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冒険家の子孫の成り上がり  作者: マッハ! ニュージェネレーション
ステージ2(バーレン皇国編):水の皇国
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55.芝居の結末

 仲間の身体を武器代わりにされた上に、その武器となった仲間の身体で攻撃を受けた眼鏡の男は、幾ら何でも人間の身体が自分にぶつかった事でかなりの衝撃を受けてしまった。

「ぐほっ!?」

 オレンジ色の髪の男の頭が自分の脇腹にヒットし、肋骨にかなりの衝撃が伝わる。

 それもその筈で、頭がぶつかった時に何やら「ミシッ」とか「ボキッ」と嫌な音がしたのだから。

「ぐああっ!」

 肋骨が折れてしまった感触と共に、左手からタルワールを取り落としてしまう眼鏡の男。

 それはリュディガーに取っては大きなチャンスと言えるので、頭を抑えて悶え苦しむオレンジ色の髪の男を地面に放り投げてその顔面を踏み潰し、右手のタルワールのみの攻撃手段となった眼鏡の男に立ち向かう。

 勿論その前に地面を転がって、先程ジャイアントスイングの為に地面に一旦置いておいたソードレイピアの鞘を手に取り、素早く起き上がってからの話だ。


 右手のタルワールのみとなった眼鏡の男も、左脇腹の激痛に耐えながらも右手はまだまだ動くので、自分の最大限の剣術で立ち向かう。

 しかし、普段の双剣術を駆使した自分の戦い方からしてみれば、タルワール1本で戦う経験なんてかなり久し振りなのだ。

(油断した……)

 こっちが2人に対してあっちは1人と言う人数差、それから相手が丸腰だと言うその状況に心の何処かで油断があったらしいと反省しつつ、ソードレイピアの鞘を武器にして向かって来るリュディガーの攻撃をタルワールで受け止める。

「ふん!」

「くっ!」

 本来であればここからもう1本のタルワールで相手の身体を貫くか、少し後ろに下がって横薙ぎに一刀両断するかの話なのだが、脇腹の痛みが自分の動きを鈍らせているので今は不可能だ。


 それを見たリュディガーは、彼のタルワールを持っているその右腕を空いている左手で掴み、力任せに斜め後ろに向かって引っ張る。

 すると攻撃を受けたばかりで不安定になっていた眼鏡の男の姿勢が、今度は前のめりになる形になった。

 つまり自分の攻撃を、身体を後ろに少しずらした状態でブロックしていた眼鏡の男に対して、自分の方に思いっ切り引っ張ってやる事で反動をつけて、前のめりに体勢を崩したのである。

「うお……!?」

 そのまま前のめりに地面に倒れ込む男に対して、リュディガーは途中で膝蹴りを叩き込んでやる事も忘れ無い。

 膝蹴りはみぞおちにクリーンヒットし、その衝撃で息が1瞬止まる眼鏡の男。

「ぐえっ」


 奇妙な声と共にうつ伏せ状態で地面に倒れた眼鏡の男のそばで、 顔面を蹴られたその痛みから回復した魔術師の男が立ち上がって来ようとしていた。

 それに気がついたリュディガーは彼の背中を思いっ切り青いブーツの靴底で踏み潰し、もう1度地面に這いつくばらせる。

 それから眼鏡の男に対しても後頭部から思いっ切り地面に踏みつけて、顔面とキスさせる形を取らせた後、鞘をもう1度地面に置いて彼と地面の間に両手を差し込んで思いっ切り持ち上げ、背中から地面に転がり込んだ。


 するとその持ち上げられた眼鏡の男は、リュディガーが背中から倒れ込む勢いで投げ落とされる形になり、落とされた先には同じ様に地面に倒れ込んでいる魔術師の男の背中があった。

「うおおおおっ!」

 雄叫びと共にリュディガーは眼鏡の男を魔術師の男にぶつける形で、大きなダメージを与える事に成功した。

「ぐはっ!?」

「ごえっ!?」

 精神的にもそうだが、物理的にも人間と人間がぶつかる事は大きな衝撃になるので、流石の2人でも簡単に起き上がって来られそうに無い。


 そんな2人を見下ろしてもう1度ソードレイピアの鞘を拾い上げたリュディガーは、自分と同じ様に戦っているドラゴンの方に目をやった。

 するとどうやらそちらの方では既に決着がついた様である。

 何故ならそのドラゴンの周囲には、コートの集団の多数のメンバーが地面に這いつくばっていたからである。

 これは今の内しかチャンスが無いと思い、リュディガーはドラゴンに対してダッシュで近寄った。

「おい、脱出するぞ!!」

 人間の言葉で話し掛けてしまったが、この状況下で自分達の会話をこのコートの集団がまともに聞き取れるとは思え無いので、声に出した後で気付いたリュディガーも特に気にしてはいなかった。


 しかし、別の事で気にしなければならない事ができた様だ。

『……うん』

「どうした? 元気が無いな」

『良いから早く乗ってよ』

 バトルを始める前とは明らかにテンションの違うそのドラゴンの様子に、リュディガーも首を傾げるものの今はそんな事を気にしている場合では無いので、ドラゴンと共にここから脱出する。

 今度は足でぶら下げられる形では無く、きちんと背中に乗せて貰って森の中の広場から飛び立ったドラゴンは、このコートの集団がすぐに追い掛けて来られない様にあの地底湖の中でリュディガーとジェクトに向かって展開したあの濃い霧を、ここでも同じ様に展開させて視界を悪くしておく。

 彼曰く、これは「ディープミスト」と言う魔術らしい。

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