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英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


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17 ドラゴンの山(1)

「これでよかったんでしょうか」

「よかったんだろ」


 カイとルーナ、二人は森の中を歩く。


 屋敷は全焼。家具の類も残っていない。

 結果的に言えば、借金は増えた。


 報酬金はちゃんといただいてきた。

 けれど、それを数倍上まわる借金が追加されてしまったのだ。

 もう、雑草取りなどで返せる金額ではない。


 必要なのは、でかい報酬!

 借金を返し、なおかつ旅費になるほど大きな金額だ。


 だからといって、こんな依頼を待っていたわけではない。


 カイの手の中にある依頼書には、『ドラゴン退治』と書かれていたのである。




「ドラゴンなんて、退治できるんですか?」

 ルーナの疑問に、カイが沈黙した。


 そして、商店街ドットから馬車に揺られること半日。


 峻険の街トラリーに二人は降り立ったのである。


 峻険の街トラリー。

 それは、国の南側、切り立った山の麓にある。

 半分は山の麓の崖に突っ込むように、そこにあるような街だった。

 家々は建っているものの、崖の中にも扉やくり抜かれた穴が見える。

 住宅の方は家だろうが、どうやらあの山に洞窟を掘って倉庫にでもしているようだった。


 依頼人はこの街の領主、デュルドンだ。

 正装をして整えてはいるものの、ところどころから肉がはみ出ている。サイズが合っていないんじゃないかと思える服装の男だ。


 そしてカイとルーナは、その領主の家へと招待されたのだった。

 いや、実際に通されたのは、その領主の家から裏手の山を登った山の洞窟の中だ。


 中は、岩肌そのままの壁に、客室用のテーブルやランプが設えている、なんとも変わった部屋だった。

 うす暗いけれど、洞窟感は薄い。


「この街に、ドラゴンがいるのか?」


 カイが、キョロキョロと見回しながら尋ねる。

 目の前には、大きな皿の上に、果物が山となって積まれている。


 デュルドンは、コソコソ話をするように、カイに顔を近づけてきた。

「そうなんですよ。大変困っているのです」


 どうやら、この街の住人達の生活を担っている山の上に、ドラゴンが住み着いてしまったらしい。

 今まで何人か冒険者を送り込んだけれど、皆、勝つことができなかった。

 それほど大きなドラゴンが、この山の上にいるのだ。

 時々聞こえる咆哮。

 街の人々は、怯え上がっていた。


「そんな大変なことが……」

「俺達が……ドラゴンを……?」


 カイとルーナは顔を見合わせる。


 そんなことが、できるのか?

 たった二人だけで。


 けれど、負ってしまった借金を返すには、もうこの方法しかない。


 カイは、隣に座るあどけない少女の顔を見る。


「まあ、やってみるしかないか」

まだ旅に出れない二人。

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