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白銀の王。  作者: 春乃來壱
26/31

26.お説教は帰ったあとで。




「おぉ…これはまた雰囲気のあるお店だね」


「…そうだね、いかにもって感じ」


「なんでもここのお店のものはドワーフが作ってる物を仕入れてるから品質も性能も良いらしいっすよ」


「ドワーフかぁ…会ってみたいな」


宿屋を出てから数十分歩くとマリー達に教えてもらった店にたどり着いた。


明るく賑やかな大通りの一角に、ひっそりと建つその建物は薄暗く物々しい雰囲気が漂っていた。

何も知らずに1人だけで来たらまず警戒して入ることを躊躇しそうなものだが、マリーやマークのお墨付きなので大丈夫だろうとドアを開け中に入る。


存外お店の中は明るくて、外の物々しい雰囲気がない。

店はそんなに広くはなく、テーブルや棚の上、壁に至るまで所狭しと物が並んでいる。


「いらっしゃい。おや、人族かい?珍しいお客人さね」


碧達が入ってきた扉とは反対側の店の奥の扉から人が出てきた。


小さな体とは対照的に老人のような口調の少女は小学生くらいの身長で、伸びた朱色の髪をみつあみをして結いているが髪が長すぎて床につきそうになっている。

透き通るようなエメラルドグリーンの瞳が印象的な少女だ。


「お客人、何をお探しだい?」


いつの間にか目の前まで移動していた少女がゆったりと笑う。

フィーと輝璃は周りを興味深そうに見ていて、少女が自分に話しかけてることに気づいた碧は慌てて返事をする。


「あ、えっと暑さを軽減してくれる魔道具とかって置いてあるかな?」


「暑さを軽減ねぇ…ちょっと待ってな、確かこっちに…」


そう言いながら少女はトテトテと効果音がつきそうな足取りで棚に近づいていき中をゴソゴソと探し始める。


「あったあった。これさね」


戻ってきた少女の手にあったのは空色の石のついたピアスだった。


「これが魔法具なの?」


「そうさね。本来なら腕輪とかローブだとかもっと大きなものに付与魔法をかけて作るものなんだけどね。ドワーフの技術と知恵で小さなものにまで付与魔法をかけられるようになったのさ。その耳飾りはまだ試作品だが効果は保証するよ」


「へぇ…これならずっと付けてても邪魔にならなそう」


「それにこれは特別製でね、普通の物なら暑さを凌ぐだけなのだけどこの耳飾りは暑さと寒さの両方に対応するのさ」


「両方を…便利なんだね」


「そりゃそうさね。この魔法具はリン・ラークウィルが作ったのだから」


「リン・ラークウィル?」


「おや、知らないかい?」


「うん。俺、最近田舎からでてきたばかりだからあまり外のことには詳しくないんだ。有名な人なの?」


「カッカッカッ!そうかそうか!いいや、魔法具作る事しか頭にない変人のドワーフの名前さね。忘れてくれていい」


少女がおかしくてたまらないといった様子で豪快に笑う。ひとしきり笑ったあと“これは坊やにあげる”と耳飾りを碧の手にポンとのせた。


「え?でもこれ売り物じゃないの?」


「笑わせてくれたお礼さね。付けるだけで発動するものだけど、熱気と冷気を緩和してくれるもので自分の中の熱、つまりは体温には影響しないようになっているから、もしも熱を出したとしても耳飾りはなんの作用も起こさない。体調管理には気をつけるんだよ」


「じゃあ、お言葉に甘えて。俺の名前は碧って言うんだけど君の名前、教えて貰ってもいいかな」


「ノア。そう呼んでくれ、親しいものは皆そう呼ぶ」


「わかった。ありがとうノア、大切に使うね」


「いいってことさね。他には欲しいものは無いのかい?」


「んー…1番欲しかったものは手に入ったし、あとはどんなものがあるか色々見てみたいかな」


「そうか、じゃあ何かあったら遠慮なく声をかけておくれ」


「…碧」


ノアがトテトテと歩いていくのを見ていたら輝璃に呼ばれたので近づいていくと輝璃は両手に持ってるものを碧に見せてくる。

その手には白を基調としたシンプルなネックレスとブレスレットが握られている。


「…どっちがいいかな」


「雪なら輝璃が選んだものならなんでも喜びそうだしどっちも似合いそうだけど…」


「迷っちゃうんなら効果で選ぶって手もありじゃないっすか?」


「…それ、いいね」


近くにいたフィーの助言をうけ、碧は魔法具の効果を見るためにさっそく“鑑定”を使った。


ブレスレットは所持者を危険から守る結界魔法。ネックレスは身体強化の魔法が付与されていた。

輝璃に鑑定の内容をそのまま伝えると、所持者を守るブレスレットの方に決めたようだった。


「…2人共ありがとう。2人はもうなにかいいの見つけたの?」


「僕はまだ特にはないっすかね」


「俺は暑さ軽減の魔法具をもう譲ってもらったよ。付与魔法っていっぱいあって面白いね」


「なんだい、ミドリの坊やは付与魔法に興味があるのかい?だったらこの杖なんかどうだい?」


また音もなくいつの間にかノアが近くまで来ていて杖を手にこちらを見ていた。


杖は木でできたものでその長さは碧の手より少し大きいくらい。持った感じは軽くて手触りが良く、渡されて受け取ったはいいものの何に使うものかわからない。どうしたらいいものかと杖とノアに視線を行ったり来たりさせると、視線に気付いたノアがニッコリと笑う。


「その杖は付与魔法に必要な道具さね。その杖に魔力を流して付与したい物に文字を書き込むのさ。見たところミドリの坊やは魔法適性高いと見た。コツさえ掴めばできるようになるさね」


「えっ、本当?」


「普通のやつなら無理さね。魔力が上手く定着せずに無効化されるのさ。でも坊やかなり()()()だろう?」


碧をじっと見つめたまま更に笑みを深めたノアの視線を遮るように輝璃とフィーが碧の前に立つ。その顔には警戒心がありありと浮かんでいる。


「あぁ、違うんだ誤解しないでおくれ。坊やと敵対したいわけじゃないんだ。ただ坊やの魔力に興味があるんだ」


「俺の魔力に?」


「私の目は少し特殊でね、魔力の色が見えるんだ。普通は自分の魔法の属性の色に染まるのだけれど、坊やの色は私も初めて見る珍しい色なんだ。何にも当てはまらない綺麗な色…だからきっと付与魔法の抵抗もうけないと思ったんだ。だからそんなに警戒しないでくれないか」


眉間に皺を寄せたままの輝璃達を見て、ノアが困ったように謝罪する。どうやら本当に悪意はないらしい。

前のこと(刺されたこと)があるので輝璃達はまだ疑ってかかったままだ。

輝璃とフィーの服の袖をひっぱり笑う事で“大丈夫”と伝える。


「…碧」


「輝璃、大丈夫だよ。ノアはいい子だと思うな」


フィーは心配そうな顔をしながら横に1歩ずれたが、輝璃は咎めるような目で見てくる。それでも、大丈夫だと訴えかけると深い溜息をついてから1歩横にずれた。


「…碧、帰ったら雪に言いつけてやるから」


「えっ?!そ、それは勘弁して欲しいな…」


フイっとそっぽを向いた輝璃を見て“あぁ、これはお説教確定だなぁ”と思いつつノアに視線を向け直した。





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