三賢者。
カティの言葉に、俺はスプーンを置く。
「どうしたんだ。俺は腹ペコなんだよ。」
「微かな魔力を感じる。」
俺は怪訝な顔をしたのだろう、カティは続ける。
「ドレの家と赤龍亭で感じた魔力だ。」
俺は思わず呟く。
「あの紫の小瓶のか?」
カティは頷く。
俺はテーブルへ小銭を放り投げる。
俺はこの村は寄ったことを後悔し始めていた。
店を後にした俺たちに、背後から声をかけるものがいた。
振り返ると、修道服を着た若い男。
夜の闇の中、街の灯りで満面の笑顔が照らされる。
「旅の方、我らが教会へ寄って行かれませんか。」
俺は神を信じない。
口を開きかけた俺をカティが制する。
「是非とも、旅の安全を祈らせてもらいたいものじゃ。」
にこやかな表情のカティを俺は、ただ見つめる。
若く中肉中背の男だ。
質素な服は、小綺麗で手入れが行き届いている。
皆こなしから見て、荒事とは無縁のようだ。
危なくなっても、力では負けないな。
そんな事を考えていると、村外れの建物に辿り着いた。
教会も質素だった。
シンボルであろう、三角形のモチーフが所々に掲げられている。
「我らが、信奉するのは、三賢者様。世界の調和を守ってくださっています。」
微笑みながら、神父は続ける。
「あなた方の信奉する神は存じ上げませんが、三賢者様は全ての人々を受け入れられます。」
俺は神妙な表情をして見せる。
こっそりカティを覗き見る。
カティは一体何を考えてるんだ?
「三賢者様の教えに従えば、争いもなく苦しむこともなく、平和な生活が送れます。」
神父は、暗記したものを読み上げるように話し続ける。
「全ての人々は平等です。」
神父に案内されて祭壇の前へ。
一際大きな三角形のシンボルが祀られている。
その前で俺たちは神父に従い、跪く。
「三賢者様、旅の方たちにご加護を。」
手を合わせる神父の腰の紫の紐が、やたらと目についた。
教会を後にした俺たちは、いったん、宿へと戻る。
「どういうことなんだ?」
俺はカティに尋ねる。
「もしかしたらじゃが。」
カティの顔が一瞬曇る。
「もう、始まっておるのかもしれん。」
夜の風が、カーテンを揺らしていた。
「感覚を研ぎ澄ませてみろ。何か感じんか。」
俺は、シマに教えてもらった事を思い出す。
呼吸を整え、意識を集中する。
「視線を感じる。」
俺は目を開ける。
「監視されている。」
月に照らされ、カティはニヤリと笑った。




