再び激突!ヒロシvsタカヤ〜1回裏の攻防〜
「あの柵の向こうにボールを放り込めば1点入るということだな」
ベンチの前で円陣を組んだウインドーズ9の中で、ホームランを打つのが当然のように言う男が居た。
我らが騎士、タカヤである。
「見ていろ蘭子。俺がホームランとやらを打ってきてやる」
そう言って打席に向かっていく姿は、蘭子に良いところを見せられるチャンスとあって、やたらと気合いが入っているようだ。
「葵、あれ大丈夫かしら?」
静香が苦笑いでベンチに戻った葵の隣に座った。
「気合いが空回りしなければいいんだけどね」
葵も同じく苦笑いで返す。
そう。
タカヤはしっかりしていて、完璧で、誇り高き騎士である……そんなイメージを纏っているが、実は結構ポンコツだったりする。
色々と面白いヤツなのだが、時々残念な結果を招くこともあり、それはそれでちょっと心配している2人なのだ。
「いや、あおい、しずか。今日のタカヤは何か違うぞ。やってくれそうな気がする」
ヘルメットとバットを用意しながら、蘭子がニヤリ笑ってネクストバッターズサークルに向かって行った。
「まぁ、蘭子がああ言っているなら大丈夫な気がするけど」
「そうね。練習でもいいバッティングしていたし、期待はしているのだけれど……」
そう言いつつも、心配は消えないままだ。
その理由は、2人の視線の先にあった。
左打席に入ったタカヤの構えがおかしいのである。
「で……、何で抜刀の構えなんだ?」
「目も瞑っているわ。あれで打てるのかしら?」
右手で掴んだバットを左の腰付近に下ろし、左手で支えている。
そんな様子に、苦笑いでも呆れ顔でもなく、2人はもはや『無』の表情となった。
しかし、そのベンチの空気は、主審の「プレイ!」の声によって消されていく。
「最初からクロちゃんだな!今日こそ決着をつけてやる!」
「……それはこっちのセリフだ」
肩を回しながら軽口をたたくヒロシとは対称的に、タカヤはクールに目を瞑ったまま答えている。
そして、ヒロシは振りかぶって1球目を投げた。
キレのある自慢のストレートは、糸を引くようにキャッチャーの神原部長が構えたミットへと向かっていく。
その時――。
タカヤの目が「カッ!!」と見開かれた!
「柔よく剛を制す!」
カッキーン!!
刀を抜刀するように振った打球は、青空の彼方へ飛んでいく。
必殺技のように、静香に習った極意を言いながら……。
「ライト!」
ヒロシが慌てて声をかけるが、ライトの3年生はすでに全力で打球を追っていた。
そして……。
そのまま吸い込まれるように、ライトスタンドの芝生へと着弾したのだ。
「おおおおおお!!」
「やったでやんすー!」
「ナイスバッティングネ!」
その瞬間、ベンチは大騒ぎになった。
「おおっ!?」
「嘘でしょ!?」
葵と静香も、目をまん丸にしてダイヤモンドを駆けるタカヤを見ていた。
マウンド上では、ヒロシが膝に手をついて「やられたー!」と悔やんでいる。
それを横目に、クールにホームインをするタカヤを蘭子が出迎えていた。
「どうだ蘭子。惚れ直したか?」
「もともと惚れていない。勘違いするな。だが……、よくやった!」
トンチキ異世界コンビは笑顔でハイタッチを交わしている。
これでスコアは2−1。
早速欲しかった1点が最高の形で取れたぞ。
「アオイ。これで良かったか?」
さりげなく蘭子に振られたタカヤがベンチに戻ってきた。
「ああ!お前……、かっこいいな」
葵は拳を突き出してグータッチを交わす。
そして、ベンチのチームメイト達も次々にハイタッチで祝福する。
「ちょっと待って……。何か色々つっこまなければいけないことがある気がするわ」
だだ1人、一連の流れに困惑している静香を残して……。
毎章、誰得対決シリーズやってんな。




