表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/75

7 聖女の力(3)

「でも、」

 聖女の表情が崩れていく。

「みんなが、これが聖女だって言うんだから、もうこれでいいじゃない?」

 泣きそうな顔だった。苦しそうな顔だった。


「もう、限界なの」


 聖女の、錫杖を掴む手が震える。


「これをすれば、ご飯が食べられるはずよ。毎日毎日」


 顔が、ワナワナと震える。


「わかってちょうだい!」


 聖女が、錫杖を掲げた。

 それは、魔術ではなかった。

 “合図”だ。


 黒い魔物達が、カイとルーナに襲いかかる。

「なん……だと……!?」


 人間が、魔物を使役するっていうのか?


 今更ながら、カイは、これが魔王に寝返った人間の所業なのだと合点がいった。


 魔王の元にいるのは魔物ばかりではない。

 オルディオだって言っていたじゃないか。

 実際には、魔物よりも数倍の人間が、魔王に加担していると。


 剣に魔物が取りつく。

 剣はわずかばかり歪められ、魔物は切り落とされる。

 けれど、魔物としてはそれで十分だったのかもしれない。


 少し剣先がそれたのをいいことに、魔物はどんどんとカイとルーナに襲いかかる。


「女神イニシエ」


 ルーナがまた、さきほどの魔術を使う。


「留まりし力よ、照らされし地に降り、共に立ち上がりなさい。女神イニシエの名の下に」


 光の粒が、カイの周囲にまとっていく。


 それは、強化魔術だった。

 意識は鋭く、その身体を使った限界まで、重く激しい剣を振るうことができた。


「我が身に刻まれし誓約、──抜剣」


 そしてそれは、勇者オルディオほどではないにしろ、抜剣詠唱を使うカイを強化する方法としては、最適なものだった。


 飛びかかった魔物達はその剣に薙ぎ払われる。


 カイが全てを薙ぎ払った時、残ったのは聖女だけだった。


「どうする?」


 カイが声を上げる。


 それは、聖女にかけた最後の選択の言葉だと思われた。

 けれど実際のところ、それは聖女を守るための言葉だった。

 人間をこの手で切る必要がないように。

 この剣に人間が散ることのないように。


「どう、って?私があなた達に屈服するわけがないのよ。これも魔王様の計画の一部。私達が捨てられるなんて、あり得ないのだから」


 聖女は震えていた。


 ルーナは、その震えを見逃すことが出来なかった。


「聖女様は、そんな人ではありません」


 ルーナが声を上げる。


「本物の聖女様なら」


 カイがしてくれた聖女の話を思い出す。


 聖女は、まるで本当に、光のような人。


「でも……っ」


 声をあげようとした偽の聖女が、ルーナを見る。

 ルーナと目を合わせる、

 自分の手を見る。


「ああ……っ」


 偽の聖女はくずおれ、その場にヘタりこんでしまった。


 そこで、この戦いは終わりを迎えたのだ。

一件落着ということで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ