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英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


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⌘勇者編 21⌘ 勇者の剣(2)

 荒野の街オルテガに夕陽が落ちる。

 ミーリアは足早にドニーの店への道を急いだ。

 暗くなってしまうと店まで戻るのに一苦労だ。


 地面が剥き出しの大きな通り。

 今日は砂嵐が酷いから、どこの家も窓を閉めっぱなしだ。


 風は止むことがなさそうで、どこか、無機質な街だと、そう思った。


 そんな時だった。


「キャアアアアアア!」


 離れた場所で、何かがあったようだった。

 この街ではいつだって悲鳴は多い。

 けれど、その悲鳴は、冒険者同士のいざこざというには、あまりにも悲痛だった。


「……何?」


 辺りを見回す。

 目を凝らす。


 砂嵐の中に、黒い影が見えた。


 まさか、魔物なの!?


 そう思った瞬間、まるで答え合わせかのように、誰かの叫び声が聞こえた。


「魔物だ!!」


 なんでこんな日に……!


 先ほど、オルディオが剣を鍛冶屋に預けてしまったことを思い出す。

 今、オルディオは聖剣を持っていない。


 オルディオ……!


 オルディオは、キャンプへ帰って行った。


 ミーリアは、近くの勇者軍の騎士を捕まえた。

「ねえ!」

「はい。あ、ミーリアさん」

「オルディオは、どこ!?」

「キャンプで軍の指揮をしてもらっていますよ」

「そうなのね……!」


 ミーリアは、踵を返すと、ヒールの高い靴で、土を踏み締めて走り出す。

 鍛冶屋へ、急がなくては。


 走る後ろで、「キィィ」と、何かの動物の声のような音が、聞こえた気がした。




 大きな鍛冶屋は、先ほど来た時とは違い、扉が閉まっていた。

 何を通す扉なのか、人間よりも数段でかく作られている。


 ミーリアは、扉を叩いた。


「ねえ!」


 返事は、思ったよりも早く返って来た。

「なんだ?」

 あの、スキンヘッドの鍛治士の声だ。


「剣を取りに来たの」


 その言葉の返事の代わりに、ガコン、と閂が抜かれる音がした。

 ギィ、と音を立てて、薄く扉が開く。

 その隙間から、ミーリアは鍛冶屋に滑り込んだ。


 大きな部屋の中は暑い。

 窯の火は消すわけにはいかないのか、蓋は閉まっているものの、中では赤い火が燃えているようだった。

 窯の火が燃えているからか、高い天井は端が見えなくなっていた。

 ランプが煌々と燃える。


「これか?」


 差し出された剣は、確かにオルディオのものだった。

 オルディオがいつだって大切そうに腰に下げている聖剣を、ミーリアが見誤るはずはなかった。


 掴みやすそうな柄。

 使い込まれた鞘。

 抜いてみると、光りそうな薄い刃が真っ直ぐ伸びていた。


「ありがとう……!」


 ミーリアは、聖剣を持って駆け出した。

 暗闇が迫る荒野の街を。


 待ってて!オルディオ……!

聖剣はオルディオの元に届くのでしょうか。

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