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白銀の王。  作者: 春乃來壱
29/31

29.碧の要求。




「ありがと、輝璃」


「…ん、どういたしまして」



冷静さを取り戻した碧がお礼を言うと、輝璃は頷きながらそっと手を離した。


それを名残惜しく感じていると輝璃がくすくすと笑いながら頭を撫でてくる。

…もしかしてまた顔に出てたのか、と少し恥ずかしくなって顔を逸らすとちょうど此方を見ていた少年と目が合った。


どうやら碧が落ち着くまでの間に、少年の方もフィーがなんとか宥めていてくれていたらしい。

まだ落ち着かなさそうにソワソワしているがあの怯えたような様子はもう見せていなかった。


碧達に忠告してきた男性は碧の様子がおかしくなったとわかると逃げるように去っていったらしい。

去り際に碧と少年の事をチラチラ気にしながら帰って行ったそうなので、やっぱり根はそんなに悪い人ではないんだと思う。

でも小さい子にあんな態度をとるのはどうしてもいただけない。



「…あの、すみませんでした。僕のせいでお兄さん方まで巻き込んでしまって。お兄さんの気分も悪くさせてしまったのに…その、僕今何も持ってなくて、お詫びも何も出来なくて…本当に、すみません…」


居なくなった男性の事をぼんやりと考えていると、少年が申し訳なさそうに頭を下げてくる。

咄嗟にそんなことは無いと否定しようと口を開こうとして、思いつく。


「……それは困るなぁ、責任はちゃんと取ってもらわないと」



「…碧?なにを………あぁ、なるほど」


責任を取れと言いながら少年に近づいていく碧に、輝璃は一瞬怪訝そうな顔を浮かべたが、付き合いの長さ故か碧の表情を見てすぐにこちらの考えに気づいたようで納得したように頷いた。


フィーはわからず困惑していたが輝璃がこっそり耳打ちしたのを聞いてわかってくれたようだ。


「ほ、ほんとうに、ごめんなさ…」


ふわふわの耳をペタンと萎れさせながら再び謝ろうとする少年の前にしゃがみこみ、怯えさせないように優しく微笑みかけながらその頭をゆっくりと撫でる。


急な行動に少年はキョトンとしたまま固まる。

ーーただ、優しく撫でられてることを喜ぶかのように尻尾がゆらゆらと揺れているのを見てしまった碧は、楽しそうに笑いながら少年に“お詫び”を要求した。


「お詫びにさ、君達のジュースを売ってるお店まで俺らを案内してくれないかな?」


「…えっ?」


「俺、今喉が乾いててすごーく困ってるんだ。だから君のところのお店まで連れてってくれたら、今回の事はお互いにもう気にしない。君はジュースが売れて嬉しいし、俺らは喉が潤って嬉しい。ね、いい考えだと思わない?」


「……はい、僕もそう思います」


迷ったような少しの沈黙の後、少年はありがとうございます、と言いながら花が咲いたように笑った。



「うん!じゃあ早速だけど君のお店まで道案内お願いするね」



「…アオです」


「ん?」


「名前、言ってなかったので。僕、アオっていいます」


「あ、そういえばそうだったね。俺の名前は碧で、あっちがフィーで、そっちの黒髪の方が輝璃。…怖そうに見えるけど本当は優しいから安心してね」


「…え、俺って怖そうに見えるの?」


「んー。身長も高いっすからちっちゃい子から見たらそう映ることもあるんじゃないっすかねぇ」


「…………ショック」



アオが少しでも話しやすいように冗談を交えて話したつもりが、何故か輝璃を凹ませてしまう結果となった。

あまり他人に興味を持たない輝璃だが、流石に小さい子に怖がられるのは悲しいらしい。珍しく目に見えて落ち込んでいる。


段々とわかってきたがフィーは意外とイタズラ好きだ。

今のも碧が冗談で言ってることがわかっているのにわざと否定しなかったみたいだし。


まぁでもそのおかげでアオが笑顔になってくれたのでいいとしよう。

輝璃には後でなにか好物を作るから許して、と心の中でそっと謝っておく。


「アオとミドリって両方色の名前だし、なんかお揃いみたいだねぇ」


「おそろい…」


碧の言ったお揃いという言葉を噛みしめる様に、ポツリと呟いたアオは恥ずかしいのか顔を横に背けて少し赤くなった頬を隠そうとはしてるもののちらりと見える横顔は嬉しそうに緩んでいるし、尻尾もそわそわと忙しなく揺れている。


そういえばむいも、嬉しい時とかに尻尾や獣耳がよく動いていたし、もしかしなくても獣人の子は感情を隠すのが自分よりも下手なのではないかと思うとさらに可愛く見えてきた。

やっぱり子供は素直が一番だな、と呑気に考えながらアオとの会話を続けた。


「そういえば、お店って誰かのお手伝いなの?」


「はい!シスターの手伝いをみんなでしてるんです。…みんなって言っても小さい子が多いので来てるのは僕をいれて数人だけで、留守番組のみんなは掃除とか、怪我しないように出来ることをやってもらってます」


「シスターって事は出店してるのは教会なんすか?聖教会って規則が厳しいって聞いてたんすけど案外そうでも無いんっすかね?」


「あ、それ僕知ってる!教会って言ってもみんなで集めたお金で建てたから聖教会とは関係ないんだってシスターは言ってました!」


知っている知識を披露できて嬉しかったようで、アオは隣を歩いていた碧と輝璃の手を取って上機嫌で進んでいく。

それを見たフィーが“仲間はずれにしないでほしいっす…”と言いながら、アオが繋いだ方とは反対側の輝璃の手をそっととる。

若干拗ねたような態度のフィーに輝璃は狼狽え、助けを乞う様に碧とアオに視線を投げた。


ーー先も言った様に、フィーは悪戯好きである。対して輝璃は一度心を許した相手には警戒心というものがまるで無くなる。

輝璃は背を向けているので気付いていないが碧とアオには小さな悪戯が成功して満足気な笑顔のフィーがバッチリ見えていて、2人は堪え切れなくなりくすくすと笑いだす。

それを見た輝璃が更に狼狽えることになる事はいうまでも無い。


ーー側から見ればおかしな光景に見えるであろうそれは、怖がりな少年の心を優しく溶かした。




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