迷いの森へ
というわけで、早速行こうとしたんですが。
「ナツちゃん、お弁当も持たずに行く気?」
「あっ…」
現在時刻、午前10時。
昼ご飯を食べる時間にはまだ早いし、今食べたら晩御飯の時間よりも前にお腹が空いてしまう。
お弁当を持って行って、向こうで食べるのが理想なのだ。
お弁当も持たずに迷いの森に突撃しようとした私に、キルトさんは苦笑している。…なんか、最近苦笑される頻度が高い気が…いや、私の行いのせいなんだけどね。
結局、1時間後の午前11時にテイム屋の前に集まるということで、私達は準備をするために別れた。
約1時間後
現在時刻11時5分前。
今更ながら、うきうきワクワクじゃないけど、楽しみというか何と言うか。落ち着かなくなってきました。
だってだって、久しぶりのピクニックなんですよ?いや、違うけど。薬草採取という目的があるけど。
それに、コロンという新しい仲間もいるし…いやいやいや、コロンを飼い始めたのだって、仕事のためなんだから!
これは仕事これは仕事、と頭をブンブン振って、シャッキリしようとしたんですが。
「ふくくっ…な、何やってるの?ナツちゃん」
いつから見ていたのやら。お店の中からキルトさんが笑いながら歩いてきました。
うー…今の見られてたとか…しかも笑われたし…恥ずかし…。
恥ずかしくて顔を見れない気持ちを、コロンの頭を撫でることで誤魔化す。
「じゃあ、行こうか!」
キルトさんがそう言って歩き出すので、私も行こうと顔を上げた瞬間
「ひっ!っいいいいいいいいい?!!!!」
視界に入ったのは、所謂ムシタイプの魔物達でした。
「あ、ナツちゃんごめん!虫苦手だった?」
私の悲鳴に驚いて、ついでその理由を理解したキルトさんが声をかけて来るのですが。
無理無理無理無理無理ムシタイプとか無理いいいいいいいいい!!!
特にそこのケム!異邦人さん達からの「明らかにケムシだろ!なんでそんな中途半端なんだ!」という良く分からない意見に定評があるそこのケム!!お願い私の視線を一心に集めないでええええええ!!!
わたしの心の声が聞こえたのかは分かりませんが、唐突に目の前のケムが消えた。
魔物が消えるのは、魔物を倒したときか、テイマーの才能を持った人が契約水晶に戻したときかの二通りのみ。
予想はしてたけど…キルトさんの右手にはその契約水晶が握られていた。
「これで大丈夫かな?ごめんね、嫌な思いさせて。じゃ、行こう!」
そう言って、今度は振り返らずスタスタと歩いていくのですが。
テイマーは基本、その魔物が好きだから、契約して配下になってもらうものだ。
だからさっきのケムも、私は苦手でも、キルトさんはきっと好きなのだろう。
「キルトさん、さっきはごめんなさい」
少し先を歩いていた彼に追いついて、謝る。
そしたら、苦笑して、私の頭をぽんと撫でてくれた。
「誰にでも苦手なものはあるし、ナツちゃんが謝ることじゃないよ」
「でも…」
「僕としては、お礼の方が言われたいなー?」
「!…うん、ありがとうございました!」
逆に気遣われてしまいました。
あーあ。なんか、適わないなあ…。
「着きましたー!」
迷いの森近くの草原に到着。
お弁当を食べるには、まだちょっと早いので。
先に少しやることにしました。
「それで、ナツちゃん。何を採りに来たの?」
「えっと、魔力草です。マナポーションの材料になるんです」
「マナポーション…!」
キルトさんが驚いている。
それもその筈 、今道具屋には、マナポーションは置いていないのだ。
異邦人さん達は、向こうの世界の知識でそういうのがあることは知っていたらしいんだけど、実際には売っていないから、存在が怪しまれていたらしい。
実際は売るのを制限されてただけなんですけどね、と苦笑して、コロンを呼ぶ。
「コロン、これが魔力草だよ」
コロンに魔力草の匂いを嗅がせる。今回のコロンの仕事は、匂いを頼りに、魔力草を探すことなのだ。
「ワン!」
「覚えた?」
「ワン!」
どうやらもう覚えてしまったようだ。
魔力草は、普通の草と違って匂いが強烈だと言われているけど。
人間にはわからないものだから、凄いなあと思ってしまう。
「よし、じゃあコロン!魔力草を探しに行こう!」
「ワン!ワン!!」
というわけで、魔力草探し開始です!




