テイム屋で 続
「えへへへへ」
ナツリム癒され中です。
今私、コロンに抱きついて、毛並みに頬ずりしてるんですが。
ふわっふわで、もう最高に気持ちいいです。
コロンも嫌がる素振りは見せないし………あー、駄目かも……眠いいいい…。
「ナツちゃん、そんなとこで寝たら風邪ひいちまうぞー?」
ゲージおじさんも苦笑気味です。
流石にまたあんな大騒ぎになるのは嫌なので(嬉しかったりするけど)、自重しよう。
名残惜しげにコロンに抱きつく力を強めてから、離れる。
うう…私の癒しが…。
「んじゃー、そいつを飼う上での注意事項を伝えるぞ。紙にも書いといたから、無くさないようにな」
「はい!」
おじさんが真剣な顔をしているので、こちらも真剣な顔で向かう。
注意事項…いくつあるんだろ。覚えられるかな…?
「注意事項は一つだけだ。そいつのことは犬だと思え。以上!」
「わかりました!」
よかった。一つだけなら簡単だ。
コロンを犬だと思えばいいんだね!
……………ん?あれ?おかしくない?
「え、何でですか?」
コロンは魔物だよね?
ちょっと混乱?してるけど、聞いてみる。
「あ、そういやナツちゃんは知らないのか。すまん、ノリでやっちまった」
「は、はあ…」
ノリでって………えー。
で、詳しく説明してくれたんですが、
「えーと、つまり、コロンは犬ってこと?」
結論はこうである。
魔物は人間とは違い、自分の周りにいる生き物を見て育つらしい。
例えば、犬に囲まれて育った魔物は、犬と全く同じ行動をする。
そういう習性を利用というか、何と言うか…まあ、理解して育てているわけで。
人に育てられたから、人の言う事が大体理解出来るけど、普通の犬と同じ環境で育ったから、行動は犬と変わらないということらしい。
「ん、まあそういうことだ。
でもまあこいつは犬じゃねえから、犬が駄目なのでもこいつは食べられる。
あとは、こっちの言葉がわかってるぐらい賢いから、いろいろ話しかけてやるのがいいかもな」
言いながら、ぐわしぐわしとコロンの頭を撫でまくっている。おじさんもコロンの毛並みが気に入ったようだ。
「これで一応俺の仕事は終わったが…ナツちゃんはこれから行くのか?」
「はい。今から行けば晩御飯には間に合うと思うし、家族にも今日は遅くなるって言って置いたので、大丈夫だと思います」
コロンにぎゅーっと抱きつきながら言う。
私は近々、迷いの森の近くに生えている薬草を取りに行かなければならないのである。
コロンは、その薬草取りに必要だから飼い始めたわけだ。
「そうか…だがやっぱり、迷いの森の近くに一人で行くのは危険だろう。そいつがいるとはいえな」
ゲージおじさんは心配そうな顔をしていた。
うう、わかってはいたけど、そんな心配そうな顔をされると困るというか…照れくさくて、思わず俯いてしまう。
「俺がついてってやりてえが、仕事があるからな…。!おい、キルト!ちょっと来い!」
何か思いついたのか、お店の外へおじさんが声をかける。
ひょこっと音がしそうな可愛い仕草で、キルトさんが店内を覗いた。
「ゲージさん。何ですか?」
「おう。実はな、ナツちゃんが迷いの森に用があるってんで行ってくるんだ。ついててやってくれねえか?」
「!了解しました!!」
おじさんの突然の頼みに思わず、え、と言ってしまいそうだったけど、それより早くキルトさんが承諾したので、その言葉は喉の奥に消えてしまった。え、キルトさんいいの?
「えっと、有り難いんですけど、大丈夫ですか?用事とかは…。」
異邦人さん達は皆、もう一つの自分達の世界がある。
二つも世界があるのだから、やっぱり忙しいんだろう。
そう思って遠慮していたんだけど…
「大丈夫だよ。言ったでしょ?今日は祝日だから、1日暇だって」
「あ…」
「それとも、ナツリムちゃんは僕のこと、信用できないかな?自慢じゃないけど、そこそこ強いんだけどなー?」
苦笑しながら言われてしまった。
流石に、ここまで言われて断るのは失礼だろう。
「…わかりました。じゃあ、今日は宜しくお願いします!」
「うん。任せて」
笑顔で頷く彼を見て、頼もしいなとか思ったのは内緒である。




