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気になる蘭子は止まらない  作者: きら
野球って何だ?

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43/67

チーム名を決めてください

「よし!みんな!休憩しよう!」


キャッチボールで十分な手応えを掴んだ葵の号令で、全員が三塁側ベンチへと戻ってくる。

程よく汗をかいた面々は、ジュースの商品名が書かれた赤や青のベンチに腰掛けていく。

そして、それぞれ汗を拭いたり水分補給をしながら、ほてった身体をクールダウンしていた。

そんな様子を見ながら、葵もタオルで汗を拭いながらベンチに座る。

(ふぅ……さすがに久しぶりに動いたから疲れたな)

まだ練習は始まったばかりだが、何せ野球をやるのは小学生以来なのだ。

そして、やたら身体能力が高いメンバーと身体を動かしたこともあり、想像以上に体力を使った気がしていた。

だが、この心地よい疲れが懐かしくも感じており、不思議な感覚でスポーツドリンクをグビっと飲む。

「葵、私達の動きはどうだったかしら?」

そう言いながら、タオルを首にかけた静香が隣に座る。

「バッチリだよ。2人とも言うことないくらい。本当、その運動神経が羨ましいよ」

葵は素直に感想を言うが、2人のレベルは既に葵と同等かそれ以上ではないかと感じるほどだ。

むしろ、逆にアドバイスをすることを遠慮してしまいそうな勢いで上達している。

「よかった。みんなの足を引っ張りたくないもの。気になるところがあったら、遠慮なく教えてちょうだい。葵コーチ!」

(……いやいや、静香に限ってそれはないって)

静香は笑いながら揶揄ってくるが、むしろ足を引っ張りそうなのが自分になりそうな気がしてきて、葵は思わず苦笑いをしてしまう。

すると、タカヤが『あぶさん』ことハグリッドひなのさんを連れてやってきた。

「アオイ、ちょっといいか?蘭子も、ちょっと来てくれ!」

蘭子は少し離れた場所に座っており、まるで、玉座に座った姫君へ仕える家来達のように、親衛隊の面々がもてはやしていた。

「ん?なんだ?」

松坂先輩にタオルとスポーツドリンクを押し付けると、葵の側へやってきた。

本当に家来みたいな扱いだよな……あの親衛隊。

葵は、1人だけ座っていることに申し訳なく感じて立ち上がると、タイミングをみてタカヤが話を始めた。

「あぶさんが2人に聞きたいことがあるらしい」

「なんでしょうか?……えっと、ハグリッドさん?あー、ひなのさんの方がいいですか?」

タカヤが話を振ると、葵は呼び方に少し困りながらハグリッドひなのさんに向き合った。

「やーん!『あぶさん』でいいわよ!そっちの名前は、大人になってからっ!」

あぶさんは、引き顔の葵の胸にツンと人差し指を突いて続ける。

「聞きたいことはね、このチームに名前があるのかしら?って思ってね」

……そうだった。

メンバーを集めることに必死で、チーム名までは考えていなかった。

いざとなれば、『蘭子と愉快な仲間達』とか適当に付けても問題なさそうな気がするが……。

「そうだな……。蘭子?チーム名はどうするか考えてるか?」

葵は蘭子へ話題を振ると、『チーム名』と言うワードを聞いた仲間が、自然と周りに集まってきた。


「ふむ。『エルトリアナイン』でどうだ?」


このお姫様は、異世界のお国のお名前を堂々と掲げる気でいらっしゃいますわ。困りますわね。

「おお!なんかカッコいいでやんすー」

「あ、あの?『エルトリア』ってどう言う意味ですか?」

チームメイトの反応もそれぞれだった。

矢部先輩はノリノリだが、松井さんは不思議そうな顔をしている。

というか、半分くらいのメンバーが松井さんと同じ反応をしていた。

「うーん。あまりその名前は使わない方がいいんじゃないかしら?」

だが、空気を察した静香がすぐにフォローに入ってくれた。

本当の話をするわけにもいかないし、誤魔化すにしてもリスクが高い。

「なぜだ?俺たちらしさを表現できていて良いと思うが?」

ほら。この蘭子大好き騎士団長が誤魔化しても台無しにしそうだし。

そもそもあなたは『身分を隠せ』って言われてませんでしたっけ?

「何か連想できるものにすればいいんじゃないか?象徴する生き物とか現象とか」

もはや隠すこともしないトンチキ異世界コンビに呆れながら、葵はどうにか『エルトリア』から離れさせようとする。

 

「…………はっ、良い名前を思いついたぞ!」


目を瞑って腕組みをしながら10秒ほど考え込んだ蘭子は、頭の上に電球が灯ったように明るい顔で告げた。

あまり良い予感はしないが、エルトリア王国のお姫様がじっくり(?)考案したチーム名だ。

皆の衆、よく聞くように!




「わたし達のチーム名は……『ウインドーズ9(ナイン)』だ!」



「……………………」


数秒間、無言の時が流れた。

なぜだろう。

時空の歪みが生じたように感じた。


やがて、呆れ顔の葵が口を開いた。

「なんか……幻のOS(オーエス)みたいなチーム名だな」


そして、チームメイト達が次々に反応する。

 

「オー!イイネ!ウインドーズナインカッコイイネ!」

「やだー!!まーぼーろーしー!!」

「かっこいいでやんすー!」 

「すごくエナジーを感じる名前だよ」

「あ、あの蘭子様っぽくてすごくいいです」

「親衛隊一同賛成です」

 

「なんで評判いいんだよ!」

どう考えてもツッコミどころがある名前なのに、この助っ人達は満場一致だった。

しかし、お姫様の案は賛成多数なので可決するしかなさそうだが、葵は聞かずにはいられなかった。


「……なんで『ウインドーズ』なんだ?」

 

「エルトリアと言ったら風だろ?風、ウインド……ウインドーズだ!」


ドヤ顔で説明する蘭子に、葵はさらにつっこむ。


「『ウインズ』とか『ウインドナイン』じゃないんだな……」


葵に言われた蘭子は、まん丸お目目で葵の顔をじっと見つめている。

やがて、何事もなかったかのように全員に向かって言うのだ。


「よし!休憩は終わりだ!練習するぞ!」


「待て待て待て!今の会話を無かったことにするなって!それに、まだ練習の準備があるから次の話までちょっと待って!」


こうして、彼らは寄せ集めチームから、処理速度にクセがありそうな『ウインドーズ9(ナイン)』へとアップデートされた。

まだキャッチボールしかしてない。

練習パート濃い(笑)


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