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英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


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25 ドラゴンの山(9)

 青年は、床に正座させられていた。

 両脇には、カイとルーナが立つ。


「ここには、お前一人だけなのか?」

 カイが、青年に詰め寄った。

「はい」

 と言うしかない青年に、カイがため息を吐く。


「どうしてこんなことしたんだ?」


 青年は、もう抵抗する気力を失っているようだった。


「言われたからやっただけですよ。こんなところで農場を続けるのは、食料を手に入れるだけでも大変で。税を取らないだけでなく、報酬まであるって言われて。でもほら、なんていうか。お金のためとかじゃなくて。つまり……、抵抗できる立場じゃなかったんです」


 税。

 つまりそれは、この辺りで税を徴収してる人間の仕業だと言ったようなものだ。


「つまり、その話を持ちかけたのは……」


「領主です」


 青年が訴えるような目で二人を見上げてくる。とりあえずその視線は無視し、二人はブタ小屋で見つけたロープで青年を縛った。

 “ドラゴン”を始めとしたブタ達が、周りに集まってくる。


「ごめんよ〜ブタ達〜。オレ、つかまっちまったわ」


 パタパタと手を振って、青年はロープに縛られたまま山を降りるのだった。


 ロープに縛られた青年を先頭に、細い山道を降りていく。

 ルーナとカイの目の前には、雲がかかった山の景色が見えた。

 白い空気が、青い空に溶ける。


 テクテクと歩く道は、全員が無言だった。




 道ゆく人が、こちらを見た。

 それはそうだろう。農場の主人を、ロープで縛って引き連れているのだから。


 領主の家の前に来た時、ちょうど、領主が家を出てきたところだった。


「領主様〜」

 泣きそうな農場の主人を、領主が無視して歩く。

 そして領主は、カイとルーナに話しかけかけてきた。


「この人は?」


 領主は、お腹をタプタプいわせながら、農場の主人を顎で示した。

「農場の主人ですよ」

 カイは呆れ声だ。


「ああ、山頂の農場の。そういえば、こんな顔だったか。いやぁ、先代とは懇意にしてたんですけどねぇ。いやはや」


「実は、居なかったんだよ。ドラゴン」

「な?ななななんですと!?」


 先程から、領主はわざとらしい声を出した。

 その声は、初めから知っていたことを教えているようなものだった。

 けれど、そのようなわざとらしい表現でも、ここまで上手くやってこれていたということなのだろう。


「では、私たちはコイツに騙されていたということなのか!!」


 そして領主は、農場の主人に罪を着せるつもりのようだった。


「いや、コイツな」

 カイが、演劇に突っ込むように口を挟む。

「ドラゴンはやらされていた自演だっていうんだよ」

さて、ドラゴン退治もラストでしょうか。

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