第6問「3年A組への挑戦状」
翌日の放課後。
六時間目終了のチャイムが鳴る。
「先生!」
「今日は3年A組との勝負ですよね!」
3年Q組の生徒たちは朝からその話題で持ちきりだった。
九条智哉は微笑みながら教卓へ立つ。
「今日は、この学校で初めてクラス対抗の謎解きを行います。」
「挑戦するのは、3年A組。」
「ルールは簡単です。」
「私が出題する問題を、どちらのクラスが先に正解するか。」
「相談は自由。」
「制限時間は10分。」
教室中が大きく盛り上がる。
その頃、3年A組でも同じ説明が行われていた。
モニターには3年Q組と教室がリアルタイムで映し出されている。
「負けるなよ!」
「Q組には勝つ!」
職員室でも先生たちが見守っていた。
校長先生まで腕を組みながらスクリーンを見つめている。
「始めましょう。」
九条先生は黒板にゆっくりと問題を書いた。
⸻
今日のQ 【難易度:★★★☆☆】
ある部屋には、
時計が3個あります。
しかし、
正しい時間を示している時計は1つだけ。
残り2つは止まっています。
さて、一番役に立つ時計はどれでしょう?
① 正しく動いている時計
② 1時間遅れて止まっている時計
③ 完全に止まっている時計
理由も答えてください。
⸻
「え?」
「どれも役立つんじゃ?」
3年Q組も3年A組も一斉に考え始める。
数学教師・神崎先生も考える。
「止まった時計は一日二回合うよな……。」
英語教師。
「いや、正しく動いている時計が一番じゃ?」
校長先生も腕を組む。
「難しい……。」
五分が過ぎる。
まだどちらのクラスも答えが出ない。
すると3年Q組の女子生徒・美咲が静かに手を挙げた。
「先生。」
「はい。」
「答えは①です。」
「理由は?」
「正しく動いている時計は、いつ見ても正しい時間が分かります。」
「止まった時計は一日に二回しか正しい時間になりません。」
「だから、一番役に立つのは①です。」
九条先生は笑顔になった。
「正解です。」
3年Q組から歓声が上がる。
一方、3年A組からは、
「あぁー!」
「止まった時計のことばかり考えてた!」
と悔しそうな声が聞こえた。
⸻
【答え】
① 正しく動いている時計
⸻
【解説】
この問題は、「止まった時計は一日に二回正しい時間を示す」という有名な話を思い出させる問題です。
しかし、質問は
「一番役に立つ時計はどれか」
でした。
止まった時計は、たまたま一日に二回しか正しい時間になりません。
一方、正しく動いている時計は、いつ見ても正しい時間を教えてくれます。
つまり、
最も役に立つのは、正しく動いている時計です。
問題文を最後まで正確に読むことが大切でした。
⸻
九条先生は黒板を消しながら話し始めた。
「今日のテーマは、『問題を最後まで読むこと』です。」
「受験でも、仕事でも、日常生活でも、人は途中で『こういう問題だろう』と思い込んでしまいます。」
「ですが、問題文を最後まで丁寧に読むだけで、防げるミスはたくさんあります。」
生徒たちは真剣な表情で聞いていた。
そのとき、3年A組の担任が教室へ入ってきた。
「九条先生。」
「今日は完敗でした。」
「でも……。」
「次回は、うちのクラスから問題を出させてください。」
九条先生は笑顔で右手を差し出した。
「もちろんです。」
「謎解きは勝ち負けだけではありません。」
「一緒に考える時間が、一番の宝物です。」
二人は固く握手を交わした。
教室には大きな拍手が響く。
『ラスト10分』は、いつしか3年Q組だけではなく、学校全体をつなぐ特別な時間になり始めていた。
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