫画通りならっと記憶をたぐりながら話す。
「えぇ。私がユリハお姉様の紅茶に毒を入れようとした時偶然あなたがきたのよね」
「偶然、ですか」
ぐいっと私の顎をもう一方の手で上げ、感情の感じれない氷のようなシルバーの瞳を細める。
「偶然じゃなかったら、どうするんですか」
「え?」
「俺があえてそれを知っててそこにいたとしたら。考えたことありますか」
「そ…れは…ない、…でしょ」
ない、あり得るはずない。…そう、でしょ。
グッと私が黙ったのを見て短剣を首元から離した。けれどまだ私の顎は固定されたままだ。
「アリサ様、俺は死神です。もし万が一、ユリハ様にまた手を出せば今度は俺が直接手を下しますので。下手な真似はしないようにお願いします。……アリサ様自身が殺されたいならいつでもお呼びください」
少し短剣を覗かせて私に新たな忠告をしぺこりと頭を下げ、何事もなかったように離れる。
……いやめっちゃいろいろあったけどね!!??
とにかく離れよう。スイとは極力距離をとって……。
「あっアリサ。あのねあのね」
草むらに隠れてゴォォォッと警戒丸出しな私を心配しつつすごく嬉しそうにユリハが話し出す。
「さっきアリサの執事どうしようかなってガイオネル様に相談してたんだけど、スイがなってくれるんだって…って、アリサ!?大丈夫?」
急にバタッと仰向けに倒れる私を揺さぶるユリハ。いつもなら「大丈夫!」と言ってたかもだけどちょっと今は無理かも。精神的にダメージが…。
私の人生って、もしかしてつんだ?
死神(自称)と悪役令嬢、めちゃ可愛い天使、その婚約者(騎士)の生活がはじまるのでした。




