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英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


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24 ドラゴンの山(8)

 それは、岩の間から、あっさりと外れた。

 カイはそれを明るい陽の光の下でしげしげと眺める。


 文字が書いてある。

 日付、そして、製作者の名前らしきもの。


 声を出さないようにし、その魔道具を布で包んだ。


「……なんだこれ」


 第一声に出たのが、そんな感想だった。


「けど、魔道具なんてものが出てきたなら、いよいよ領主が怪しくなってきたな」


 魔道具は高価なものだった。

 一つで家一軒買えるものまで存在する。

 それは、魔術師達の研究成果であり、唯一の力の出るものだからだ。

 カイは、世間一般の魔道具の価値を知っている。ルーナでさえも、酒場で働いていた経験から、魔道具がどれほど驚異的なものなのかを知っていた。


 こんな高価なものを買う金が、どこにあるのかと考える。

 まず、あのほったて小屋の持ち主の農場のオーナーだろうか。

 もちろん、その可能性もある。実際に、こんな魔道具を隠し持っていたのだから。

 けれど、この農場にドラゴンがいることをアピールしたとして、いったい何に優位なのだろう。


 それよりも、領主の方が可能性が高かった。


「まあまず、順当に農場のやつに話を聞きますか」




 そこから、

「たのもう!」

 とカイが農場に乗り込むまで、すぐのことだった。


 バン!と開いた扉に驚いた餌やりの青年が、ピョコンと飛び上がる。


「うわあ!」


 実際に青年は、数センチほど椅子から飛び上がった。


「な、なななななな」


 “な“が異様に多いけれど、何の用でやってきたのかわかっているらしく、青年はそれ以上、言葉を続けなかった。

 青年が押し黙る。


 そこで、二人はその小屋の異様さに気づいた。

 小さなテーブルとたった一脚の椅子。

 一瞬で疑問がよぎる。

 この青年は餌やりの使用人で、オーナーは別にいるのだと。

 けれど、そうではないのか。


 カイは、例の魔道具を目の前に差し出した。


「これは、なんだ?」


「これはですね」

 たじたじになりながら、青年が答えた。

「オーナーが」


 オーナー、か。


「じゃあ、オーナーの部屋で待たせてもらうよ」


「あっ」


 青年の小さな声は、奥の扉を開ける音にかき消された。


 扉を開けた先には、ベッドが一つ。

 どうやらこの青年の寝室らしい。


 カイが、青年の顔を見る。

「ここが“オーナー”の部屋なのか?」

「あー、その、ですね」


 ダッ!


 青年が、小屋の入口の方へ走った。

「えいっ」


 ルーナが錫杖で青年の足を捉える。

 青年はそのまま床へ転がり、起きあがろうとしたけれど、諦めたように力を抜いてしまった。


「ちょっと話してもいいかな」


 カイが青年の顔を覗き込む。


「はい」

領主が登場しそう!

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