53.邪魔者
『ん?』
最初にその邪魔する存在に気がついたのは、人間よりも遙かに色々な感覚が敏感なドラゴンだった。
「どうした?」
『まずいね、この森の中に入り込んで来た人間が居るよ。それも1人じゃなくてかなりの人数だ』
「かなりの人数だって?」
かなりの数の人間達と聞いて真っ先にリュディガーの脳裏に思い浮かんだのが、旅の中で何度も遭遇して来たコートの集団だ。
まさかそのコートの集団があろう事かこの森の中に現れて、しかもこっちに向かって来ているのだろうかと考えたリュディガーは少しパニック状態になる。
自分でも何故取り乱しているのか分からないが、それでも今の状況を確認して分析してみると、確かにパニックになってしまうのも分かる気がするリュディガー。
あの地底湖に唯一の武器であるソードレイピアを落っことし、ドラゴンと1対1の状況を作り出され、見知らぬ森の中で色々と衝撃的な話を聞かされた挙句、自分と因縁があるのかも知れないそのコートの集団らしき人間達の足音をキャッチしたとドラゴンから伝えられた。
地底湖からここまでの内容がそんな慌ただしいものならば、この状況でパニックにならない方がどうかしている。
「くっ……とりあえず俺をこの森の中から出してくれないか。と言うかあの地底湖まで戻ってくれ!!」
リュディガーはそうドラゴンに頼むものの、行動を始めるのがどうやら遅かったらしい。
『もう遅いよ……』
ドラゴンが小さくそう呟くと同時に、この森の中の広場にバラバラと人影が現れた。
それは悪い意味での予想通りで、リュディガーと因縁のある水色のコートの集団がまず姿を見せる。
そしてバルドとフェリシテが言っていた存在であろう、ピンクのコートを着込んだ集団も一緒に現れた。
その2つの集団を率いているのは勿論……。
「おやおや、まさかこんな場所で貴方にまた出会えるとは思ってもいませんでしたね」
リュディガーに対して、前に街中でかなりの威力の魔術を使ったオレンジ色の髪の男がそう言うと、ピンクのコートの集団を率いている眼鏡の男が反応した。
「おい、この男があんたの言っていた奴の仲間で間違い無いのか?」
「そうですよ。私の相手をして頂きましたので良く覚えています。しかし今の貴方はどうやら丸腰の様ですね?」
「ちっ……」
自分の腰にぶら下がっているのがソードレイピアの「鞘だけ」と言う状況をオレンジ色の髪の男に瞬時に見抜かれ、リュディガーは小さく舌打ちをした。
しかもこのリーダーの2人と一緒に現れた部下の人数は、自分が対峙した水色のコートの方だけでもあの街中の時より明らかに多い。
それはピンクのコートの集団も同じで、バルドとフェリシテが報告してくれた数よりも更に多いのが一目で分かる。
ともすれば騎士団の小隊どころか、中隊レベルの人数に囲まれてしまったらしい。
騎士団の中隊の人数が60人から250人だと聞いた事があるリュディガーは、この集団のトータルの大体の人数を把握して絶望的な状況になったと心の中で嘆く。
(1番少ないパターンでも120人、逆に1番多いパターンだと500人か……こんなの勝てる訳が無いだろう!!)
真っ向勝負でバトルしたらあっと言う間に囲まれ、10秒持たずにやられてしまう光景しか目に浮かばないリュディガーに対し、青いドラゴンは怒りの表情を浮かべて吠える。
「ガアアアアアッ!!」
その声にリーダーの2人も反応するが、事態は思わぬ方向に向かい始める。
「なかなか威勢の良いドラゴンだ。その武器の無い状態で逃げ切れなかったか?」
「となれば私達は邪魔になってしまった様ですね。貴方がそのドラゴンに殺されるのをジックリと見物させて頂きましょうか」
リュディガーとドラゴンが向かい合っているのを見た2人のリーダーは、その状況からリュディガーがドラゴンに襲われて逃げ切れなかった所に自分達が出くわしたらしい、と何やら勝手に解釈したらしい。
本当は全く別の理由なのだが、勘違いしてくれたのならそれはそれで大チャンスだろう。




