第3問「先生たちへの挑戦状」
翌日の放課後。
六時間目終了のチャイムが鳴る。
3年Q組の生徒たちは、誰一人として帰る準備をしない。
「先生!」
「今日は職員室の先生たちも参加するんですよね!」
「絶対見に行きたい!」
九条智哉は微笑みながら時計を見る。
「もちろん。」
「今日の問題は、3年Q組だけでなく、先生方にも挑戦してもらいます。」
教室の後ろには、数学教師の神崎、英語教師の佐伯、理科教師の大石、国語教師の桜井、そして校長先生まで見学に来ていた。
「今日は負けませんよ。」
神崎先生が腕を組む。
九条は黒板に大きく書く。
⸻
今日のQ【難易度:★★☆☆☆】
ある家族に、5人兄弟がいました。
長男の名前は「一郎」
次男の名前は「二郎」
三男の名前は「三郎」
四男の名前は「四郎」
では、五男の名前は?
(ヒント:問題文をよく読んでください。)
⸻
「簡単じゃん!」
「五郎!」
教室中から一斉に答えが飛ぶ。
先生たちも笑う。
数学教師・神崎先生も自信満々だ。
「これは五郎でしょう。」
校長先生もうなずく。
「私もそう思います。」
九条は何も言わない。
「理由までお願いします。」
神崎先生は答える。
「一郎、二郎、三郎、四郎と来たら、当然五郎です。」
九条は静かに首を横へ振った。
「残念。不正解です。」
「えぇぇぇ!?」
教室が騒然となる。
すると、一人の女子生徒が問題文をもう一度読み返した。
「先生……。」
「はい。」
「『ある家族に、5人兄弟がいました。』ですよね。」
「そうです。」
「最後に『では、五男の名前は?』とは書いてありますけど……。」
数秒考えたあと、女子生徒は笑った。
「答えは……**『では』**じゃないですか?」
教室中が笑いに包まれる。
九条も笑いながら首を振る。
「惜しい。」
すると、普段あまり発言しない男子生徒がゆっくり手を挙げた。
「先生。」
「答えは……問題文には書かれていません。」
九条は満足そうにうなずいた。
「その通りです。」
「この問題には、五男の名前は一切書かれていません。」
「一郎、二郎、三郎、四郎と並んでいるので、多くの人は『五郎』と思い込んでしまいます。」
黒板に大きく書く。
⸻
【答え】
問題文だけでは分からない。
⸻
【解説】
この問題は「思い込み」を利用した問題です。
人は並びを見ると、無意識に続きを予想してしまいます。
しかし、問題文には「五男の名前」は書かれていません。
つまり、正しい答えは
『情報不足で答えは分からない』
です。
大切なのは、
「知っていること」と
「思い込んだこと」を
区別することです。
⸻
教室は静まり返っていた。
神崎先生が苦笑する。
「完全に引っ掛かりました……。」
校長先生も笑う。
「教師になって三十年以上ですが、まだまだ勉強ですね。」
九条は教卓の前へ戻った。
「今日、皆さんが学んだのは知識ではありません。」
「『思い込みを疑う力』です。」
「勉強でも、仕事でも、日常生活でも、とても大切な考え方です。」
チャイムが鳴る。
「それでは今日のラスト10分は終了です。」
「また明日、新しい一問でお会いしましょう。」
生徒たちは拍手を送り、先生たちも自然と拍手を重ねた。
こうして、『ラスト10分』は3年Q組だけではなく、学校中が楽しみにする時間へと少しずつ変わり始めていた。
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