22 ドラゴンの山(6)
「ギョアアアアアアアアア」
聞き間違いではない。
確かに、最初に聞いたような、大きな声が聞こえた。
街の人達は、あの声を怖がっている。
あの声を聞いて、ドラゴンがいると思い込んでしまっている。
それなら。
カイとルーナ、二人はその場に立ち上がった。
あの声の主を、探さなくてはならなかった。
「あっち、じゃないでしょうか」
「そうだったか?」
二人、ふーむ、という顔をする。
そこは岩ばかりの山の上だというのに、あまりにも音が響いた。
それほど大きな音であれば、どちらから来た音なのかすぐには判別出来ない。
それほど狭くもない山頂を、二人はぐるりとまわっていく。
まわってみてわかるのが、この山頂のほとんどが、農場だという事実だ。
「やっぱり、この中か?」
農場は、柵に囲われ、目の前に広がっている。
広大という言葉をつけるのに躊躇するほどでもない、なかなか大きな農場だ。
カイは、柵を握り、強度を確かめると、おもむろに柵を飛び越えた。
「えっ」
ルーナから小さな驚きの声が出る。
「こっちへ」
そう言うカイにとっては普通の柵でも、ルーナにとっては自分の肘より高い高さにある大きな柵だ。
錫杖の受け渡しくらいはできたものの、ルーナ一人で飛び越えられるほどの柵ではない。
柵越しに、二人で顔を見合わせてしまう。
「えっと、」
カイが手を差し出す。
「ほら、こっちへ」
「はい」
オドオドとするルーナの脇を支え、カイはそのまま持ち上げた。
「!?」
突然飛び上がったルーナは、その空気の中に投げ出されるようになりながら辺りの景色を見渡す。
「……っ」
息を呑む。
こんな広い世界、みたことがあっただろうか。
こんなに広くて、明るい世界を。
青くてどこか白い空を見上げたときに、視界いっぱいに広がる景色のことを。
次にルーナが降り立ったのは、柵の中の岩場だった。
なんだかちょっとした旅行に出ていたような感覚だ。
ルーナがあまりにもぱちくりとした顔を見せたせいで、カイは少し笑ってしまう。
「…………」
二人は言葉を交わさないまま、カイは先頭を切った。
無言でそろそろと、農場の中を歩いていく。
農場は、思った以上にも岩場だった。
それも、思った以上にブタばかりだ。
ブヒブヒと声がする中で、二人は岩場から岩場へ渡るように隠れながら歩く。
農場の中だと言うのに、ルーナより大きな岩が、ゴロゴロと転がっている場所まであった。
そこでまた、
「ギョアアアアアアアアア」
なんていう声が、山頂に響いた。
「うわ」
それは耳を塞ぐほどでかい声で、農場の中で声がするのは間違いないようだった。
さて、声の主は……。




