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赤龍亭と天井桟敷の人々〜第一部〜  作者: now here man
第二章 鬼ごっこ編

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託されたもの。

静かな朝。

日が出る頃には、止まり木亭を後にした。

向かう先は、シマの家。


通いなれた道を歩きながら、昨日の事を思い出す。

…カティが爆炎の魔法使いだったとは。

伝説の英雄じゃないか。


シマもその時の討伐メンバーってことは、レジェンドクラスの使い手という事だ。


そのシマが、今回の件にはついてこれないという。

…ヨシュア、お前は今どこで何をしているんだ?


俺は道端の小石を蹴飛ばす。

小石は雑草が生い茂る、茂みの中は吸い込まれていった。


森の中は静寂に包まれている。

コカトリスの時とは違い、生命の鼓動を宿した静けさ。


シマは川の横の石の上で、あぐらをかいて座っている。

川の方を向いているが、目を閉じて集中しているようだ。


俺が近づいても、その姿勢を崩さない。


ただ、川のせせらぎだけが二人を包む。


「ジョニー、待っていたよ。」

シマは振り返らずに言う。

「…今から、お前に渡すものがある。」

シマはゆっくりと振り返る。


「気の奥義だ。」

俺は、息を飲み込む。


シマの目はいつもより深い青。

俺の心の中を覗き込んでいるかのようだ。


「この力は、一子相伝。」

シマの落ちついた口調が、俺の心に直接語りかけているような感覚。

「お主に全て渡す。私の命と引き換えに。」


俺は面食らう。

命と引き換えだって?

「…そんなもの受け取れない。」

シマはゆっくりと頷く。

「わしも師から受け取った時は、そう思った。」


俺は唾を飲み込む。

喉がカラカラだ。

俺はいつのまにか、緊張しているようだ。


「今のままのお主では、ヨシュアを止めることは出来ん。…分かっているだろ。」

シマは俺の前に立ち、胸の前で両手を合わせる。

深呼吸と共に、徐々にシマの手が黄色く光出す。


シマは、ほのかに光る手を俺の両手と重ねる。

俺の手に軽く衝撃が走る。

硬直する体。


…俺の意識の中に、シマの意識が入ってくる。

前回の魔王討伐の際の光景なのか、黒く染まった背景の中に、光に照らされた若い男のビジョン。

微かに、カティの姿も見える。


俺は呼吸が荒くなるのを感じている。

自分の体ではないような感覚。


シマの、フラッシュバックする感覚を俺も経験しているようだ。その瞬間を体感しているかのような感覚に陥る。


ふと、我に帰る。

シマはぐったりとし、俺に寄りかかる。

力なく、寄りかかるだけの老いた体。


「わしの力を全てお主に託す。あの時のカティやわしと同じ過ちを繰り返すな。」

言いながらその瞼は力なく閉じられ、2度と開くことはなかった。

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