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赤龍亭と天井桟敷の人々〜第一部〜  作者: now here man
第二章 鬼ごっこ編

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余韻。

紫の小瓶をギルドに鑑定に出す。

この小瓶が原因であることが特定できれば、赤龍亭は営業停止を免れるだろう。


マスターはランプを見つめながら呟く。

「…ありがとう。」

マスターには、全て伝えた。


赤龍亭には俺とカティとシマの三人で来た。

「少し、過去の話でもするか。」

カティが葡萄酒の瓶を指先で撫でる。


「わしとシマ、マスターとローラの四人で以前パーティーを組んでいた。」

シマが頷く。

「当時のカティは、爆炎の魔法使いと呼ばれていたね。」

「俺がリタイアした後も、カティとシマは冒険を続けて、最後には魔王を倒した。」

マスターが、それぞれのグラスに葡萄酒を注ぐ。


「カティが異様に顔が広いのは、その時の冒険のおかげなのか?」

俺の問いにシマが頷く。

「世界中を旅したからな。ベルの親父に世話になったのもその時だ。」

カティは懐かしむように、グラスの葡萄酒を見つめる。


「…あの時、ヨシュアが爆炎の魔法使いを探していることを知って、心底驚いたんじゃ。」

葡萄酒を一口飲み、カティは続ける。

「あの時、何かが始まっていたんじゃな。」


カティは懐かしむように、後悔するように呟く。

「倒した際の魔王の言葉が、いまだに引っかかっておる。」

「次の魔王が現れるまで、貴様が選んだ世界を楽しむが良い、だったな。」

シマが、ランプの揺れる灯りに照らされる。


マスターは無言で干し葡萄をひとつまみ口に放り込む。

俺は、カティの横顔をじっと見つめる。

疲れた顔だ。


「魔王と似ているんじゃ、ヨシュアは。」

カティはグラスの縁を指でなぞる。

「今回は、結末を変えることができるのではないかと思った。…いや、期待した。」


…後悔か。

カティの後悔が、言葉だけではなく伝わってきた。


「まだ、間に合うかもしれないだろ。」

俺はカティの肩に、そっと触れる。

「俺達で止めればいい。」


俺は残りの葡萄酒を飲み干す。

「ヨシュアをぶん殴って、正気に戻らせてやる。」


「私はついていけないよ。歳をとりすぎてしまった。」

シマが、急に小さく見えた。


「ジョニーに託すものがある。」

シマの手が俺の手に触れる。

深い皺が刻まれた暖かい手。


「お前に覚悟があるのなら、気のレベルをもう一段階引き上げることは可能だ。」

…俺は頷く。

「明日、私の家に来なさい。」

シマは赤龍亭を後にした。


彼のグラスは手付かずのまま残されていた。

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