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英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


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30 王都への道(1)

 テクテクと歩く。

 目指すは王都だ。

 勇者の葬儀が行われるという。

 どこかで馬車を調達しなくてはならないが、その葬儀の行進までには王都に辿り着ける算段だ。


 そこで、その勇者オルディオの遺体を確認したいというのがカイの希望だ。

 王のことだ。

 実際には死んでいない勇者を、もう死んだことにしようとしていた。

 今回の遺体発見の報も、事実ではあるまい。

 事実ではないとわかりつつ、それでも、確認をしなくてはならない。そう、思う。


 そう思いながらも、テクテクと二人、歩いていく。

 カイは、ルーナとの歩幅のことを思う。

 俺が担げばもう少し早く歩ける。

 いや、流石におんぶで二人旅というわけにもいかないか。

 馬車もなく、のんびり二人旅のようになってしまったが、これで精一杯だろう。


 森を抜け、平原に辿りついたかと思えば、また大きな森へ入る。

 そんな中で、カイとルーナは一台の馬車に出会った。

 真っ白な馬車。教会関連か、と連想する。


 お?


 お?と思う。


 実際、その馬車はなんだかおかしかった。

 まだ、横倒しは免れているものの、なんだか魔物にでも出会したようだった。


 少し離れたところから様子を伺う。


 馬車は走っていた。

 けれど、あまりにもゆったりすぎる。ふらついている。


 あの馬車に、乗せてくれないかな……。


 打算的なものを考えるけれど、そううまくいくわけにはいかなかった。

 そして、いつしか、カイとルーナの目の前で、その馬車はとうとう止まってしまった。


「やっぱりあの馬車、おかしくないか」

「そうですね」


 見渡せば、森の中。

 街道として大きな道はつながっているものの、こんなところで馬車が止まるほどの何かはないだろう。


 のんびりと様子を窺っていると、馬車の扉が、バン!と開く。


 中からは、確かに、どこかの教会のものらしきローブを着た、男性と女性二人組が出てくる。

 そしてあろうことか、その二人の後から、黒い塊が飛び出してきたのだった。


 それは、人間よりも一回り小さな魔物だった。


「うわっ」


 カイの驚きの声に、馬車から出てきた男性の方が、二人に気がついた。


「た、助けてください……!」


 やはり、魔物に襲われて困っているのだろう。


「仕方がない、行く」


 カイは、一つ深呼吸をすると、

「我が身に刻まれし誓約、──抜剣」

 抜剣詠唱を唱える。


 そのあとを追うように、

「わかりました」

 と、ルーナが錫杖を構えた。

「女神イニシエ」

 呪文を唱え出す。

「留まりし力よ、照らされし地に降り、共に立ち上がりなさい。女神イニシエの名の下に」


 ルーナが唱えると、光がカイの後を追うようにカイを包み込んだ。

新展開とでも言いましょうか。

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