⌘勇者編 12⌘ 馬に乗って
その日から、ミーリアは勇者軍がどこへ向かったのか聞いて回った。
ドニーの店でいつだって耳をそばだてた。
それから1週間後。
とうとう、ドニーの店にも勇者の情報が出回るようになってきた。
北方の街が魔物に襲われたとき、勇者一行が住民を救助したと噂になっていたのだ。
「それって、この間までここに来てた勇者なの?」
自然を装いつつも、ミーリアは店にやってきた客達の情報を引き出していく。
「そりゃそうだろ。勇者っていったら聖剣もってる有名人だからな」
北。北か。
どうしようって、考えがあるわけじゃない。
けどもし、勇者と会うために、北へ行かないといけないとしたら?
ミーリアは、街中を歩く馬に注目した。
大きな栗毛の馬だ。
どうやら騎士団の馬のようだった。
そうだ。馬はどうだろう?
馬に乗れば、勇者のところへくらい連れて行ってくれるんじゃないだろうか。
勇者を見つけて、一言伝えるくらいのことは、やっても問題ないんじゃないか?
ミーリアはその足で、牧場へと向かった。
柵の中に、沢山の馬がいる。
あれに乗ればいいんじゃ……?
その瞬間。
ガキン!
柵の金属の繋ぎ目が取れるほどの大きな音。
え?
ミーリアが振り返る瞬間、目の前で、大きな馬の腹が目の前を通っていく。
「!!」
それは、柵をジャンプで乗り越えた馬の腹だった。
茶色の大きな腹。揺れる尾。
「何?あれ」
走って行ってしまう。
何?まさか……、興奮しちゃってるの?
「止めないと!」
このままじゃ街へ走って行ってしまう。
「ねえ、ちょっと!!」
誰も居ない。
でも放っておけば、人を蹴り倒してしまうか、冒険者に倒されてしまうか、もしくは砂漠に突っ込んでいってしまうかだ。
どうすれば?
でもきっと。
柵に引っかかっているロープを肩に背負う。
馬が向かった方に走って行く。
きっとロープを輪にして。引っ掛ければ上に乗れる。
どうやってこれを首にかければいいの?
考えている間に、馬は遠くへ走っていってしまう。
その時だった。
また別の場所から、馬の駆ける音がした。
振り向く暇もなく、ミーリアの身体がふわりと浮く。誰かに抱え上げられたのだ。
「何……を……っ」
驚いて声をあげたけれど、けれど、ミーリアにも、これが危険ではないことはわかった。
身体が揺れる。
そんな中でもロープを落とさずに、馬にしがみつく必要があった。
必死で、馬の首にしがみつく。
揺れる。
強い腕に、身体が起こされる。
「あれ、止めたらいいんだろ?」
頭の上で声がして、泣きそうになった。
「行くぞ!」
手綱が弾かれ、馬は走り出した。
ミーリアはそんなに乗馬上手くなさそうですけどね!




