⌘勇者編 17⌘ よく晴れた日に
その日、オルディオはキャンプの中にいた。
あんな話を聞いてしまったから、というよりも、勇者という存在はあるからだと、自分に言い聞かせていた。
剣を打ち鳴らす音が聞こえる。
今日は、実戦形式でチームごとに練習をする予定だったはずだ。あとで顔を出さなくては。
頭の中で注意点などをまとめながら、予定をリストアップしていく。
オルディオのテントに声がかかったのは、そんな時だった。
「勇者様」
「どうした?」
「お客様が来ております」
客?
今日は、誰もここを訪ねてくる予定はない。
ミーリアの顔を思い浮かべながら、
「誰だ?」
と尋ねると、
「ミーリアさんです」
なんて返事が返ってきたものだから、オルディオは苦笑した。
「通してくれ」
テントに顔を出したのは、あいかわらず綺麗なドレスに身を包んだミーリアだった。
「そろそろ注文が入るんじゃないかと思って、様子を見にきたのよ」
なんて、笑ってみせる。
オルディオは、
「ああ」
と一つだけ返事を返した。
昨日、ミーリアの話を聞いてしまってから、ミーリアに逃げるように離れられ、それから会うのは初めてだった。
見たところ、あの件を引きずっている様子はなさそうだ。
オルディオは一度ミーリアから目を逸らし、テーブルの上を凝視して一つ咳をすると、またミーリアに視線を戻した。
「じゃあちょっと、リストをまとめるからしばらく外で散歩でもして待っててくれ」
テント入口で、腕を後ろにちょこんと立っているミーリアに声をかけると、こんな返事が返って来た。
「あら、あなたは一緒に来てくれないの?」
「……僕がリストを作らないといけないのに、僕が一緒に散歩に出てしまったら、誰がリストを作るんだ」
呆れつつも、ミーリアの甘えるような瞳を覗く。
この瞳に勝てるやつなんて居るんだろうか。
そんな風に思いながら、オルディオは立ち上がった。
荒野の街オルテガには、天気が三通りある。
強風で数メートル先もよく見えない砂嵐の日か、普通に見通せる砂嵐の日か、もしくは風のないスッキリとした晴れか、だ。
その日は、風のないスッキリとした晴れだった。
ミーリアが、半分、サンダルの足を埋めながら、街と荒野の間を歩くのを眺める。
「今週は、美味しいリンゴ酒が入ったわ」
呟くように、ミーリアが言う。
オルディオは、それを聞いて少しだけ笑った。
「こんなサービスがあるんなら、外に出て来て正解だったな」
「そうでしょう?あなたのお買い物リストも、すごく長くなると思うわ」
「じゃあ、もっとお買い得なものを聞き出すまで、散歩を続けないとな」
ミーリアが、嬉しそうに「ふふっ」と笑う。
その瞳に、勝てるやつなんていないだろう。
だってほら、世界一の勇者ですら、君の瞳が揺れるのが、こんなにも怖いのだから。
ほのぼの回でした〜!




