表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/64

✠騎士編 30✠ 新しい旅路を

 消せない焚き火が、ルーナの前で燃えている。

 そばで、カイがうずくまって眠っていた。

 年齢にしては、無垢な顔で眠っている。なんだか、大きな犬のようだ。


 綺麗に編まれた菫色の髪を触ってみる。


 同じ女神の加護を受け、同じ髪色をしたカイがかつて愛した人……。


 そんな人がいたんだ。


 ぶわっと涙が溢れる。

 カイが眠っているのをいいことに、その涙は流れるままにした。


 私のことを、気に入ってくれたのかと、少しだけそう思ってしまった。

 優しい人なんだと、そう思ってしまった。


 けど、これのせいだったんだ。

 菫色の髪。女神の加護。


 そこまで同じなら、何か縁のある人間だと思われていてもおかしくはない。

 親戚だとか、生まれ変わりだとか。


 きっと何の関係もない事を知ったら、カイだって困ってしまうに違いない。

 私は、捨てられてしまうのだろうか。


 ルーナは、じっと、自分の記憶に集中した。


 というのも、ルーナにはまともな記憶がなかったからだ。

 もっともっと小さい頃から、奴隷として生きてきた。

 生きてきた、はずだ。


 とはいえ、同じ毎日ばかりが続く中でどこかへ消え去ってしまったのか、あの店で働く以前の記憶はない。

 子供すぎて、覚えていられなかったのかもしれない。

 気づけば身体に傷を負わせながら、怒鳴られ仕事をこなす毎日の中にいた。


 だから、ルーナには、実際にその聖女と関わりがあったのかなかったのか、同じ女神の加護持ちとして、会ったことくらいはあったのかどうかすら、記憶になかったのだ。


 一瞬。

 一瞬でもいい。

 聖女の姿が記憶の中にあったなら。


 けれど、考えても考えても、薄暗いあの店のこと以外は、頭に浮かぶように現れたあの呪文のことしか記憶はないようだった。


 頭の中にあるのは、大きな真っ白い台の上に乗った、大きな本だ。

 大きな本には、イラストのような色とりどりの装飾と、一言一句綺麗に整えられた呪文、それにつけられた物語のようなものが載っている。


 頭の中で、その本がパラパラと捲られる。


 魔術を使うときには、その頭の中に存在する本の文字を読むだけでよかった。


 ふと思う。

 これも、女神イニシエのカゴというものなのだろうか。


 その本から顔を上げたとき、どんな世界がひろがっているのか、ルーナは知っているような気がした。


 具体的に何がそこにあるのか、思い浮かべられる事なんてないけれど。

 女神イニシエがそこにいるのだろうか、それとも、本がある場所が広がっているのだろうか。


 どちらにしろ、ルーナに出来ることといえば、その本を頼りに魔術を頑張ることだけだ。


 決意を新たにし、手元の錫杖を握った。


 私の新しい相棒になった錫杖さん、私と一緒に、がんばろうね。

騎士編もここで一区切り。次回から改めて、物語を始めたいと思います!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ