18 ドラゴンの山(2)
山は険しかった。
坂自体はなだらかだけれど、少し横を見れば、柵のないまっすぐな崖だ。
道幅は広いものの、一歩外へ出れば、真っ逆さま。ひとたまりもないだろう。
「大丈夫か?」
そんな中、カイはルーナに声をかけながら登る。
強化の魔術をかければ二人とも疲れ知らずで登るこちはできたけれど、だからといって安全に登れるとも限らない。
「大丈夫です」
言いながら、ルーナは遠くを見た。
頂上まではまだあるけれど、岩肌がそのまま露出した切り立った山からは、遠くが見渡せた。
森が見える。森の向こうは商店街ドットがあるだろうか。
その向こうの遠くに見えるのは、きっと黄金の都アウレリア。
これほど、遠くまで来てしまった。
けれどもう、怖くない。
ここにいることが怖くない。
カイが、一緒だから。
登っていけば行くほど、誰かが使っているらしい穴はなくなってくる。
すっかりただの山道になったところで、大きな岩の向こうのに、ルーナは光るものを見つけた。
「あれは……?」
「捨てられた防具……か?」
それは、冒険者が履くアーマーブーツだった。
片方だけのそれは、誰かが脱ぎ捨てたものなのだろう。
「じゃあここに、ドラゴンが?」
山頂はもう少し。
確かに今、ドラゴンに襲われでもしたら生きて帰れはしないだろう。
「我が身に刻まれし誓約、──抜剣」
抜剣した剣を、構えながら登っていく。
そろりそろりと山頂へ。
その途中途中でも、ドラゴンに襲われでもしたのか、防具がところどころに落ちていた。
剣がガラリと落ちていたこともあるほどだ。
「…………」
ルーナがそれを眺める。
「よほど、お腹が空いたドラゴンさんなんですね」
「……そうかもしれないな。あの領主も、一体どれだけの人間を犠牲にしたんだか」
カイが、剣をギュッと握る。
「気を引き締めて行こう」
その時だった。
「ギョアアアアアアアアア」
少し離れた場所で、大きな方向が聞こえた。
上方、山頂の方に違いなかった。
「来たか……?」
二人は、意を決してそちらの方へ向かう。
「これが退治できたら、借金を返せるんだ……!」
「ですね!」
ルーナが錫杖を握り直す。
「女神イニシエ」
錫杖が光る。
「留まりし力よ、照らされし地に降り、共に立ち上がりなさい。女神イニシエの名の下に」
光を纏った二人は、山頂へと急いだ。
相手はドラゴン。
飛ばれてしまえば、もう手も足も出ないかもしれない。
空気の薄い山頂。
霧のように雲がかかる。
そして二人は、その霧が晴れた瞬間、広い広い山頂の風景を見た。
「……これ、は……」
さて、山頂の風景とは。




