⌘勇者編 20⌘ 勇者の剣(1)
「最近魔物が多くなってきたわね」
と、誰に言うでもなく口に出したのは、ミーリアの先輩の一人だった。
「ああ、昨日の町外れの事件よね。勇者様が倒してくださったみたいじゃない」
「カッコよかったんですって〜!お店に来た女の子が話してたわ」
そんな先輩たちの会話を聞きながら、ミーリアはドニーの店を出る。
確かに、ここ数日で、魔物騒ぎが増えた気がする。
ツカツカと歩きながら、砂だらけの街を眺めた。
確かにこれほど見通しの悪い街だと、魔物も動きやすいのかもしれない、なんて思う。
真剣な表情で歩く。
「何か悩み事かい、お嬢さん」
「ええ、この街の行く末についてよ」
どこからか声がかかったので、その声に返事をする。
「未来を見据えるお嬢さんだな」
「どんな茶化しかたよ」
そちらのほうをぐいっと向くと、そこに笑いながら立っていたのは、オルディオだった。
「オルディオ」
変な顔になりそうなところを、こらえる。
「知的な顔をしてる歌姫を見つけてさ、つい声をかけてしまったよ」
「でしょう。何をしてても絵になるのよ。あたしは」
ミーリアは、長い金髪をふぁさり、と手で払ってみせた。
「あなたはどこに行くの?」
「ああ、鍛冶屋だよ」
「剣でも買うの?」
なんて言いつつ、オルディオの腰に携える聖剣を眺める。
勇者は聖剣をいつだって持っているのだし、新しい剣など要らなそうだけれど。
「剣の手入れだよ。ここの鍛冶屋は腕がいいって、軍の中で話題になってたんだ」
「軍のの鍛冶屋なりなんなりいるのかと思ったわ」
「いるよ」
「ふーん……」
気のない返事をしながらも、ついミーリアはオルディオについて行ってしまう。
鍛冶屋は、街の通りから離れた大きな建物だ。
中に入ると、数人の鍛冶士が、金属を打っている。
天井が高く広い建物の中は、店らしい店もカウンターもない。ただ、鍛治士の作業場が6つ並んでいるだけだ。
「熱い」
炎が燃える窯がある。
金属がそれで熱されているせいで、建物内は大きな空間になっているけれど、空気は汗をかくほどに熱かった。
二人が鍛冶屋に入ると、鋭い視線が飛んでくる。
「勇者様じゃないか」
手前で作業をしていた腕の太い男性が、スキンヘッドをテカらせて二人を睨めつけるように眺めた。
「剣を見て欲しいんだよ」
言うと、オルディオは聖剣を腰から外し、鞘ごと男性に放り投げる。
男性が抜くと、聖剣は透明な光を吸い込んだ生き物のように光を反射した。
「これが噂の聖剣ってやつか。確かにいい剣だが、少し使い手の手荒さが出ちまってるな」
「手入れ、できるか?」
「ああ。けど、数時間いるぞ?」
「いいよ。また明日取りに来る」
勇者編もそろそろ後半といった感じでしょうか。




