45.冒険日誌と照らし合わせ
「あんた達が持っている冒険日誌について、ロオンがティレフから話を聞いたらしい。かの有名なルヴィバー・クーレイリッヒは、その昔ドラゴンと何らかの関係があったんじゃないかってのが、冒険日誌から推測出来るらしいな」
「ああ、その話なら確かにそうだな」
イディリークで新たに発見された冒険日誌と共にこうして旅をしているリュディガーだが、なにぶん旅をしながらなのでその冒険日誌をまだ全て読破した訳では無い。
だが、これだけは頭に叩き込んでおいた方が良さそうな事だけは、それなりに頑張って自分の記憶に留めている。
その中の1つが、ルヴィバー・クーレイリッヒとドラゴンの関係だ。
バーレン皇国側のメンバーも、それからリュディガーも全て読み終えていないので詳しくは分からないが、ドラゴンと旅に出たルヴィバーは1匹のドラゴンと関わりを持ったらしい。
それが友好的な関係なのか、それとも敵対関係なのかまでは不明だが、いずれにせよそれなりに深い関係だったのは冒険日誌から読み取れる。
だったら、せっかくだから今ここでその該当しているページを探してみれば良いじゃないか、と考えたリュディガーは、荷物の中から取り出したその冒険日誌を他のメンバーと一緒にペラペラとめくって探してみる。
「ドラゴンの話は確か中盤以降だった気がするが……」
自分の記憶の中からその話を読んだページを探してみると、確かに中盤から少し進んだ所にそのエピソードが存在していた。
「えーと何々……私がそのドラゴンに出会って3年が経過し、徐々に人間の言葉も覚えて来ているのが分かった。これなら人間とコミュニケーションを取れるのももうすぐだろう……か」
横から覗き込んで来たバルドが冒険日誌を読み上げるが、この時点で既にそのドラゴンとルヴィバーが何らかの関係があったらしいと言うのは分かった。
「人間の言葉を覚えて来ているってのは、まさかこのルヴィバーがドラゴンに言葉を教えたって事かしら?」
「それは分からないけど、ドラゴンって人間の言葉を覚えられる程、そんなに頭良かったっけ?」
首を傾げるフェリシテとトリスだが、その横で騎士団員であるジェクトはこんな話を思い出していた。
「伝説のドラゴンであれば人間の言葉を操れたと言う記録が歴史書にあるのだが、それが事実だとすればこの内容から察するに、ルヴィバーは伝説のドラゴンに言葉を教えたのかも知れないな」
「ふむ……」
ますます興味深くなって来たこの話をもっと知るべく、少し前のページから冒険日誌を読み返してみる一行。
「3年前の記録……ああ、ここからだな」
ほぼ最初の部分にギリギリ記載されていたその情報を読み進めて行くと、更に興味深い話が出て来た。
「数日前、ゼッザオに渡った私は奇妙な存在に出会った。それはやけに人懐っこいドラゴンだった。ドラゴンは凶暴で見境無く人間を襲う事で知られているが、私の出会ったドラゴンは敵意を微塵も感じさせない所か、むしろ喉を鳴らしながら擦り寄って来たのだ。どうやらこのドラゴンはゼッザオの地で過ごしているドラゴンらしく、霧に包まれているこの地から出た事も無いらしいので、私はこのドラゴンと一緒にゼッザオの地を回ってみる事にした……か」
「ゼッザオなんて聞いた事無い地名だけど、何処にあるのかしら?」
「バルドさんなら知ってるんじゃない?」
だが、トリスに話を振られたバルドは渋い顔になった。
「いいや、俺もそんな地名は聞いた事無えよ。むしろ騎士団員の方が知ってそうな気がすっけど」
そう言いながらフェリシテとジェクトに顔を向けるバルドだが、その2人も首を横に振って否定する。
「ううん、私も聞いた事無いわよ」
「俺も知らん。あんたはどうなんだ?」
「俺も知らない」
傭兵として戦って来たリュディガーも、旅人として世界を回った経験のあるバルドも、騎士団員で他国に遠征経験があるフェリシテとジェクトも、そして食堂の情報通として知られているトリスも、誰も知らない「ゼッザオ」と言う地名。
だが、その地名は知らなくとも実際にその地を踏んだルヴィバーの残した冒険日誌の記述内容から、かなり有力な手掛かりが読み取れる。
「でもほら……霧に囲まれた場所だと記載があるから、そんな風景が周りに見えるとなればかなり独特な場所なのは間違い無いだろうな」
思いつく限りで可能性が高いのは、何処かの高い山の上か湿気が多い場所である。
特に高い山の上ならば、霧によって視界が遮られる時は登山道が通行止めになってもおかしくは無いが、もしその山の上に常駐するスタイルをルヴィバーが取っていたとしたら?
そしてそこにドラゴンが住んでいたとしたら?
「霧の出やすい高い山の上……そこにゼッザオとやらの手掛かりがあるのなら、行ってみる価値はありそうだ」
これもまだ仮定の段階に過ぎないので、ヴィルトディンの地を踏んだら図書館で改めて今までの冒険日誌を読み返してみようとリュディガーが決意したその時、吹き抜けになっている頭上から妙な音が聞こえて来た。




