第9問「全校生徒への挑戦状」
月曜日、午後三時五十分。
六時間目終了のチャイムが鳴る。
いつもなら各教室でホームルームが始まる時間。
しかし今日は違った。
『ピンポンパンポーン』
校内放送が流れる。
「全校生徒の皆さん、これより『ラスト10分』を開始します。」
放送室から聞こえてきたのは、九条智哉先生の声だった。
「今日から、この学校全員が挑戦者です。」
一年生、二年生、三年生。
先生たちも、職員室で仕事の手を止める。
校長室でも校長先生が椅子から立ち上がる。
学校中が静まり返った。
「それでは、今日のQです。」
各教室の電子黒板に問題が映し出された。
⸻
今日のQ【難易度:★★★☆☆】
ある男の人は、
毎日エレベーターに乗って会社へ行きます。
会社は10階にあります。
しかし男の人は、
毎日7階でエレベーターを降り、
残りの3階は階段で上がります。
ただし、雨の日だけは10階までエレベーターで行きます。
さて、なぜでしょう?
⸻
「これは聞いたことある!」
「いや、忘れた……。」
「健康のため?」
一年生の教室。
「運動不足だから?」
二年生の教室。
「節約?」
三年Q組。
「雨の日だけっていうのがヒントかな。」
数学教師・神崎先生。
「毎日七階……。」
校長先生も考え込む。
残り五分。
突然、一年A組の男子生徒が手を挙げた。
「先生!」
「分かった!」
担任の先生が放送室へ連絡する。
しばらくすると、九条先生の声が校内放送から流れた。
「一年A組の山田さん。」
「答えをどうぞ。」
「男の人は背が低いからです!」
学校中が静まり返る。
「エレベーターの10階のボタンに届かないから、7階までしか押せません。」
「でも雨の日は傘を持っています。」
「その傘で10階のボタンを押せるからです!」
放送室。
九条先生は思わず笑顔になった。
「正解です!」
その瞬間、
学校中から拍手が起こった。
「一年生が正解した!」
「すごい!」
三年Q組でも拍手が鳴り響く。
九条先生は続けた。
⸻
【答え】
男の人は背が低く、普段は7階のボタンまでしか届かないため。
雨の日は傘を使って10階のボタンを押せる。
⸻
【解説】
この問題では、
「なぜ7階で降りるのか」
ばかり考えてしまいます。
しかし、
視点を変えて
「なぜ10階のボタンを押せないのか」
を考えると答えが見えてきます。
背が低いため、
普段は7階までしか届きません。
しかし雨の日は傘という道具があります。
その傘を使えば、
10階のボタンにも届きます。
つまり、
問題のカギは『傘は雨を防ぐためだけの物ではない』という発想でした。
⸻
九条先生は校内放送で話し始めた。
「今日、一番早く正解したのは一年A組でした。」
「おめでとうございます。」
校内放送の向こうから拍手が聞こえてくる。
「今日の問題は、知識ではなく発想力が試される問題でした。」
「学年は関係ありません。」
「一年生でも先生でも、柔軟な発想があれば正解できます。」
「だから私は、この『ラスト10分』を続けています。」
放送が終わると、
一年生も二年生も三年生も、
そして先生たちも笑顔だった。
職員室では神崎先生が苦笑する。
「また一年生に負けましたね。」
校長先生は大きくうなずいた。
「だから面白いんです。」
「正解に年齢は関係ない。」
その日の放課後。
校内掲示板には新しいランキングが貼り出された。
ラスト10分ランキング
1位 一年A組 ⭐1
2位 三年Q組 ⭐0
3位 三年A組 ⭐0
先生チーム ⭐0
「ランキングだ!」
「絶対一位になる!」
「先生たちには負けない!」
学校中が新たな目標に向かって盛り上がり始める。
九条先生はその様子を職員室の窓から眺め、静かに微笑んだ。
「考えることを楽しむ学校。」
「少しずつ、理想に近づいてきましたね。」
そして翌日。
九条先生は、これまでで最も難しい問題を用意していた。
「さて……。」
「明日は、先生たちも苦戦するかもしれません。」
――続く。
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