第5問「先生に挑め!3年Q組からの挑戦状」
翌日の六時間目終了。
チャイムが鳴ると同時に、3年Q組の教室はいつも以上の熱気に包まれた。
「今日は俺たちが先生に問題を出す日!」
「絶対に九条先生を困らせよう!」
「先生でも解けない問題を探してきた!」
ホームルームが始まると、九条智哉は笑顔で教卓に立った。
「今日は約束どおり、私が解答者です。」
「ただし、一つ条件があります。」
教室が静かになる。
「皆さんが出す問題は、『答えを聞けば納得できる問題』にしてください。」
「無理やりな問題や、答えが複数ある問題は出題できません。」
「フェアに勝負しましょう。」
「はい!」
元気よく返事が響く。
最初に手を挙げたのは、男子生徒の拓海だった。
「先生! 僕が出題します!」
「お願いします。」
拓海は黒板の前へ立ち、少し緊張しながらチョークを持った。
⸻
【今日のQ 難易度:★★☆☆☆】
ある男の子がお父さんに言いました。
「お父さん、お父さんより僕の方が年上になったことがあるよ!」
男の子は嘘をついていません。
どういうことでしょう?
⸻
「おぉ……。」
「これは面白い。」
先生たちも一緒に考え始めた。
数学教師・神崎先生。
「タイムマシン?」
英語教師・佐伯先生。
「未来の話?」
校長先生。
「うーん……。」
九条先生も腕を組み、しばらく考え込んだ。
教室中が静まり返る。
一分。
二分。
三分。
九条先生が顔を上げた。
「分かりました。」
拓海は少し緊張した表情で尋ねる。
「答えは?」
九条先生は優しく答えた。
「お父さんが生まれる前の話ですね。」
「男の子は生まれていませんが、『お父さんが0歳になる前』なら、お父さんより年上という表現になります。」
拓海は首を横に振った。
「違います。」
教室がどよめく。
「先生が外した!」
「初めてじゃない?」
九条先生は笑いながら言った。
「なるほど。では降参です。」
拓海は嬉しそうに黒板へ向かった。
⸻
【答え】
男の子がお父さんの肩車をしていたから。
⸻
教室中が静まり返る。
数秒後――。
「あっ!」
「そういうこと!」
「年上じゃなくて、“上”か!」
「なるほど!」
大爆笑が起こった。
九条先生も思わず笑った。
「一本取られました。」
「これは良い問題です。」
⸻
【解説】
この問題は、「年上」という言葉に注目させることで、ほとんどの人が「年齢」の話だと思い込んでしまいます。
しかし、問題文には「年齢」とは一言も書かれていません。
「お父さんより上にいたことがある」という意味で考えると、
肩車をしていたため、お父さんより高い位置にいた=「上になったことがある」と考えられます。
思い込みを利用した、ひらめき問題でした。
⸻
教室は大きな拍手に包まれた。
九条先生も拓海へ拍手を送る。
「お見事です。」
「先生が負けました。」
拓海は照れくさそうに笑った。
「やった!」
「九条先生に勝った!」
教室中が歓声に包まれる。
九条先生は教卓へ戻ると、生徒全員を見渡した。
「今日は、私も勉強になりました。」
「問題を解く力も大切ですが、『問題を作る力』はもっと難しい。」
「良い問題とは、答えを聞いた瞬間に『なるほど!』と思える問題です。」
全員がうなずく。
「来週からは、また私が出題します。」
「ただし……。」
九条先生は意味ありげに笑った。
「次回からは、他のクラスにも挑戦状を送ります。」
「3年A組、3年B組、そして先生方。」
「学校全体で『ラスト10分』を楽しみましょう。」
「おぉーーー!」
拍手と歓声が教室いっぱいに響く。
こうして『ラスト10分』は、3年Q組だけの時間ではなく、学校中が楽しみにする名物ホームルームへと少しずつ成長していくのだった。
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