表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/62

✠騎士編 22✠ 町を訪れた聖女(3)

 聖女は、じっと座っていた。いつもの大きな切り株の上に。

 もう少し身体を縮めれば、寝転がれるんじゃないだろうか。


 あまりにも毎日そうしているものだから、カイは、つい口にする。


「毎日、何やってるの」


 つと顔を上げた聖女は、ふわりと笑った。


「力を溜めているの」


 聖女様は、日に一人、勇者かどうか見ていると話になっていた。

 きっとこうして陽の光にあたることで、何か太陽のパワーを吸収しているのだと、そう思った。


「聖女も大変だな」


 聖女はそう言ったカイの顔をゆっくりと眺め、様子を窺うと、


「そう。大変なの」


 と頬杖をついた。


「勇者探しをする時以外は、土地の浄化をやってるのよ。


「土地の浄化?」


「ええ。魔物が歩くと少しだけ、土地が汚れるの。放っておくと、草も生えない不毛の大地になる。国の土地がそうならないようにl私はそもちょっとの汚れをとってるってわけ」


「へぇ」


「見せてあげようか?」


「何を」


「魔術をよ」


 その言うと、聖女は大きな切り株からぴょこりと立ち上がり、まとめている菫色の髪を揺らした。

 錫杖を取り上げ、掲げる。


 え……。


 それだけで少女は、見たことのない聖女になった。

 今まで、ただのラベルとして見ていたものの、実物がそこにあった。


「女神イニシエ」


 自信に満ち溢れた、透き通る声。


「寄る辺なき魂よ、呼びかけに応じ、光に帰りなさい」


 一言一言に、力が溢れる。


「女神イニシエの名の下に」


 世界から、ほんの一瞬、光が消えたような気がした。

 聖女の持つ錫杖が、世界の光を吸い取ったのだ。


 その瞬間、光は溢れ、世界に流れ出す。


 明るい浄化の光。

 ぽわぽわと、空気が軽くなるようだった。


「綺麗だな」


 カイの声に、聖女が笑う。

 嬉しそうな、そして優しい大きな笑顔。


 青い空が一層明るくなった気がした。


 なんだかカイも笑いたくなって、聖女ににっこりと微笑んだのだった。




 そして、また切り株に座り込んだ聖女は、小さなベリーのパイを食べ始めた。

「いくつ食べるんだよ」

 カイが呆れている間にも、いくつものパイが口の中に放り込まれていく。


「仕方がないのよ。魔術を使うと、お腹が減るの」


「みんなそうなのか?」


「知らないわ。ただ私は、使う力が大きいの。少しだけ出すって難しくて。修行しないといけないみたい」


 言いながら、パイを齧る。

 頬を火照らせてその美味しさに打ち震える。


 カイは、そんな聖女のそばが、居心地よく感じ始めていた。


「聖女様も、勇者一行についていくんだろ?」


「ええ。浄化の光は魔物の弱体化に繋がるらしいわ。魔物そのものを消し去ったりはできないのだけれど」


 この子を守る騎士になれたらいいと思えた。

 この子の隣でする旅は、どれだけ明るいものだろう。

 勇者の軍に入れば、そんな日も夢ではない。


 いつかそんな日が、来ることを願った。

ほわほわと仲良くなってきましたかね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ