✠騎士編 22✠ 町を訪れた聖女(3)
聖女は、じっと座っていた。いつもの大きな切り株の上に。
もう少し身体を縮めれば、寝転がれるんじゃないだろうか。
あまりにも毎日そうしているものだから、カイは、つい口にする。
「毎日、何やってるの」
つと顔を上げた聖女は、ふわりと笑った。
「力を溜めているの」
聖女様は、日に一人、勇者かどうか見ていると話になっていた。
きっとこうして陽の光にあたることで、何か太陽のパワーを吸収しているのだと、そう思った。
「聖女も大変だな」
聖女はそう言ったカイの顔をゆっくりと眺め、様子を窺うと、
「そう。大変なの」
と頬杖をついた。
「勇者探しをする時以外は、土地の浄化をやってるのよ。
「土地の浄化?」
「ええ。魔物が歩くと少しだけ、土地が汚れるの。放っておくと、草も生えない不毛の大地になる。国の土地がそうならないようにl私はそもちょっとの汚れをとってるってわけ」
「へぇ」
「見せてあげようか?」
「何を」
「魔術をよ」
その言うと、聖女は大きな切り株からぴょこりと立ち上がり、まとめている菫色の髪を揺らした。
錫杖を取り上げ、掲げる。
え……。
それだけで少女は、見たことのない聖女になった。
今まで、ただのラベルとして見ていたものの、実物がそこにあった。
「女神イニシエ」
自信に満ち溢れた、透き通る声。
「寄る辺なき魂よ、呼びかけに応じ、光に帰りなさい」
一言一言に、力が溢れる。
「女神イニシエの名の下に」
世界から、ほんの一瞬、光が消えたような気がした。
聖女の持つ錫杖が、世界の光を吸い取ったのだ。
その瞬間、光は溢れ、世界に流れ出す。
明るい浄化の光。
ぽわぽわと、空気が軽くなるようだった。
「綺麗だな」
カイの声に、聖女が笑う。
嬉しそうな、そして優しい大きな笑顔。
青い空が一層明るくなった気がした。
なんだかカイも笑いたくなって、聖女ににっこりと微笑んだのだった。
そして、また切り株に座り込んだ聖女は、小さなベリーのパイを食べ始めた。
「いくつ食べるんだよ」
カイが呆れている間にも、いくつものパイが口の中に放り込まれていく。
「仕方がないのよ。魔術を使うと、お腹が減るの」
「みんなそうなのか?」
「知らないわ。ただ私は、使う力が大きいの。少しだけ出すって難しくて。修行しないといけないみたい」
言いながら、パイを齧る。
頬を火照らせてその美味しさに打ち震える。
カイは、そんな聖女のそばが、居心地よく感じ始めていた。
「聖女様も、勇者一行についていくんだろ?」
「ええ。浄化の光は魔物の弱体化に繋がるらしいわ。魔物そのものを消し去ったりはできないのだけれど」
この子を守る騎士になれたらいいと思えた。
この子の隣でする旅は、どれだけ明るいものだろう。
勇者の軍に入れば、そんな日も夢ではない。
いつかそんな日が、来ることを願った。
ほわほわと仲良くなってきましたかね!




