21 ドラゴンの山(5)
頭上には、青い空が広がっていた。
ルーナの真剣な瞳に、青い空が映る。
近くの農場で、豚がブヒブヒと鳴いた。
「得をするやつ?誰だ?」
そう聞かれ、ルーナは困ったようにカイを見る。
「この街の、領主です」
領主。
「領主?」
この街の領主デュルドンには、この街に来たときに会った。
服のサイズが合っていなさそうな、やけに恰幅のいいおっさんだ。
印象はよくはないが。
「けど、依頼人だぞ?」
街にドラゴンがいるなどと言ってしまえば、国からも他国からも目をつけられてしまうのは必然。
それも、それが虚偽であったなら隠し通すのは不可能に近い。
国の精鋭達がこぞって山に登ることになってしまう。
「それでいちいち金貨なんて渡してたら、破産しちまうし」
「本当に渡してたかなんてわかりませんし、それに」
ルーナは錫杖をキュッと握る。
「公に出した依頼じゃないのかもしれません」
「公……っていうと、ギルドとかにか?」
「はい。もし、この街の中だけの依頼なら、冒険者はそれほど来ないはずですよね」
「まあ?」
確かに、冒険者達は、冒険者同士で情報を共有している。
国から出された情報ではない、冒険者同士の生の情報だ。
冒険者達は、始めは口々に伝えていたのかもしれない。
けれど、冒険者はあまりにも多かった。
なので、冒険者達は、自分達で冒険者の為の集会所を作ったのだ。
それが、冒険者ギルドと呼ばれるものだ。
主要な街にはあるその建物は、基本は酒場のようだった。
けれど、周りの壁には多種多様の依頼書がある。
冒険者達が自分の足で見に行ったもの。冒険者達が持ち帰った口から口へ伝わった伝聞。それに、誰かが冒険者達へ依頼したもの。
それらは、冒険者達の目に留まることになる。噂になることもあれば、大勢で一つの依頼へ向かうこともある。
けれど、ディーが持っていた依頼というものは、どこかそれらの依頼とは違った。
ディーが直接どこかから受け取っている依頼なのだろう。
信頼のおけるものもあれば、怪しいものもあるようだった。
今回の依頼も、依頼自体を疑わねばならないのかもしれない。
「街の中だけで、ドラゴンが出たと噂にしておけば、街の人達を騙すことができます。山の上から声が聞こえれば、ドラゴンがいるかいないか確かめようなんて思わないでしょうから。そして、その街の人達からお金を取れば……」
「確かに一理あるな」
カイはふむ、と考える仕草をした。
「そもそも、あの鳴き声はどこからきたんだ?」
確かに、『ギョアアアアアアアアア』なんて声が、山の上からしたと思ったが。
恰幅のいい領主はやっぱり怪しいですよね!




