20 ドラゴンの山(4)
「ドラゴンはいないんだな?」
「だからドラゴンは……」
と青年が言ったところで、青年とカイの目が合い、青年が口をつぐんだ。
「いません」
と、静かに青年が言う。
カイが鼻から息を吐いた。
「じゃあ、あの途中で落ちていたアーマーは」
ルーナが思い出したようにそう口にすると、
「あれほど金ピカなもの、ドラゴンが見逃すはずないよな」
とカイが受ける。
ドラゴン。
カイとルーナは、ドラゴンに出会ったことがない。
この国でも、ドラゴンは珍しい存在だ。
ドラゴンの目撃情報も少ない。
ドラゴンなどを見てしまったが最後、街ごと破壊し尽くされ、この世から消し去られてしまうのみだからだ。
ただ言われていることには、光るものが好きでよく集めているだの、好物は人間で会った人間は食べられてしまうのだなどと言われていた。
実際、光るものが好きだというのは、探検家が見つけた宝石だらけの洞窟というものが、話の発端になっていると言われている。
「それにしても」
カイは、ずっしりと重い、手の中の金貨の重さを確かめる。
金、銀、銅と貨幣はあるけれど、高価な金貨の方が他のものよりずっと重く作られていた。
重さそのものが貨幣価値、ということだ。
「ここまでしてドラゴンを装うとはな」
けれど、それにしても不可解だ。
「なんで、これほどまでしてドラゴンを装わなくてはならなかった?」
「ここのオーナーを呼んでくれないか?」
カイは、考えることがそれほど得意ではない。
この件も、本人に聞いてしまった方が早いと判断した。
「あー、」
青年が口ごもる。
「今、ちょっといないんですよね」
「そうか」
カイは言いながら、切り立った山の崖の下を眺める。
まさか、この山をまた登ってこいなんて言わないよな?
「いや、待ってるよ」
「待ってるんですか?中にはお通しできませんよ?」
「いいよ」
そこで、近くにある大きな石に腰掛ける。
ルーナも、同じところで座ろうとしたけれど、目線の位置に座れるわけもなく、諦めて岩に寄りかかった。
「得になるやつ、か」
「得ですか?」
「ああ、この件は、後ろに誰かいる気配がするだろ?だって考えてもみろ。この農場がわざわざ金貨ばら撒いて、ドラゴンがいるなんて噂を広めてどうするんだ?どう見ても、この農場に観光客が増えたところで、金貨分稼げるとは思えない。そもそもドラゴンの山なんて、誰も登りたがらないからな」
「じゃあ、宝物でも隠し持っているんでしょうか。そうすれば、宝物に人を近づかせず、守ることができるでしょう?」
「いや、その宝物をわざわざ配ってしまったら、得にはなってないだろ。黙って持ってた方がよくないか?」
「そうでしょうか」
そこまで話して、ルーナがふと顔を上げる。
「私、一人だけ思いついたかもしれません。この件で、お金を稼ぐことができる人」
とても空気が薄そうな農場ですね!




