51.探し求めるもの
もしこのドラゴンの言っている事が事実だとしたら、ルヴィバーの降り立ったゼッザオと言う場所についても何か知っているかも知れ無いと考えたリュディガーは、この話が終わったらその場所について聞いてみようと決意する。
『でもなー、そのドラゴンは色々とやらかしちゃったんだよね。この世界でさ』
「やらかした?」
『うん。人間の世界に出て調子乗っちゃってさ-。それで色々暴れ回ったんだよね。僕達竜族の中でもかなり有名な話だよ』
しかし、話が脱線している事に気が付いた青いドラゴンはその話を元に戻す事にする。
『……あ、違う違う……僕が話したかったのはこんな話じゃ無いんだよ。この話はまた後でするから、とりあえず僕の話を聞いて』
「俺はさっきからずっと聞いているんだが?」
『それもそうか。だったら本題を話すね。僕が君をここに連れて来たのは、この旅の中で君が何を探し求めているのかを聞来たかったんだよね』
「俺の探し求めるもの……?」
『そうそう。別にただ単に旅に出た訳じゃ無いんでしょ? 何か目的があるからこうして旅を続けている訳だと思うけど、僕等竜族は自分のテリトリーを荒らされるのが何よりも嫌いなんだよね。あの地底湖も元々は僕の棲み処だったんだよ。それが今となっちゃ、ああやって人間が見物に来る観光スポットになってさ。全く、人間って言うのは本当に図々しいって思うんだよね』
「……ああ、そう……」
ドラゴンの主張に対してどうリアクションして良いか困るリュディガーだが、自分が何を求めて旅をしているのか、と言うのは答えなければならないだろう。
「俺の探し求めているものは、そのルヴィバーの冒険がどんなものだったかを知りたいんだ」
かなり真剣な表情と口調で自分の目的をさらけ出すリュディガーだが、ドラゴンはあっけに取られた様なリアクションをする。
『えっ、そんなアバウトな理由で旅に出て来た訳?』
「アバウトな理由とは失礼だな」
自分の旅の理由を否定された様でムッとするリュディガーに対し、ドラゴンは尚も続ける。
『だって本当にアバウトじゃん……。ルヴィバーの辿った道なら冒険日誌に書いてあるでしょ?』
「だから俺は、それを本だけじゃなくて自分の目で確かめたいんだ。その中でも特に、そのドラゴンとの話で出て来たゼッザオと言う場所が気になるからな」
恐らくそこが最終目的地になるのでは無いか? と漠然と考えているリュディガーだが、その単語を聞いたドラゴンは一転して慌てた様子になった。
『ゼッザオだって!?』
「ああ。変か?」
『いやあの……変って言うよりも、君ってよっぽどの命知らずなんだなって思って。本当に人間の考える事は分からないよ……』
そのセリフの方がさっぱり意味が分からないので、何をどう思って自分にそう言っているのか説明して貰わないとリュディガーも納得出来ない。
「待ってくれ。そのゼッザオと言う場所は一体何なんだ? 冒険日誌の中で出て来たのは確か、霧に囲まれている場所だと……」
『そうだよ。ゼッザオは色々といわくつきの場所だからね。あそこに足を踏み入れたら恐らく今の君じゃ生きて帰って来られないんじゃ無いのかな』
「いわくつき?」
『うん。だってあそこ、この世の中とは隔離された場所だからさ。色々と文明も違うし、霧に囲まれた場所だって言うのもそう言う理由なんだよね。そこから出て来たその茶色い奴は、結局色々と調子に乗ってあんな事件を起こしてこの世の中から追放されて、最終的にゼッザオに戻っていった奴だからなぁ』
遠い目をしながらそう言うドラゴンだが、1人……いや1匹で納得されてもリュディガーにはやっぱり意味が分からないので、これもちゃんと説明して貰わないと困る。
「まだまだあんたには聞きたい事が色々ある。こうして邪魔者も居ない訳だし、気の済むまで色々と聞かせて貰わなければな」
『うん。僕も色々と話しておかないと、あのゼッザオを目指すのは止めた方が良いって君に思って貰えないだろうしね』
どうやらドラゴンの目的は、リュディガーがゼッザオに向かうのを止めさせる事らしい。
「何だと? 俺に諦めさせるつもりか?」
『そうだね。君の旅の目的を聞いてから僕はそうするつもりになったよ。本当にあの土地に行くのだけは止めておいた方が良い。あいつはもう人間達を信用していないからね』
さっきから会話の中に出て来る「茶色いやつ」だとか「あいつ」と言うのは、このドラゴンも言っている通りあの冒険日誌の中に出て来た例のドラゴンで間違い無いだろう。
しかしここで諦めろって言われて、素直に引き下がる様な旅はして来ていないつもりである。
「諦め無いって言ったらどうする?」
やっぱりここで自分を食うつもりなのかと考えるリュディガーだが、ドラゴンの反応は割と控えめだった。
『それはまあ……最終的に決めるのは君自身だから、それ以上は僕も何も言うつもりは無いよ。ただ僕はここで忠告したいだけなんだよね。君がこの先の旅で何を見つけるかって言うのは分からないけど、そのゼッザオに向かうつもりなら止めておいた方が良いよって。それでも本当に行くんなら僕は止めないよ。ただ、それで命を落とす様な事態になっても僕は知らないからね』




