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英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


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9 何の魔術を使ってた?(2)

 まさか。


 そう思いながら、ルーナは走る。

 騎士団は、街の一番下に、街を取り囲むように所々に作られていた。

 階段を出来るだけ急いで降りる。

 水が広がっているので、足がすぐに取られる。走るのがままならない。


 何事もなければいい。そうすれば、のんびりした顔のカイとすれ違うだけだ。


 けれど、ルーナは、抑えきれない焦燥を抱えて、街の下まで急ぐ。


 ルーナが一番下の通りに足をかけた時、

「お嬢ちゃん?そんなに急いでどうした?」

 と声がかかった。


 パッと顔を上げると、そこには帯剣した男性が二人立っていた。

 仕事中といった雰囲気。

 騎士団の人?


 男性二人が近づいてくる。

「あの……っ」

 自信が持てない。

 騎士団は、どんな格好をしている人のことを言うんだろう。


 男性達はルーナの倍も大きい。

 もし、敵だったらひとたまりもないだろう。


 足がすくむ。


「騎士団の人ですか?」


 そう尋ねると、男性達は、顔を見合わせた。


「何かあったのか?」


 どっち?どっちなんだろう。


 男性達はさらにルーナに近寄ってきた。


「もしかして、あの騎士の青年の仲間か?」


 ドキリとする。

 この二人はカイを知っているんだ。

 じゃあ、大丈夫な人?

 それはそうかも。だってそもそも、こんな心配、する必要がないことかもしれないもの。


「そうなんですけど」


 そういった瞬間、ルーナの後方で、ドカン!と激しい音がした。


「……!」


 振り返ろうとすると、男性二人の手がルーナに伸びてきた。

「捕まえろ!!」


 すんでのところで、ルーナが走る。

 そんなに早く、走ったことなんてない。


 緩やかに曲がるカーブの道を走る中で、水に足を取られそうになる。

 地面に手をつきそうになったその時。

 少し遠くにカイの姿が見えた。


 剣を構えている。

 近くには、半壊した小屋。


 ああ、やっぱり。


「女神イニシエ」


 女神に呼びかける。

 あの人を護って。


「留まりし力よ、照らされし地に降り、共に立ち上がりなさい。女神イニシエの名の下に」


 集約された光が、錫杖から発せられた。

 カイの方へ。

 男性二人が追ってきていた。


 もうダメだ。


 ガキン。


 ルーナの頭上で金属がぶつかり合う音がして、ルーナが前へ引っ張られる。

「きゃあ!」


 引き寄せたのは、カイだった。


 そのままカイは男性二人と対峙する。

 男性はたじろぎ、それ以上手を出してくる様子ではなかった。


「残念ながら、グルだったみたいだ。自警団のやつも、教会のやつも」


 だとすると、前にいるのは自警団の人。後ろにいるのが……。


 ルーナが後ろを振り返る。


 聖女を名乗っていた女性が、水の教会で見たローブを着た人間達に囲まれていた。


 こっちが、教会の人。

戦闘シーンだ!

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