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気になる蘭子は止まらない  作者: きら
夏祭りって何だ?

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お囃子って何だ? (後編)

「おお! なんかひょうきんなお面をつけた男が踊ってるぞ! 面白い踊りだな」

「今度は着物の女の子が出てきたぞ! まだ小さいな! 健気に踊っていて可愛いではないか!」


 お囃子へ夢中になっている蘭子は、踊り手のキャラクターが入れ替わる度にテンションが上がっていた。

もしかしたら、みんなでお祭りに来ていることを今は忘れているかもしれない。

 囃子方は中学生くらいの子たちが演奏していたが、一人ずつ順番に入れ替わり、いつの間にか演奏者全員が貫禄のあるおじさんに変わっていた。


 その瞬間、演奏していた曲は難しそうなリズムへと移行する。


 合間に「ハッ!」「そーれ!」などの掛け声で小気味良く進行していくが、テンポは徐々に早くなり、周囲を圧巻するほどの気合で(おとこ)たちの演奏が続いた。

囃子方全員の呼吸が合わないと成り立たないだろう。

凄い技術だ。かっこいい。


「あおい! なんか出た!?」


 その時、山車の舞台に現れたのは伝統ある被り物だった。


 赤い大きな顔に金色の歯。

頭からは立髪のように白い毛がワサワサと生えており、胴体は唐草模様の布で覆われている。


「あれは"獅子舞"だ。縁起物だぞ」


 驚く蘭子の姿に、微笑みながら葵がすぐに解説した。


「ししまい……?」

「ほう……。なかなか面白い文化だな」


 蘭子たちの世界では珍しい文化なのだろうか?

獅子舞の姿を見て、タカヤも興味深そうにしている。

 

「ふふん。それじゃあここでクイズだ」

そんな異世界コンビの姿に、葵はひとつイタズラを思いついた。


「なに!? クイズだと!?」

「ふっ、臨むところだ」


 よし。つかみは成功。本当にわかりやすいコンビだ。

ワクワク顔の蘭子と真剣すぎるタカヤの視線が葵に向いたところで、謎かけが始まった。

 

「獅子舞に"ある事"をされると、"御利益(ごりやく)"があるそうだ。さて、それは何でしょう?」


 顔の横で人差し指を空に向けながら、異世界コンビが興味を示しそうなワードで問いかける。

 

「御利益……」(ゴクリ!)

「……なるほど。今からそれを解明して試せと言うことだな」


 うん。理解が早くて助かります。本当に。

あと蘭子が生唾を飲み込むほどの御利益とはなんだろうか?

 

「良い問題ね! まずは蘭子ちゃんから試すといいんじゃないかしら?」


 静香も葵の意図を察したようだ。ノリノリでこのイタズラに乗ってきた。

それに、蘭子を先に行かせるのは良い判断だ。

タカヤが先に行ったら、獅子舞を叩き斬ってしまうかもしれない。

縁起物にそれだけは避けたい。というか普通に事件になるから勘弁してほしい。


 ちょっとハイリスクなイタズラだったな……。

早くも反省モードの葵だったが、蘭子は「よし。わかった」と言ってズカズカと人混みの中へ消えて行った。


「お、ちょっと失礼! ……おお! すまん少年!」


 そんな声が聞こえ、黄色い髪の毛だけがピョコピョコと人混みの中を移動していくのが見える。

蘭子は右に左に進路を変えながら、ついに山車の正面に這い出てきた。


 そして、一度仁王立ちを決めると"ビシッ!"っと獅子舞に向かって指を差した。


 

「おい! 獅子舞! わたしは御利益をいただきたい! どうすればい——」


 

 ガブっ!


 

「おお!」

「ふふ!」

 


 蘭子がマミった。

 

 頭を綺麗に飲み込まれ、テレビアニメで見たトラウマシーンを再現するかのようだ。

縁起物なのにいいのかこれ?


「——!? 蘭子! 貴様っ! 蘭子に何を——」


 そこで飛び込んで行ったのは、鋭い目をまん丸に見開いたタカヤだった。

慌てて人混みを掻き分け、蘭子を救わんと勇敢に山車の前に辿り着いたが——。


 

ガブっ!


「油断しすぎだろ……」

「ぶっ! ふふふふ!」

 

 呆れ果てた葵と、その肩にもたれて笑う静香の目の前には、シュールすぎる光景が広がっていた。


 山車の上には、いつの間にか金色の顔をした獅子舞が増えており、タカヤはそいつに捕食されていた。

隣ではマミった蘭子がまだ頭を咥えられている。


『パシャ』


 葵は思わずスマホのカメラを向けずにはいられなかった。

その場の思いつきだったが、ドッキリは大成功だ。

「いい写真が撮れた。あとでヒロシにも送ってやろう」

「ふふ! ちょっと葵! 笑わせないでよ!」

静香は笑いが止まらず、葵の肩をパシンと叩いた。


 葵のスマホには"獅子舞に噛まれる異世界人"の写真が保存された。

それが異世界のお姫様と騎士(ナイト)様なら、本来は世界初となる大スクープだ。

だが、それは事情を知っている四人だけの秘密であり、四人だけの思い出としてカメラロールの中で輝いている。

唯一、事情を知らないヒロシだけが世界初の目撃者となるわけだが、本人は知るよしもないのだった。

真面目にやってるんだけど、どうしてもギャグ要因になってしまうタカヤ。

本当は強いんだよ。


時々スピンオフの『気になるセリスは止まらない』で彼の強さを思い出してあげてください(笑)

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