表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険家の子孫の成り上がり  作者: マッハ! ニュージェネレーション
ステージ2(バーレン皇国編):水の皇国
116/593

46.ドラゴンと冒険者と

「えっ……な、何?」

 真っ先にその音に気が付いたトリスが吹き抜けの方向を見上げると、大きな黒……いや、青い影がバサバサと音を立てながらこの地底湖に向かって降りて来るではないか。

「なっ……」

「ど、ドラゴン!?」

 何と上空から降りてきたのは大きなドラゴン。

 しかもその降下の仕方を見ると、もたつく様子が全く見られないのでこれはもしや……とリュディガーが考えていたその矢先、ドラゴンがいきなり咆哮を上げる。

「ガアアアッ!!」

「うおっ!?」

「かなりお怒りの様子みたいだな」


 咆哮に驚くバルドの横で、冷静にそう呟いたジェクトは背中から愛用のバスタードソードを引き抜いた。

 それを見て、冒険者の4人組も同じくそれぞれの武器を構えてドラゴンと対峙する。

 どうしてここにドラゴンがいきなり現れたのか?

 そしてこのドラゴンは、一体何に対して怒っているのだろうか?

 それを人間の言葉で口に出して伝えようとしても、ドラゴンは人間の言葉を理解出来ないので伝え様が無い。

 どちらにせよ、この状況ではどうにかしてチャンスを窺って逃げる方が良さそうだ。


「ドラゴンに真っ向勝負を挑んだら勝ち目は無い。あの鋭い牙、前足と後ろ足にそれぞれ生えている鋭い爪、そしてあの巨大な身体の突進攻撃とか踏み潰し攻撃とかで、俺達人間は成す術が無い」

 冷静に分析するリュディガーの横で、イディリーク帝国騎士団員のフェリシテもかつて野生のドラゴンと戦った時の事を思い出して、更なる不利な条件を思い出した。

「そうね。それにドラゴンはその身体能力だけじゃなくて、中には魔術を使って来るドラゴンも居るからね。もしこのドラゴンもそうだとしたら、私達にはますます勝ち目は無いわ」

 例え自分達の戦力が全部で100人居たとしても、敵うかどうか分からないレベルだ。


 そんな化け物をたった5人で相手にするのは命知らずの大馬鹿位のものなので、ここは誰かが囮になってドラゴンを引きつけ、その間に4人がまず逃げる。

 そして残った1人もタイミングを見計らって逃げ出すと言う作戦を、その場しのぎではあるが考えたリュディガー。

「それしか無いかも知れないな」

 もっと落ち着ける状況であれば違う作戦も考えついたかも知れないが、状況が状況だけにそんな悠長な事なんて出来やしないとジェクトも思う。


 そこで誰が囮になるかを考えた結果、この中で最も動きが素早い人間が良いだろうと言う結論に達し、この作戦を言い出したのがリュディガーと言うのもあって、結局彼が囮になる事に決まった。

「俺がまずドラゴンのターゲットになる。その間に御前達は出口の方向に向かって走れ」

「分かったわ。でも無理はしないでね」

「私もお兄ちゃんの力になりたいけど、今の私の弓の腕じゃちょっと無理そうだから、ここはお兄ちゃんに任せるわ。でも絶対生きて私達にまた会いに来てね」

「勿論だ」

 リュディガーはそう言ってから、相変わらず怒りの様子を浮かべているドラゴンに対してソードレイピアを構えた。

 その様子を見て、ドラゴンはリュディガーを自分のターゲットとしてロックオンしてくれた様である。


「ガアアアッ!!」

 もう一度咆哮を上げ、バサバサと翼を動かして一旦飛び上がるドラゴンは、グルリと旋回して一同に向かって突っ込んで来た。

「良し、出口に向かって走れ!」

 そのリュディガーの一言で一斉に走り出す3人。

 だが4人の内3人しか走り出していないと言う事は、誰かがここに残った証拠だ。

「お、おい!? あんたもさっさと行け!!」


 その残ったメンバーである、バーレン皇国騎士団員のジェクトは首を横に振って拒絶する 。

「断る。皇国騎士団員はこの国の民を守るのが俺の仕事だからな。そして冒険者だってそれは変わらない。あんたもそうだ。さっきは成り行きで踊りを決めてしまったが、むしろあんたがさっさと逃げてくれ」

「それは……くっ!!」

 喋っている間にもドラゴンは容赦無く2人に向かって突っ込んで来るので、咄嗟に突進を横っ飛びで回避して地面を転がり受け身を取る。

「俺が魔術をあのドラゴンに向かってぶつける。それでドラゴンのターゲットは俺に向く筈だから、そうなったらあんたが逃げれば良い。そして外の連中にドラゴンが現れたと言う事を伝えて、ここに戻って来てくれ。その間は俺が何とかドラゴンの相手をしておくから」


 冷静な口調はあるものの、このドラゴン相手に勝てるとは到底思っていないジェクトは、自分が囮役に変わると言い出したのだ。

 確かにそれはそうかも知れないが、ここで彼が死んでしまったらその作戦も全て水の泡だ。

「いや、しかし……うおっ!?」

 再び向かって来たドラゴンを回避し、再度ジェクトに協力を申し出ようとしたリュディガーだったが、ジェクトはリュディガーを手で制して続ける。

「若いからその気持ちも分かる。しかし、こう言う状況では常に最善の行動を考えるのが戦場だ。傭兵ならばその気持ちも分かるだろう?」

 傭兵だからこそ、自分の利益になる為の最善の行動を今まで取って来た筈だ、とジェクトはリュディガーを説得し、その制した手を振って指示を出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ