31 王都への道(2)
バキン!
ルーナの魔術により、カイの力が上がった。
だというのに、魔物に飛びこんでいった瞬間、硬い金属を刃で叩いたような音がする。
「なんだ、こいつ」
後ろに飛び退り、もう一度飛び込んでいく。
黒い身体のような部分が、べコリとへこんだ。
ダメージは入れられるみたいだ。
そうほっとするカイの目の前を、魔物の腕のような長いものが横切っていった。
硬い、尖った爪のようだった。
「うわっ」
その手の2度目の振り回しは、ルーナの元へ向かった。
「避けろ!」
錫杖を地面に突き立て、ルーナが構えると、その錫杖が突き飛ばされんばかりに魔物がぶつかってくる。
「きゃあ!」
その魔物を錫杖ごと押し返すように、カイは魔物に刃を叩きつけた。
ベコン。
魔物は面白いようにへこむ。
そう何度かへこませた末に、魔物は霧散した。
「……ふぅ」
カイが一息つくと、馬車に乗っていたローブ姿の男女、魔術師らしき二人組が、気を抜いて地面に座り込むのが見えた。
「ルーナ、大丈夫か」
「はい」
錫杖が叩きつけられ、驚いた顔のままのルーナだったけれど、返事を聞く分には大丈夫そうだ。
カイは男女に向き直る。
「お二人さんも、大丈夫だったか?」
「あ……」
先に我に返ったのは男性の方だった。
カイよりも二回りほど年上に見えるその男性は、
「ああ、いや、助かりました」
と、細い腰を上げた。
目の前には、それほど壊れたとも言えない馬車がある。
カイは腹の中で、思う。
……コイツらに恩を売っておけば、この馬車に少しでも乗せてもらえるんじゃないか?そうすれば王都まで歩かなくても済みそうだ。
できれば馬車が欲しいと思うものの、さすがに馬車が欲しいと言ってしまえば追いはぎと変わらない。
よし。
「あ、ああ。なんでまた魔物と馬車になんか乗ってたんだ」
「窓から入ってきよったんですよ。突然」
男性が、困った顔で言う。
「そりゃあ大変だな」
カイは、自分が多少なりとも芝居がかった喋りになってしまったことに気づきつつも、そのまま会話を続けた。
「もしよかったら、俺達が護衛として雇われてやってもいいが?」
「おお!それは助かります」
男性が言いつのる。
「こちらもこの有り様で」
確かに、女性の方は、まだ声も出さないほど震えているようだった。
「では、馬車の馬を落ち着かせて来ますので、少し待っていていただけますか」
「ああ」
カイはほくそ笑む。
これで、しばらく歩かなくても済むってものだ。
「で、何処まで行くんだ?」
「我々は、この先に教会を構えております、魔術師です。その聖堂なんですが、いいでしょうか」
さて、新しい冒険ですね!




