何かがおかしい。
「ヨシュア、どこにいるんだ。」
俺の呟きは風にかき消される。
馬上の旅も早3日目。
アキダリア教皇国への道は遠い。
地図と魔法の羅針盤を頼りに俺たちの旅は続く。
延々と続く草原の景色にも飽きてきた頃だ。
「カティ、そろそろ日が暮れる。次の村で宿に泊まろう。」
カティは頷く。
ここ数日、カティはあまり喋らない。
何かを考え込んでいるようだ。
寂れた街道沿いの村。
何の変哲もない静かな村だ。
通りに人の姿は見えない。
閑散とした村を俺たちはゆっくりと進む。
一軒の宿屋を見つけ、馬小屋へ馬をつなぐ。
桶の水を馬に飲ませ、今日の旅路を労る。
一通り馬の世話を終わらせて、俺たちは宿屋の中へ入る。
「二人だ。部屋はあるか?」
俺の問いに、店主は微笑む。
「二人旅かい?」
店主の問い俺は頷く。
「デカいクロスボウだな。狩人かい?」
俺は頷く。
「昔は、デカい武器を持ってたら冒険者だったんだがな。」
店主は欠伸をしながら続ける。
「最近は、旅人も減ったな。魔王がいなくなってからだ。」
その言葉に、カティは顔をあげる。
「部屋は一つでいいかい。」
俺は頷く。
「何事も無駄は減らしたほうがいい。」
店主の言葉が妙に引っかかった。
部屋は質素だった。
小さなベッドが2つ。
使い古したテーブルと椅子。
俺たちは手早く荷を解く。
「旅の楽しみは飯じゃ。食べにいくぞ。」
カティは、いつも通りを装っている。
俺は、気づかないふりをする。
村の通りは静かだ。
人通りもない。
まだ夕暮れ時だというのに。
「この村、人が少ないな。」
カティは俺の問いに答えず、酒場のドアを開けた。
店内は静寂に包まれている。
質素な店内。
カウンターで奥の厨房からは、料理をする音が聞こえる。
意外なほど客が多く、ほぼ満席。
俺たちを見ているのであろう視線を感じながら、空いている席へ座る。
見かけないものを警戒するのは当たり前だ。
気にするな。
俺は、自分に言い聞かせる
テーブルにメニューはなく、店員に向かって俺は手を上げる。
店員は無表情なまま、俺たちのテーブルへとやってくる。
「メニューはあるか?」
俺の問いには意外な答えが返ってくる。
「この店にはメニューはない。皆同じものを食べるんだ。」
俺とカティは目を見合わせる。
去っていく店員を見送りながら、店内が静かな雰囲気な包まれていることに気がつく。
食器とスプーンが触れる音。
ただそれだけだ。
喋るものは一人もいない。
「どういうことだ。」
俺の問いにカティはゆっくり首を振る。
俺たちの人々テーブルに2つのトレイが運ばれてきた。
「これだけ食べてれば、必要な栄養は全て取れる。」
店員は、その言葉にだけを残して、奥へと消えていった。
トレイには、パンが一切れ。ペースト状の何かがのっている。
「何だこれ?」
周りを見渡すと、皆そのトレイから黙々と食べている。
これが郷土料理なのか?
俺はため息をつき、スプーンに手を伸ばす。
俺の手をカティが止める。
「食べるな。」




