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赤龍亭と天井桟敷の人々〜第一部〜  作者: now here man
第二章 鬼ごっこ編

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導かれた村。

村人たちが寝静まった頃。

二つの月は、村をひっそりと照らしている。

「俺は、酒場の方を調べる。カティは教会を頼む。」

カティは頷く。


監視はされている、気を抜くつもりはない。

「二手に分かれたほうが効率がいいだろ?」

カティは肩をすくめる。

「笑えない冗談だな。」


俺たちは二手に分かれる。

カティは、黒いマントを羽織りヒラリと屋根の上へ。

俺は忍足で建物の影に隠れながら、周囲の様子を伺う。 

まだ監視されている事を肌で感じる。

いつ襲われてもいいように周囲へ警戒しながら、夜の闇に紛れて進む。


幸い、近くに人の気配はない。

酒場の裏口へと俺は身を隠しながら進む。


酒場の裏口には、積み上げられた箱やまとめられた生ごみ。

触れないように気をつけて裏口を目指す。


裏口の扉が軋みながら開く。

俺は身を隠し、周囲への警戒を続ける。

周囲の動きはない。


闇の中、目を凝らしそれを探す。

カティなら魔力の痕跡を追えるが、俺には無理だ。


シマの教えを思い出す。

「気で感覚を強化する。」

修行の成果を試すときかな。

俺は口元を歪める。


呼吸を整え、体の力を抜く事を意識する。

全身の皮膚の感覚を開く事を意識する。

あの紫の小瓶から感じた違和感を探してみる。


湿った空気。

テーブルの古びた木材の感触。

シチューの残り香。

感じるものを一つ一つ確認していく。


…あった。

目を開けた俺は、棚の奥にしまわれた紫の小瓶に手を伸ばした。


その瞬間、ランプの光に照らされ俺は目を細める。

「誰だ。」

俺の視線の先には、昼間の店員がいた。

ランプの反対の手には包丁。

ランプの光を受けてきらりと光る。


俺は黙って両手を上げた。

「あんたか、何してる。」

その問いを俺ははぐらかす。


「覚えていたのか?」

「この村で旅人は目立つ。何より良き隣人が教えてくれる。」

店員は無表情のまま答えた。

俺は店員の指示に従い、素直に立ち上がった。


その頃カティは、はやる気持ちを抑えようとしていた。

ヨシュアの痕跡に近づいている。


物音を立てずに屋根から屋根へと移動する。

「不祥の弟子よ、何を考えておる。」

カティは唇を噛み締める。


教会は、真っ暗だった。

神父も寝ているのだろう。

カティは魔力感知を行い、安全を確認する。

変な魔力の流れは感じない。

人の気配もない。


夜の闇に紛れて、教会へとするりと忍び込む。


闇の中、三角のシンボルが月の灯りに照らされている。

静寂が辺りを包む。

息遣いさえ、憚られるほどだ。


カティはギョッとする。

祭壇の前の椅子には昼間の神父が座っていた。

「迷える子羊よ、何をお探しかな?」

神父は、無表情に問いかけた。


「弟子を探しておる。それだけじゃ。」

「どのような方でしょうか?」

「10代半ばの少年だ。伸びかけた黒髪の。」

神父は頷く。

「私たちを導いてくださった方ですね。」


カティは怪訝な顔をする。

「ヨシュア様のおかげで、今は心安らかに生活できるようになりました。」

無表情な神父の顔を月の明かりが照らしていた。

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