✠騎士編 24✠ 町を訪れた聖女(5)
「ついたよ」
そしてなんとかオルディオの家まで歩いていった二人だった。
足元が道らしい道ではなかったことを除けば、よく晴れた気持ちのいい道だった。ピクニック日和とでもいうのだろうか。
二人の目の前に、山小屋にしては大きな建物がそびえていた。
森の手前にあるその家は、思いの外大きく、上品だった。
それでいて、庭には本格的な修練場があるせいで、無骨なイメージになってしまっている。
そこが、オルディオの家だった。
「すごいわ」
聖女の正直な感想だ。
「本格的なのね」
「ああ。師匠はこだわり強いから」
苦笑しながら、カイが家に近付いていく。
「これで、どの程度のお弟子さんを抱えているの?」
「え?」
キョトンと顔を見合わせる。
「師匠は、俺以外に弟子はいないよ」
「え?」
聖女は、その修練場を改めて見渡した。
練習の相手になる人形。
乾いた地面やぬかるんだ地面といった、いろいろな設計の地形。
遠くの的らしきものは、弓用もあれば魔術用もあるようだった。
「これを、個人で管理しているの?」
「そうだよ。俺だって、何日もここまで通って、頼み込んで弟子にしてもらったんだ。剣士オルディオは弟子は取らない」
聖女は改めて眺めわたす。
「もしかしたら、ここにいるのが勇者かもしれない」
「え……?師匠が?」
「そうよ。一度会いたいけど、今日はもう勇者判定はできないの」
聖女の瞳は、すでに何かを決意した瞳だった。
「明日、また来る」
「え、ああ」
「で、どうやって帰るんだ?」
オルディオの家に背を向けた聖女に、カイが言ったのは、嫌味でもなんでもなかったけれど。
「歩いてよ!」
と言う聖女の語気は強かった。
「わかったよ。送る」
そう言うカイに、聖女は口をへの字に曲げて見せる。
「……ええ」
不満そうだったけれど、聖女一人で帰るには少し心細いその道のため、聖女も了承するしかなかったのだ。
そして帰路も、聖女はカイと手を繋いで歩いた。
それは、特別な意味などない触れ合いだ。
けれど、いつになく手を繋ぎっぱなしでいた。
「明日は、ちゃんと勇者判定できるように、体力を温存してくるわ」
「必要なのが体力なら、家に着くまでに使い果たしてそうだけどな。それで、毎日送り迎えすることになるんだろ?聖女様の体力がつくまで」
「流石に、魔術を使う時の体力と、動く時の体力は違うわ」
なだらかな道に差し掛かっても、手を繋いだままでいた。
聖女は顔だけを横に背けて、口を尖らす。
「ちょっと歩いたくらいで、魔術が使えなくなるわけないじゃないのよ。私はこれでも、聖女なのよ」
いよいよ仲良くなってきたと言うことで!




