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気になる蘭子は止まらない  作者: きら
野球って何だ?

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53/70

再び激突!ヒロシvsタカヤ〜1回裏の攻防〜

「あの柵の向こうにボールを放り込めば1点入るということだな」


ベンチの前で円陣を組んだウインドーズ9の中で、ホームランを打つのが当然のように言う男が居た。

我らが騎士、タカヤである。

「見ていろ蘭子。俺がホームランとやらを打ってきてやる」

そう言って打席に向かっていく姿は、蘭子に良いところを見せられるチャンスとあって、やたらと気合いが入っているようだ。

「葵、あれ大丈夫かしら?」

静香が苦笑いでベンチに戻った葵の隣に座った。

「気合いが空回りしなければいいんだけどね」

葵も同じく苦笑いで返す。

そう。

タカヤはしっかりしていて、完璧で、誇り高き騎士である……そんなイメージを纏っているが、実は結構ポンコツだったりする。

色々と面白いヤツなのだが、時々残念な結果を招くこともあり、それはそれでちょっと心配している2人なのだ。

「いや、あおい、しずか。今日のタカヤは何か違うぞ。やってくれそうな気がする」

ヘルメットとバットを用意しながら、蘭子がニヤリ笑ってネクストバッターズサークルに向かって行った。

「まぁ、蘭子がああ言っているなら大丈夫な気がするけど」

「そうね。練習でもいいバッティングしていたし、期待はしているのだけれど……」

そう言いつつも、心配は消えないままだ。

その理由は、2人の視線の先にあった。

左打席に入ったタカヤの構えがおかしいのである。

「で……、何で抜刀の構えなんだ?」

「目も瞑っているわ。あれで打てるのかしら?」

右手で掴んだバットを左の腰付近に下ろし、左手で支えている。

そんな様子に、苦笑いでも呆れ顔でもなく、2人はもはや『無』の表情となった。

しかし、そのベンチの空気は、主審の「プレイ!」の声によって消されていく。


「最初からクロちゃんだな!今日こそ決着をつけてやる!」

「……それはこっちのセリフだ」


肩を回しながら軽口をたたくヒロシとは対称的に、タカヤはクールに目を瞑ったまま答えている。

そして、ヒロシは振りかぶって1球目を投げた。


キレのある自慢のストレートは、糸を引くようにキャッチャーの神原部長が構えたミットへと向かっていく。


その時――。


タカヤの目が「カッ!!」と見開かれた!


「柔よく剛を制す!」

   

カッキーン!!


刀を抜刀するように振った打球は、青空の彼方へ飛んでいく。

必殺技のように、静香に習った極意を言いながら……。


「ライト!」


ヒロシが慌てて声をかけるが、ライトの3年生はすでに全力で打球を追っていた。


そして……。


そのまま吸い込まれるように、ライトスタンドの芝生へと着弾したのだ。

 

「おおおおおお!!」

「やったでやんすー!」

「ナイスバッティングネ!」

その瞬間、ベンチは大騒ぎになった。

「おおっ!?」

「嘘でしょ!?」

葵と静香も、目をまん丸にしてダイヤモンドを駆けるタカヤを見ていた。


マウンド上では、ヒロシが膝に手をついて「やられたー!」と悔やんでいる。

それを横目に、クールにホームインをするタカヤを蘭子が出迎えていた。


「どうだ蘭子。惚れ直したか?」

「もともと惚れていない。勘違いするな。だが……、よくやった!」


トンチキ異世界コンビは笑顔でハイタッチを交わしている。

これでスコアは2−1。

早速欲しかった1点が最高の形で取れたぞ。

 

「アオイ。これで良かったか?」

さりげなく蘭子に振られたタカヤがベンチに戻ってきた。

「ああ!お前……、かっこいいな」

葵は拳を突き出してグータッチを交わす。

そして、ベンチのチームメイト達も次々にハイタッチで祝福する。

 

「ちょっと待って……。何か色々つっこまなければいけないことがある気がするわ」

だだ1人、一連の流れに困惑している静香を残して……。

毎章、誰得対決シリーズやってんな。

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