表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄になれなかった騎士と名を忘れた少女〜片腕の勇者と黄昏の歌姫〜  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/61

✠騎士編 9✠ 奴隷からの解放

 ガキン!


 足の鉄輪が二つに割れる。

 割れ目ができる度、ルーナは泣いていた。


 逃げられるはずなのに。

 逃げられて、嬉しいはずなのに。


 ガキン!ガキン!


 そして、両足の鉄輪が外された。


 鉄製、だとは思うが、普通の鉄ではないようだった。

 この名剣でここまで大仕事になるとは。

 こんな鉄輪に奴隷を縛り付ける何かがあるとは思えなかったが、確かにこれではそこらに売っている剣程度では取ることは出来ず、鉄輪が足を縛っている以上、その鉄輪が奴隷の証となり、何処へ行っても奴隷扱いとなってしまうだろう。


 逃げても無駄だと思わせるためには、十分なものだ。


 地面に座り込み、土にまみれたルーナが、顔を上げた。

 森の入口。

 木々に隠された場所に、ルーナは座り込んでいた。


「カイ……さん」


 ルーナが、カイの名を呼ぶ。

 縋るような瞳で。

 苦しそうな声で。


 今にも溺れてしまいそうだった。


 カイが手を伸ばす。

 その腕の中でうずくまり、ルーナは静かに泣いていた。

 小さい子をあやすように、カイがルーナを抱きしめる。


「連れて来てしまった」


 それは、自戒なのか、確認なのか、それとも覚悟の言葉だったか。


「ルーナ」


 呼ぶべき名前を呼んだ。

 それは、腕の中の小さな少女の名前だった。


「私、帰らないといけないんです」


 ルーナが小さく呟く。


「早く帰らないと、怒られてしまうから」


「帰りたい、のか?」


『帰りたい』という言葉は、ルーナの心に重くのしかかった。

『帰りたい』かどうかで言えば、答えなんて一つしかなかった。


「帰りたくない、です」


 ルーナは、言葉を噛み締めるように、その言葉を意味を確かめるように、その言葉をゆっくりと呟いた。


「怖……い」


 ルーナの瞳に、また涙が浮かぶ。


「怖い、怖い、怖い、怖い」


 叫ぶような声で、けれどそれは、とても小さな声だった。


「帰りたくない……!帰りたくないよぉ……」


「ああ。もう、帰らなくていいんだ。俺と一緒に居よう」


 カイのその言葉で、ルーナの顔がぎゅっと歪む。


「わからないです」


「……うん。ゆっくりでいいよ」


 カイは、ルーナを眺めた。


 とはいえ、こんなボロボロの服じゃ、奴隷だと言っているようなものだ。

 服を買わないといけないな。


 鎖を丁寧に地面から拾い上げ、袋の中へ入れた。

 そのままルーナを抱え上げ、森の中へ入っていく。


 ルーナは、カイの腕の中で静かに泣いていた。

 木陰ばかりの森の中を、ゆっくりと歩いていく。


 ルーナが静かに泣けるように。

 ルーナが静かに眠れるように。


 そして目覚めた時、少しでも笑えるように。

なかなか奴隷解放は一筋縄じゃいかないですね〜。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ