14 草刈りの依頼(3)
屋敷の奥へ進めば進むほど、蔓は太くなっていくようだった。
ルーナは、恐る恐る前へ歩く。
植物が蔓延っている割には、床は頑丈で足音ひとつ立たない。
窓の薄明かりからなんとか床の状況を見て、カイとルーナは連れ立って進んで行った。
足音はない。
ギッ。
ルーナが放つのは、錫杖を床についた音くらいだ。
新しいブーツも、あまり音が出ないようになっていた。冒険者用のブーツの音が出ないのは、静かに魔物の近づくためだろうか。
ギッ。
「…………」
ギッ。
ルーナの少し前を歩くカイの足音も、聞こえない。
革製の鞘はそれほど装飾があるわけでもなく、思った以上に静かにしている。
ギッ。
「カイ」
「どうした?」
「さっきから、何か音が聞こえませんか?」
「そうか?」
ルーナは、音の出所を見つけようと、辺りを見渡す。
下は、特に何もない。それほど広くもない廊下には、赤い絨毯が敷き詰められている。
上は、蔓が蔓延っている。玄関あたりで見た蔓よりも、5倍は太い蔓で、すでにカイの腕よりも太い蔓が所狭しと前から後ろへ伸びていっている。
その蔓を追いかけて後ろを見たけれど、薄暗い暗闇へ蔓が伸びていっていること以外は、特におかしいところもない。
左側は窓のある壁だ。所々に蔓が天井から伸びている。
右側は、扉が付いている壁だった。特に何の変哲もない扉の列。扉と扉の間には、それほど高価にも見えない壺や蝋燭立てが並べて置いてあった。
ギッ。
ルーナは、また左を見る。
おかしい。何か音がしたはず…………。
ルーナが左を見た瞬間、何か、ドス黒い蔓が見えた。
それほど太くはない。
けれど、チョロチョロと動くそれと、目が合った気がした。
「きゃああああああ!!」
「我が身に刻まれし誓約、──抜剣」
ルーナの叫び声に反応したカイが、抜剣詠唱を唱える。
ピンと張られた空気の中で、カイの剣は青白く光る。
蠢くそれを視界に捉えると、カイは足を踏み出し、それに飛びかかった。
蔓のようなものの先を切り落とす。
ほんの少し切り落とせたその黒いものは、二人の目の前で霧散した。
「魔物……?」
カイが、その見慣れた霧散を見て呟いた。
「魔物、なんですか?これが?」
ルーナが、蔓を見上げる。
「これはどうだかわからないが」
カイが、抜剣したままの剣で、蔓を切り落として見せる。
太い蔓は、そのまま二人の目の前に落ち、床に転がった。
「魔物が関わってるのは確実だ」
二人は意識を前に向ける。
「少し、気を引き締めていこうか」
「はい」
次は戦闘シーンかな?




