13 草刈りの依頼(2)
大きな扉が目の前にそびえ立っている。
この扉を開けて、草原になっていたらどうすればいいのか。いや、そんなことはありえない。
そう思いながら、二人で、扉を開ける。
中は暗かった。
昼間だというのに、異様に暗い。
「目が慣れてくれば、見えないこともないな」
カイが、一歩屋敷の中に踏み出す。
足元に、草のようなものはない。感触も少し弱った絨毯のようなものだ。
それもそうだろう。
まさか、こんな頑丈な壁に囲われ、こんな頑丈な床に支えられている家の中が、草だらけなんてないだろう。
そう思った矢先のことだった。
その暗い廊下の壁に、カイが手をついた。
「うわわわわわ」
それは、予想していた壁の感触ではなかった。
なんだか柔らかい。そして湿っている。
「これは……植物か?」
ギュッと握ると、確かに葉もあれば蔓もある植物のようだった。
「あ、上です!」
廊下に、ルーナの声がこだまする。
カイが、咄嗟に上を見上げた。
そこには、天井に縦横無尽に張り巡らされた蔓植物の姿が見えた。
「うそだろ……」
それから二人は、しばらくその屋敷を探索することにした。
けれど、二人には疑問が一つ。
「これ、依頼主どこにいるんだ?」
依頼表を、窓からの薄明りでじっとよく見る。
そしてそれには、何度見たところで、『作業後確認』なんていう、いつ会えるのかもわからない文言が書いてあるだけのようだった。
「こんなに植物が蔓延っていると、人なんて住めないですよね」
最初は、この屋敷の中に住んでいるのかと思っていた。
けれど、屋敷の中は、人の気配すらしない。
「まあ、しょうがないな」
カイの手の中に握られているのは、柵の中の草刈りの依頼だ。
きっと、これも含まれているんだろう。
「やっつけてしまうか」
「そうですね」
結局、屋敷の中の蔓をひとまずやっつけることにした。
剣で刈ってしまおうかと思ったけれど、一度切り付けたら、そのまま壁も抉れてしまったのでやめた。
「……この勉強、ディーがしてくれると思うか?」
「わかりません」
結局、小型ナイフやらなにやらを使い、蔓を切っていくことにした。
「地道すぎないか?」
「はい」
ルーナが天井を見上げる。
じっと見ていると、ある一つの流れが見えてきた。
「これ……、本体があるんじゃないですか?」
「え?」
カイも天井を見上げる。
ナイフでバリバリ切ったおかげで、先ほどよりずっと明るい天井だった。
白く汚れた窓から、薄く光がさしている。
そして確かにその蔓は、廊下の奥の方から流れるようにこちらへ向かってきているようだった。
「奥、か?」
思いの外大掛かりな草刈りですね!




