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英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


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⌘勇者編 23⌘ 勇者の剣(4)

 オルディオが聖剣を手に取った瞬間、空気が止まったようだった。

 世界が、張り詰める。

 オルディオが、静かに巨大な黒い魔物に向かっていったかと思うと、その剣は敵を霧散した。

 黒い魔物の匂いがあたりに薄く散らばる。


 オルディオは、剣を振ると、その剣を鞘に収める。


「オルディオ!」


 魔物から解放されたミーリアを、オルディオが支える。


「大丈夫か?」

「ええ……」


 オルディオはミーリアが無事なことを確認すると、近くの騎士にミーリアを託す。


「ミーリアを俺のテントへ」

「はい」


「オルディオ、あなたは?」


 ミーリアが、オルディオを見上げる。


「僕は、街を守らないと」


 そう言って、オルディオは、魔物の群れへ駆け出した。


 ミーリアの視界は、あっという間に砂埃に阻まれる。

 時折、ゾッとする金属音のような音が、街のそこここで上がる。


「何よ……これ」




 それから、街が静かになるまで、そう時間はかからなかった。

 オルディオは、抜き身にしたままの聖剣を、手に持ち、キャンプへ戻ってきた。


 汚れたマント、服についた血の色。


 ミーリアの足がすくむ。

 なんの血がついているのか聞いてはいけない気がした。

 何があったのか、聞いてはいけない気がしたんだ。


 けれど、オルディオが険しい顔から、ミーリアを見つけ、ふっと微笑むから。

 ミーリアはオルディオの元へ足を運んだのだった。


「おつかれ様」


「ああ」




 オルディオのテントへ戻った後も、オルディオは仕事に追われていた。

 後処理の指示を出すのに、休んでいるわけにはいかなかったのだ。


「勇者様、10区の倒壊の件はどうしましょうか」

「ああ、3班を向かわせてくれ」


 ミーリアはそれを、半ば呆れたように眺めた。

 オルディオは、忙しすぎた。


 一つ息を吐けば、また次の問題ごとがやってくる。


「勇者様、5区で避難所とした倉庫の持ち主が見つからず……」

 そこで、ミーリアが割って入る。

「あたしがわかるわ」


 オルディオとその騎士がすかさず立ち上がったミーリアを見た。


「ああ。では、ミーリアの助言を」

「そうね、5区ってどこ?」

 ミーリアは地図を眺める。

 ミーリアは、勇者軍が街を10区画にわけて管理しているのだと初めて知ったところだ。けれど、そんなのは問題ではない。

「ああ、ここね。ここの倉庫は、ビフが貸し出してるの。現在の借り主は、ビフに直接聞くのが早いわ。ここに住んでる」

 少し伸びた爪の、手入れを怠らない指が、地図の一点を指差した。


 それから、ミーリアはちょくちょく片付け作業の助言を行なった。

 まるで勇者軍の一人のようだと騎士達に言われるまで、それほど時間はかからなかった。

勇者軍にミーリアの居場所ができそうですね!

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