先導者の痕跡。
俺は店員に言われるがまま、教会へと歩く。
隙を伺うが、怪我をせずに逃げ出す事はできなさそうだ。
店員は、素手であれば何とかできそうだが、背中に包丁を突きつけられて危険を犯すほど俺も若くはない。
カティは、どうしてるんだろう。
そんな事を考えながら、月に照らされた道を歩く。
教会の中には、カティが神父と共にいた。
「お主、何しとるんじゃ。」
「見ればわかるだろ。」
神父が目配せをし、店員は包丁を下ろす。
背中に包丁を突きつけられるのは、もうごめんだ。
「ヨシュア様の話でしたよね。」
俺は神父に促され、カティの横に座る。
店員は立ったまま、神父をじっと見つめている。
「あのお方は、苦しむ我らに救いを授けてくれました。」
神父は三角形のモチーフをじっと見つめる。
「三賢者様の使いに違いありません。」
神父は笑みを浮かべる。
「私たちは平穏を手に入れたのです。」
と呟くように言った。
その言葉に店員は頷く。
店員はポケットから紫の小瓶を取り出す。
「ヨシュア様は、我々にこれを授けてくれました。我々に足りなかったもの。」
店員は静かに微笑む。
「我々は不要なものを抱え込んでいたのです。」
神父は静かに微笑んだ。
「三賢者様、メルキオール様とバルタザール様、そしてカスパール様の使わされた、我らの先導者です。」
店員は頷き口を開く。
「我々は不要なものを抱え込んでいたのです。」
「ヨシュア様は、今どちらに?」
俺の問いに神父が答える。
「ヨシュア様は北へ、アキダリアの首都へ向かわれました。」
俺はできるだけ信心深く見えるようにと祈りながら、神父に問う。
「我々はどうすれば救われるのでしょうか?」
微笑む神父がランプに照らし出される。
「ヨシュア様に救われたければ、これを。」
神父はポケットから大事そうに取り出した紫の小瓶を俺に手渡した。
「苦しみや悩みがある時に、是非使ってください。」
俺は小さく頷いた。
俺たちは礼を言ってその場を後にする。
まだ視線を感じる。
宿屋の部屋へ戻り、カティはやっと口を開いた。
「ヨシュアは、その考えを広げながらユートピアへと向かうつもりのようじゃ。明日の朝、一番に北へ向かおう。」
俺は頷く。
カティはおもむろに、呪文を唱え出す。
カティの手元が淡く光り出す。
俺は思わず口を開く。
「それも魔法か?」
カティは無言で頷く。
カティの手元に一羽のカラスが現れる。
「ベルの所にこれを運んでくれ。」
先程の紫の小瓶をカラスに渡すカティ。
「ベルなら、調べてくれそうだな。」
俺の言葉に、カティが答える。
「宗教絡みのようじゃしな。この前の貸もある。」
カラスは小さく鳴くと、その小瓶を咥え窓から飛び立っていった。
二つの月が、カラスを照らす様を俺はただ見つめていた。
翌朝、日が出る頃には俺たち部屋を出た。
馬に乗って村の大通りを行く。
村の中央広場には、男たちが集まっていた。
山積みにされているのは本のようだ。
「三賢者様の教えに背く禁書だ。」
「悪魔の書だ。」
「燃やしてしまえ。」
口々に言いながら、火を放つ。
俺たちは、異様な光景に息を呑む。
「急がねばならんようじゃな。」
カティの言葉に俺は小さく頷いた。




